1977年にデビューされた【佐藤史生】氏ですが、私が最初に注目したのは、小学館から出版された少女雑誌《プチフラワー》に創刊号から連載されていたSF作品 ≪夢みる惑星≫ からでした。
【佐藤史生】氏の代表作品と言われています。読み応えのある面白いSF作品で、私が読み始めたのは《プチフラワー》で5話からです。初回入り口の第1話からはコミックスで読みました。誌上で読んだ途中からでも、毎号1話で内容が充実していたので夢中になってしまいました。
全4巻と言う長編で、《プチフラワー》誌では創刊号から連載が始まっています。登場人物もしっかりと描かれて性格などが書き込まれていますので、ついついその場に引き込まれてしまいます。
人類と恐竜が同居しているという、考古学的には考えられないチープな設定と言えるのかもしれませんが、そんなに単純な物語ではありません。SF的には充分つじつまの合う設定になっています。
舞台となる古代地球が、中学生の頃に夢中だった【バロウズ】の火星シリーズや地底世界シリーズの異世界観を彷彿とさせるところが、私が面白いと感じた理由の一つだったと思います。
実は ≪夢みる惑星≫ の原点とも言えるSF短編作品が、デビュー間もない1977年5月に《別冊少女コミック》に掲載されました。≪星の丘より≫ と言う作品で、≪夢みる惑星≫ の前史となっています。そちらは1979年に出版された【奇想天外社】のB6判コミックス《金星樹》に収録されました。
《プチフラワー》での連載終了後、1984年7月25日には【新書館】よりB5判雑誌サイズの、豪華な画集が出版されました。 ≪夢みる惑星≫ のカラー画集 ≪竜の夢 その他の夢≫ です。
メインには《グレープフルーツ》1984年4月25日号に掲載された、 ≪夢みる惑星≫ の後史と言える ≪雨の竜≫ が収録されています。36ページの短編で、オールカラー4ページ付きです。
併せて《別冊少女コミック》1977年5月号に発表された前史 ≪星の丘より≫ を掲載。そして巻末には、1980年11月の【ペーパームーン】にカラーで掲載された、≪美女と野獣≫ が収録されました。
絶版となりましたが、復刊ドットコムより復刊されました。読みやすくなりましたが、【新書館】の初版本は現存数が少ないようで、古書店では今でも帯付きの初版本は高額のようです。
B5判 カラー画集
竜の夢 その他の夢
1984年 7月25日 初版発行 定価 880円
前史の ≪星の丘より≫ は【奇想天外社】のコミックス《金星樹》で既読でしたが、B5判サイズは迫力があり、後史となる ≪雨の竜≫ と一緒に読むとまた一段と面白くて感動が増したものです。
1989年頃、早稲田の【ナイキまんが図書館】の古書販売会で、1,000円で購入しました。定価より高いのですが、早稲田や神保町の古書店街ではなかなか見つけられませんでしたので、やっと出会った時には嬉しかった事を覚えています。帯は少し破れていますが、スレのない新品の本です。
雨の竜 グレープフルーツ 1984年 4月25日
星の丘より 別冊 少女コミック 1977年 5月号
美女と野獣 ペーパームーン 1980年 11月号
エッセイ他、イラスト多数
裏表紙
星の丘より (前史)
デビュー当時のSF作品 ≪星の丘より≫ は前史と言えます。火星に住む超能力者の種族の物語です。そこに生まれた超能力を持たない集団たちが地球へ移住すると言う作品です。その時に国王の息子が集団をまとめる新王として一緒に移住します。SFですが人の心理が描かれた、感動する作品です。
【奇想天外社】のコミックス《金星樹》に収録されています。私ははじめに【奇想天外社】のB6判コミックスで読んだ訳ですが、雑誌サイズで読むと迫力がありますので、より面白く感じます。
夢みる惑星 (本編)
地球へ移住した集団から五千年後の話です。全4巻にまとめられています。最初の国王には超能力があり、その血筋が現れた人物を宗教的に隔離します。五千年の間に火星にいた頃の文明は失われていますが、隔離されていた一団には科学に明るい科学者もいて、地球の大地の地殻変動に気づきます。
科学者と宗教者たちの一団は一般人を疎開させようとしますが、一般人の代表である国王は無理だと突っぱねます。そこから国王と宗教者たちの確執がストーリーとして続きます。
雨の竜 (後史)
≪夢みる惑星≫ の後史です。超能力はあるものの不具者であるために悪しき心を持つ国王の息子と、正義感の強い、その妹との確執です。ラストには ≪夢みる惑星≫ 主人公の息子も登場します。
1984年に《グレープフルーツ》誌に掲載されたのち、こちらの画集に初収録されています。
プチフラワー 創刊号
1980年(昭和55年)に創刊された小学館の少女雑誌です。少女雑誌としては少々価格が高い雑誌でした。初めは季刊でした。翌年から隔月刊となり、1984年から月刊化されています。2002年には休刊となり、翌月から【月刊フラワーズ】と誌名を変えて出版が続いています。
≪夢みる惑星≫ は創刊号からずっと連載が続いていますが ≪萩尾望都≫ 氏のほかは、初期に掲載されている作品は特にSF作品ではなく、普通の少女漫画が並んでいました。1983年頃にはSF作品やホラーっぽい作品が見られるようになり、私が最も好きな雑誌となっていました。
私が《プチフラワー》に掲載されていた ≪夢見る惑星≫ をリアルタイムで読んだのは、昭和56年(1981年)頃からです。コミックスでは第一巻の中盤あたりだったでしょうか。
コミックスの第一巻は、1983年頃に早稲田の古書店で一冊250円で購入しています。その頃には既に《プチフラワー》を毎号集めていたので、第二巻以降のコミックスは購入を急ぐ必要はありませんでした。第二巻~第四巻は1995年頃に地元の(ブックオフ)で、一冊250円で揃えました。
コミックスで第一巻を読むと第一話から面白くて引き込まれてしまいました。その上、物語の最初の設定が理解できましたので、雑誌で毎月リアルタイムに読む話が益々面白くなりました。
小学館のB6判コミックスのレーベルに【ビッグコミックス】があります。そこに掲載誌名が冠されています。《PF》とあるのは《プチフラワー》の頭文字です。【プチフラワービッグコミックス】と言う事でしょう。
ほかにも、女性誌では【FL ビッグコミックス】があります。そちらの《FL》は《フォアレディー》と言う女性誌の頭文字です。(私の好きなSF作品がありますのでいずれご紹介します)
PF ビッグコミックス
夢みる惑星 1
昭和57年 5月20日 初版第1刷発行 定価 480円
前史を受けた作品として物語は作られています。統治能力の優れた国王と、二人の息子が物語を回します。息子の一人、弟は王となり、もう一人、兄は超能力を残す血筋を守る宗教者と科学者のトップとなり、二人の葛藤から派生する諸問題で物語は進みます。
4冊ともパラフィン紙をカバーにしています
PF ビッグコミックス
夢みる惑星 2
昭和57年 12月20日 初版第1刷発行 定価 480円
科学技術を僅かに残す隔離された科学者たちが地殻変動を予知します。そのトップの兄は国王となった弟に遷都を進めるが、国の移動は簡単ではないために反対する国王との確執が続きます。
PF ビッグコミックス
夢みる惑星 3
昭和58年 7月20日 初版第1刷発行 定価 480円
国王が国民の移動を許さないため、科学者を含む隔離された宗教者たちのトップとなった兄は、国王の目をかいくぐって、権謀術数を使って少しずつ人民を移動させて行く様子が描かれます。
PF ビッグコミックス
夢みる惑星 4
昭和59年 7月20日 初版第1刷発行 定価 480円
物語の舞台は封建社会の構造です。地方国が中央国家に反乱を起こすタイミングで科学者たちが前史時代の科学技術を駆使して地殻変動を誘引します。並行して、国王が反乱国を滅ぼして庶民を引き連れて避難する様子が描かれます。
何しろ壮大なストーリーで、内容も幅が広くて面白いと感じていた作品です。連載が終了するとまだ読み続けていたくて『まだ読みたい……、もっと長く…10巻くらいまで続かないかナ。』なんて事を考えていました。ご本人も『全4巻に収めるため、最後は急いだ…』と書かれています。
こちらの ≪夢みる惑星≫ ですっかり【佐藤史生】氏にはまり、過去のコミックスも全て読みたいと考えた訳です。そして1983年頃からコミックスを求めて、古書店巡りの時に探し回ります。
≪夢みる惑星≫の連載が終了すると、コンピュータと宗教を取り混ぜて扱った近未来のSF長編の連載が始まります。次回はそちらのコミックスをご紹介します。