昭和39年(1964年)9月20日〚日本専売公社〛から新しいフィルターロングサイズの製品が発売されました。《ひびき》と名付けられた新製品です。デザインは白地に電波の模様が描かれています。

 

昭和39年(1964年)10月に東京オリンピックが開催される直前の事です。東京オリンピックに併せて用意された《とうきょう64》の発売から、20日後に登場した新製品です。

 

昭和38年(1963年)12月からは東京オリンピックの寄付金付きたばこ《オリンピアス》が発売され、昭和39年9月1日からは《とうきょう64》が新発売されていますので〚日本専売公社〛の新製品発売ラッシュの時期と言えそうです。昭和40年2月には《ロングピース》が登場しています。

 

 

《ひびき》は2級品たばこです。〚日本専売公社〛では1級品から3級品まで用意していましたが、葉タバコの使用部位によって区別されています。1級品は柔らかい上質な部分、2級品はその他の部分、3級品は葉の中央にある葉脈部分とか1~2級品のクズなどが使用されたと聞いています。

 

 

 

 

〚日本専売公社〛のフィルター付きたばこを発売順にご紹介しています。これまで、最初に登場した昭和32年(1957年)7月に発売の《ショートホープ》から、昭和39年(1964年)9月に発売された

《とうきょう64》までご紹介しています。

 

 

こちらのロングサイズ《ひびき》は、フィルターたばことしては《とうきょう 64》に続いて発売された、〚日本専売公社〛による6番目の新製品となります。

 

 

 

 

《ひびき》は昭和49年(1974年)4月8日に製造中止が発表されました。この時4銘柄が同時に廃止されています。両切りたばこ《富士》《いこい》フィルターたばこ《ひびき》《エポック》です。

 

父親が吸っていて懐かしい《いこい》が廃止と言う事で、私がたばこパッケージを集めるきっかけとなった出来事なので、今も忘れられない深く記憶に残る廃止の発表となりました。

 

当時高校生だった私はまだたばこを吸っていませんので《ひびき》を含めて廃止4銘柄の喫煙経験はなく、まだ集めてもいない時代です。そのため、たばこを開いたペーパーも残していません。

 

 

 

ところで、現在は当たり前になっている安全上の観点から必要不可欠なセロファン包装ですが、銘柄ごとに個別に始まったようです。最初は昭和28年、両切りの高級たばこ《富士》なのだそうです。

 

昭和35年発売の《ハイライト》でも最初からフィルム包装されていたと言う事です。一般的に広く普及したのはどうも昭和46年頃だったようです。

 

 

 

 

実は《ひびき》と言う名称は初めてではありません。昭和7年(1932年)に【口付きたばこ】として登場しています。《響》と書いて〈ひびき〉と読みます。

 

デザインは工場のシルエットが書かれていて、工場のサイレンの音が同心円状に広がる様子が描かれました。以前当ブログで【口付きたばこ】の一銘柄としてご紹介していますのでご参照ください。

 

 

こちらはデザインとして電波が描かれました。翌年にはデザインが変更されて〈ベル〉が描かれましたが、他企業の商標に抵触する恐れがあるとして1年半後には2本の〈ホルン〉に変更されています。確かに〈ベル〉のデザインは ≪カネボー≫ の商標と似ているような気がします。

 

 

 

 

 

 

              手元で確認している《ひびき》の変化

 

① 昭和39年(1964年)  9月20日    新発売 白地に電波のデザイン

② 昭和40年(1965年)  5月         デザイン変更 ベル  両サイド白抜き 56㎜. 

③ 昭和41年(1966年)12月         デザイン変更 ホルン 両サイド白抜き 56㎜. 

④ 昭和43年(1968年)  5月  1月    定価改定 暫定封緘紙 両サイド白抜き 56㎜. 

⑤ 昭和45年(1970年)  9月       両サイド白抜き 59㎜. に変更

⑥ 昭和47年(1972年)  7月       健康表示 印刷

 

 

 

 

 

                   ひびき

 

  昭和39年(1964年)   9月 20日   20本入  定価 60円

  昭和40年(1965年)   5月     デザイン変更により中止

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  昭和40年(1965年)   5月     デザイン変更

  昭和41年(1966年) 12月     デザイン変更により中止

 

新発売から8ヶ月程度でデザインが変更されました。淡いクリーム色の地色で、デザインにはベルが描かれています。このベルが他の企業の商標とかぶる恐れがあるとして、1年半ほどで変更を余儀なくされます。確か〈カネボー〉とかぶるとか、ベルマークと同じとか聞いた事があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  昭和41年(1966年) 12月    デザイン変更  (白地68㎜)

  昭和45年(1970年)   9月    フラップ白地変更により中止

                                    (2㎜長くなる)

 

ベルのデザインから2本のホルンが描かれたデザインに変更されました。両サイドフラップの糊付け部分に見られる白地の長さは68mm.です。フラップの白地が短いために、上端両サイドに金色のラインがわずかに印刷されています。

 

昭和43年5月の一斉値上げの時、新価格品には暫定的に同じデザインで封緘紙の色を変えています。《ハイライト》や《ロングホープ》など、9銘柄の暫定封緘紙が存在します。《ひびき》では、濃紺の封緘紙が青色に変更されました。

 

このホルンのデザインも私には何だか〈森永マーク〉を彷彿とさせるような感じがします。

 

            ↑                 ↑

        白地 68㎜ 金ラインあり        白地 68㎜ 金ラインあり 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      参考  ④昭和43年5月1日 定価改定 暫定封緘紙

 

          1972年発行〚日本のたばこデザイン1904~1972〛より

 

 

          〚日本のたばこデザイン〛の画像をお借りしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  昭和45年(1970年)   9月     フラップ白地 70㎜ に変更

  昭和47年(1972年)   7月     健康表示により中止

 

1970年9月頃より両サイドフラップの糊付け部分にある白地の長さが70mm.に統一されました。

レギュラーサイズでは 59mm.となり、この時期に販売されていた【U字Ⅱ型包装】の全銘柄に共通しています。フラップ部分の白地が長くなりましたので、金色のラインは印刷されていません。

 

             ↑              ↑

        白地 70㎜ 金ラインなし        白地 70㎜ 金ラインなし 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       昭和47年(1972年)   7月     健康表示

       昭和49年(1974年)   4月   8日   製造中止

 

昭和47年7月よりサイドに健康表示が印刷されました。その後2年足らずで製造中止が発表されます。廃止された昭和49年には、9月から金色部分の印刷が〈金付け〉から〈金インク〉に変更されていますが、その半年前に製造中止になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        〚日本専売公社〛の時代、《ひびき》で実施された定価改定

 

        昭和39年(1964年)   7月   1日  発売    定価    60円

        昭和43年(1968年)   5月   1日        定価    70

 

《ひびき》は〚日本専売公社〛の2級品たばこです。《ホープ》や《セブンスター》などの1級品より安い価格が設定されました。

 

〚日本専売公社〛の時代には1級品~3級品まで用意されていました。2級品の銘柄としては他に《ハイライト》《エムエフ》《おおぞら》などが販売されています。

 

 

 

 

昭和43年(1968年)5月1日に、専売公社として初めての一斉値上げが実施されました。旧価格品と新価格品を区別するために、銘柄によっていくつかのパッケージ変化が見られます。

 

● 封緘紙のデザインを変えずに、暫定的に印刷色を変化させる。

  《ホープ》《ピース》《ルナ》《ハイライト》《ハイライトデラックス》《mf エムエフ》

  《ひびき》《トリオ》《スリーエー》の、9種類の暫定封緘紙が確認できます。

 

  《ハイライト》と《ハイライトデラックス》は、《ハイライト25》の封緘紙と同じデザインで

  (25)の数字のない色違いです。この暫定封緘紙が《ハイライト25》に引き継がれます。

 

 

● 定価改定の丸型の小さなシールをパッケージに貼付する。

定価改定のシールは全6種類が用意されたようです。印刷色と併せて中央の星の数がそれぞれ違います。たばこの値上げ価格によって違うようです。ただし、赤色=星1個は共通用なのだそうです。

 

こちらは赤色で中央の星が1個です。他に赤紫色=星1個、青色=星2個、オリーブ色=星3個、

レモン色=星4個、また中央に星の代わりに〈輸入たばこ〉と書かれたタイプを加えて6種類です。

 

はっきり分かりませんが、改定額が星1個=10円、星2個=20円、星3個=30円、星4個=40円なのだと思います。星の数で10円~40円までの値上げ金額を表しているようです。

 

 

 

《ひびき》には値上げ用の暫定封緘紙が使われています。封緘紙とはまた別に、10円の値上げなので〈赤紫色=星1個〉、あるいは共通用〈赤色=星1個〉のシールが貼付されているかも知れませんが、《ひびき》は製造数が少ないので可能性は低そうです。

 

 

 

 

昭和43年(1968年)5月1日の定価改定は、たばこのフィルム包装が広く普及する前の事です。

定価改定のシールは、まだ多くの銘柄でパッケージに直接貼付されていたと思われます。

 

しかし《ハイライト》では昭和35年(1960年)の発売当初からセロファン包装されていましたがシールの貼付が見られます。他の全銘柄に対しても、セロファンが装填される前に直接パッケージにシールを貼付していたのでしょうか?。

 

 

 

この2種類の方法が採られたようです。銘柄によって違うようですが、当時小学生だった私には詳しい事は分かりません。学生時代にも《たばこサービスセンター》で伺っていませんでした。

 

 

 

 

新価格の製品には〖暫定封緘紙〗を使用するか〖定価改訂シール〗を貼付して対応していましたが、値上げに合わせてパッケージのデザインを変更した銘柄もあります。

 

両切り《しんせい》《ピース》《いこい》と、フィルター付き《ハイライトデラックス》《わかば》の5銘柄です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〚日本専売公社〛の時代のパッケージ変化はいくつか見られます。これは他の銘柄でも同じことが言える共通変化です。昭和49年に廃止された《ひびき》ではそのうち2回の共通変化が見られます。

 

  ● 昭和45年9月頃から、U字Ⅱ型包装ではサイドの白地部分の長さがレギュラーサイズ 59㎜

                      ロングサイズは 70㎜ となる

  ● 昭和47年7月から、サイドに健康表示が印刷される。

 

 

〚日本専売公社〛の時代はパッケージの印刷もキッチリとしていて、印刷会社による変化が見られません。そのためこちらの大きな変化は共通しているし、各銘柄の変化もしっかり管理されています。

 

 

 

 

 

パッケージの変化ではありませんが、途中から外装フィルムが使用されています。セロファンが使用された第一号は、昭和28年に発売の高級たばこ《富士》だったそうです。

 

  ● 昭和46年頃から、外装セロファンが広く普及する

              (旧3級品にはセロファン包装がありません)

 

 

外装セロファンが装填されなかった〈旧3級品〉の銘柄とは、両切りの《ゴールデンバット》と

《しんせい》、フィルター付きの《わかば》と《エコー》の4種類です。

 

また、昭和44年5月からは《朝日》を除く全てのたばこのペーパーに4桁の数字が印刷されていて、製造された工場と機械番号が分かるようになりました。

 

 

 

 

 

 

《ひびき》が廃止された昭和49年、同時に廃止された《いこい》に懐かしさはありましたが、私は小遣いが足りなかったのでまだ集めていませんでした。パッケージは全て琉球煙草の研究でお世話になった方にいただいたものです。

 

 

 

 

次回の【フィルターたばこ】のご紹介は、《ひびき》から5か月後に新発売された《ロングピース》です。〚日本専売公社〛から発売されたフィルターたばことして、7番目の銘柄です。