私は幼い頃から少年漫画、少女漫画のジャンルにかかわらず、すべての漫画本を読んでいました。隣りが親戚で書店だったため漫画は読み放題でした。そのため今でも少女漫画には抵抗がありません。
私には、好きな作家の初版本を集める趣味があります。高田馬場に住んでいた学生時代から、地の利を生かして古書店を巡っては古本を買い漁っていました。マンガ本も集めていましたので、好きな漫画家のコミックスや雑誌なども一緒に探していました。
その後地元に戻ると、地元の古書店を探すようになります。三十歳前後の頃には、東京へ出かけての古書店巡りは月に一回程度となりました。その頃のバブル景気の影響で、東京の古書店街も様相がかなり変わってしまって驚いたものです。
ところで、私が二十代から三十代の頃に購入していた少女漫画のコミックスの中に、最近の古書店で何だかとんでもない価格で取り引きされているらしい本がありました。
もちろん「ヘッ!、何だこの値段は?、理解できない」 と思うようなコミックスはたくさん存在します。私の手元にある本の中から、そのような高額な少女向けのコミックスを2冊ご紹介します。
いまだに何でこのような評価がされるのか分かりません。???。その2冊は…。
● 小学館の新書版コミックス《フラワーコミックス》 【ささやななえ】 ≪獄門島≫
● 小学館のB6判コミックス《PFビッグコミックス》 【山本鈴美香】 ≪白蘭青風≫
● 祥伝社の雑誌 《微笑 別冊》昭和59年11月1日 号 【山本鈴美香】 ≪超能力列伝≫
コミックスを購入したのは1988年頃です。地元に新しくできたマンガ専門の店で、中でも少女向けの新書版コミックスが全体の8割以上を占めていました。新書版コミックスは一冊100円~150円でB6判コミックスは200円程度と他の店より安価でした。私はその店で結構な量を購入しています。
さて、1970年代あたりの事です。少年漫画にはプレミアムの付くコミックスが数多くありました。中でも【手塚治虫】氏は代表的な漫画家です。学生時代、古書店巡りの中で【手塚治虫】氏の高額な本を眺めているだけで満足していたものです。(心の中では『欲しいナ~』と思いながら)
その一方で、何件もの古書店の店主から『少女漫画のコミックスにはプレミアムが付かない』と言う話を良く聞いていました。当時の少女漫画は初版帯付きでも安価なので、好きな作品のコミックスを集めるのには、とてもラッキーな事だと思っていました。
時代は変わって、1990年頃には少女漫画の希少なコミックスも話題になり始めたようです。今では、1960年代の少女コミックスには結構なプレミアムがついているようです。
また、1980年代の注目度の高い人気漫画家の作品にも同じ事が言えそうです。前回までご紹介していた、私が二十代の中頃に夢中になっていた【内田善美】 氏などは注目度が高く、そのような事が言えるでしょうか。
漫画本、コミックスのプレミアム価格と言うのは絶対的なものではありません。読者やコレクターがいてこその値段でしょう。言ってみればひとつの人気商品です。時代が変われば読者も変わり、評価も変化するのが当然と言えます。今回の本も、あくまでも現在の状況を眺めているにすぎません。
獄門島
ささやななえ 傑作集①
フラワーコミックス
昭和53年 9月20日 初版第1刷発行 定価 320円
小学館の≪少女コミック≫に掲載された【横溝正史】原作のミステリーです。ささやななえ傑作集①と書かれています。フラワーコミックスで、傑作集①~③集までは確認しています。
【ささやななえ】氏の作品は《プチフラワー》に掲載されたホラー作品や、《フォアレディ》連載の ≪おかめはちもく≫ も毎号面白くて、コミックスは古書店で見かけると買っていました。
この本は1988年頃、前回ご紹介した【内田善美】氏の新書版コミックスを5冊まとめて購入した、地元に新しくできたマンガ専門の古書店で手に入れています。価格は100円でした。
最近ネットで見かけた価格はなんと、16,000円前後なのです!。本当に「ヘッ?」と思いました。私には今もマンガ専門の古書店や、ブックオフの棚に並んでいそうな感じがします。
出版された頃は販売が伸びず、売れないままに絶版となってしまったのか?。その後この方はホラー漫画やコメディタッチの作品で大ブレイクされます。ファンが増えた時には絶版で、古書店には在庫がなかった…と言うような事?。と考えていたのですが…。
ネットには four-letter word のせいだとありました。私は全く気が付きませんでした。差別とされるワードは、お寺で逆さづりの殺人が行われた時やラストの謎ときの場面でしょうか…。
こちらのコミックスでは原文の表記を使用しています。考えてみると、この作品は現代では映像化も難しいのかも知れません。事件の根幹に於いて俳句の《季違い》と《キチガイ》を掛けるなど、今では表現できないでしょう。そこを削除すると事件が成り立たなくなってしまいます。
白蘭青風
山本鈴美香
PF ビッグコミックス
昭和58年 12月20日 初版第1刷発行 定価 480円
小学館の《プチフラワー》に連載された神様と巫女の物語です。最後まで掲載される事なく、未完のままで終わっているようです。コミックスも第一巻だけ出版されていて、第二巻はないのでしょう。
この本も1988年頃、【ささやななえ】氏の ≪獄門島≫ や【内田善美】氏の新書版コミックスを購入していた、地元の同じ古書店で購入しました。価格は200円です。どの本も安価な店でした。
【山本鈴美香】氏は《マーガレット》の ≪エースをねらえ≫ をリアルタイムで読んでいて大好きでした。この作品は大好きな雑誌《プチフラワー》に掲載されていて、神様を扱うSFっぽい作品なので迷うことなく求めました。最近ネットで見かけた価格は、6,000円以上の表示が見られます。
【山本鈴美香】氏の場合、特殊事情として言えるのは、ご本人が巫女さんになられていて筆を折られていらっしゃると言う事程度しか私は知りません。
急に引退されていて、最後の頃には未完の作品が多いようです。引退のため連載中のストーリーが続かないので完結しません。そのために絶版となったのでしょうか?。何しろ大人気の漫画家でしたので、最後の頃に発表されていた未完で終わったコミックスは現在も価格が高いようです。
超能力者列伝
山本鈴美香
微笑 別冊
昭和59年 11月1日 号 定価 380円
祥伝社の女性雑誌【微笑】に連載された漫画です。明治時代の超能力者とみられる、実在する女性が主人公の作品です。【微笑】の別冊として出版されました。雑誌【微笑】のサイズはB5判変形サイズで、こちらの別冊も同じサイズです。
私は【微笑】連載中にリアルタイムで読んでいて、SFっぽいので好きでした。こちらの別冊も出版された時に購入しています。ネットで見ると、なんと9,000円以上の値段が表示されていました。
この作品は《別冊》の出版だけで、単行本にはなっていないようです。そのために少ないのかもしれません。ご本人は既に巫女さんになられていて、この作品内でも占いを述べておられます。
宗教観が強いですが、SF物語(ストーリー)として読むと面白くて楽しい漫画作品です。主人公の超能力者の女性を取り巻く、二人の男性が物語を回していますが、そのストーリーが興味深く面白いのです。『花がなぜ美しいか?』など、二人の会話も雑学として納得できる興味深い内容でした。
因みに私は、テレビや雑誌の(星座などの)占いコーナーを〚全く見ない〛タイプの人間です。それでもこの作品のストーリーはとても面白いと感じていました。
1960年代の古いコミックスは数が少ないし、【内田善美】氏のように増刷を拒否されていらっしゃる作品などは、読者の注目度も高くてある程度のプレミアムが付く事も理解できます。
しかしこちらでご紹介した本については、出版は昭和50年代と最近だし、大手出版社なので初版の印刷部数もかなり多いと思います。絶版とは言え、評価の高さに私の理解が及びません。
学生時代から古書店巡りが好きで、早稲田や神保町へは一週間に一度は出かけていました。その後、地元へ戻ると、1986年頃には地元の古書店も探しています。
自宅から自動車で20分圏内で、二市にまたがっています。1980年代は、地元では古書ブームでもあったのか?と言えそうな程に古書(特にマンガ)を扱う店舗が増えていました。
老舗の4店舗に加えて、新店舗が4件程度増え(2件はマンガ専門店)、合計8店舗はありました。多分バブル景気の影響もあったのだと思います。当時は様々な業種の店舗が開業していました。
しかしブックオフの台頭か、若い人の本離れの影響なのか分かりませんが、現在は老舗のうちの
1~2店舗程度が残るだけではないかと思います。地元にはほかに、ブックオフが2店舗あります。