第二次世界大戦前後の日本は、物資不足で庶民は厳しい生活が続いていました。終戦後のモノ不足は深刻で、庶民は食べるものにも事欠く有様でした。

 

たばこは戦前からの銘柄がペラペラの粗末なパッケージで何とか販売されていたようです。≪金鵄≫から名前が戻った ≪ゴールデンバット≫ ≪光≫ などです。

 

昭和21年以降には、当初はまだ【専賣局】の時代ですが、〚新しい時代〛を迎えると言う事から

≪ピース≫、≪新生≫、≪ハッピー≫ などが新発売されます。

 

≪ピース≫ や ≪新生≫ はその後も長く製造が続きますのでパッケージも徐々に豪華になりますが、戦争直後のパッケージは単色刷りで色もなく、薄くて粗末なみじめなものでした。

 

≪ハッピー≫ も昭和23年に単色刷りの粗末なパッケージで登場しましたが販売期間が1年程度と短期間で、昭和24年には製造中止になっています。

 

 

今回はそんな第二次世界大戦後の、モノ不足が深刻だった時代の煙草パッケージをいくつかご紹介します。長期間販売が続く銘柄もありますが、今回は戦争直後の一時期みじめなパッケージだった時代に限ります。

 

昭和23年に新発売された ≪憩≫ を含めて終戦直後の銘柄と言えます。前回懐かしい煙草 ≪いこい≫のページでご紹介していましたが、時代の流れからこちらでも ≪憩≫ を掲載します。

 

 

 

≪証票≫ は戦前から続く《大日本帝国》と書かれた菊のデザインから、昭和21年には《日本政府》と書かれた桜のデザインの ≪証票≫ に変化します。背面に書かれている銘も、昭和24年にはそれまでの【専賣局】から【日本専賣公社】へと変更されます。

 

 

                桜のデザインの商標

 

旧字体の【専賣局】【日本専賣公社】と新字体の【専売局】【日本専売公社】の公社銘と証票の組み合わせは、銘柄によっても違いが見られるようで複雑です。

 

証票内の文字は、昭和21年7月までは全ての銘柄が右書きの〈大日本帝国 専賣局證票〉で菊のデザインでした。その後、桜のデザインに変更されて多くの銘柄で以下の変化が見られると思います。

 

                  旧字体【専賣局】銘 

 

昭和21年 6月まで       (菊証票) 旧字体 右書き〈大日本帝国 専賣局證票〉

昭和21年 7月 1日から       (桜証票) 旧字体 右書き〈日本政府  専賣局證票〉

昭和23年 1月 1日から     (桜証票) 旧字体 左書き〈日本政府  専賣局證票〉

 

 

 

〚日本専売公社〛銘になると証票がまた複雑です。こちらの変化も銘柄によって違い、多くに以下の変更が見られます。

 

                    (桜証票)

 

旧字体【日本専賣公社】銘 昭和24年6月1日   証票内の文字 旧字体〈日本専賣公社 證票〉

                         証票内の文字   新字体〈日本専売公社 証票〉

新字体【日本専売公社】銘 昭和25年頃        証票内の文字 旧字体〈日本専賣公社 證票〉

                         証票内の文字 新字体〈日本専売公社 証票〉

 

パッケージ裏の公社銘が旧字体の〚日本専賣公社〛銘でも、新字体の〚日本専売公社〛銘でも証票内の文字は旧字体の〈日本専賣公社 證票〉と新字体の〈日本専売公社 証票〉が見られます。

 

旧字体〚日本専賣公社〛銘 → 証票 新字体〈日本専売公社 証票〉は《朝日》で確認

新字体〚日本専売公社〛銘 → 証票 旧字体〈日本専賣公社 證票〉は《ゴールデンバット》で確認

 

 

これらの変化が昭和21年7月~昭和26年まで使用された、証票のデザインが桜の時代の変化です。

 

 

 


 

          昭和28年3月頃より  新証票となる

 

【専】の字をモチーフにした新しいデザインに変更されるのは昭和28年(1953年)3月頃からのようです。パッケージに印刷される時期は、銘柄によって数か月のばらつきがあります。

 

昭和26年6月には【専】の字をモチーフにした新しい証票が決められたと聞いています。印刷されたパッケージが市中に登場するのは、どの銘柄も昭和28年頃からだったようです。

 

 

 

 

販売価格はその銘柄が新発売された時点での定価を表示しています。昭和20年~昭和24年頃は、世の中は高インフレの時代です。例えば ≪コロナ≫ を見てみると、昭和21年1月に10円だった価格が昭和22年11月には5倍の50円に値上がりしています。

 

 

 

           ゴールデンバット 金鵄

 

最初に、明治時代から販売されている≪ゴールデンバット≫からです。戦時中は英語禁止で≪金鵄≫に変更されます。平成の時代まで100年以上販売が続きますが、こちらでご紹介するのは私が所持している中から、終戦直後の粗末なパッケージの時代だけです。

 

戦後の物資不足が深刻な混乱期に用意されていたパッケージなので、もちろんこちら以外にも粗末なパッケージはまだまだたくさんの種類が見られます。

 

   昭和21年7月1日~昭和24年5月 20本入 定価 2円

 

 

昭和21年の定価を入れていますが、この時代はインフレが激しい時代なので常に変動しています。                         

 

 

 

 

 

 

 

 

  昭和24年6月1日~昭和28年2月 20本入 定価 30円

 

昭和24年6月1日から、専賣局が【日本専売公社】に変更されています。当初は【日本専賣公社】と、【賣】が旧字体だった可能性も考えられますが、正確な所は分かりません。

 

この時代に、〖朝日〗〖ピース〗〖光〗と共に琉球へ輸出されているようです。専売公社の資料と、沖縄に残る資料から、多分このデザインだと思われますが、現在まで沖縄で輸出品の現物を確認できていません。

 

 

この時代に良く見られる四方連続印刷です。経費節減のためにどこでカットしても良いように印刷しているそうです。≪新生≫と同じ印刷方式です。≪ハッピー≫も同じような二方連続印刷です。

 

 

 

 

 

 

 

   昭和24年 6月 1日   10本入   定価 30円

   昭和25年 9月29日   製造中止 

 

10本入は特に貧弱なパッケージで、紙の向こう側が透けて見えそうなほどに薄いペラペラなパッケージです。販売から15ヵ月ほどで製造中止となります。

 

 

 

専賣局から新字体の【日本専売公社】銘に変更されていますが、旧字体の【日本専賣公社】の表示があったのかは不明です。≪ハッピー≫や≪新生≫を見ると旧字体の【賣】が見られるので、存在していたと思われます。

 

  新字体の〚日本専売公社〛銘ですが、証票内の文字は〈日本専賣公社 證票〉と旧字体です。

 

 

 

 

 

 

 

 

    昭和50年当時、販売中の紙巻きたばこをそれぞれこのように剥がしていました。

 

【日本のたばこデザイン】にはこちらのデザインしか掲載されていません。かなり古くから、ずっと同じデザインが使用されていたと思います。品名の印刷が煙草の上の方ではなく、真ん中だと言う事も特徴的です。

 

戦前の英語が禁止されていた軍事体制の時代に《きんし》とひらがなで書かれた一時期を除いて、

明治時代からこの表記は変わらなかったのでしょう。《GOLDEN BAT》と英語表記です。

 

 

ペーパーのサイドに四桁の数字が印刷されています。この数字は上の二桁が工場の番号で、下の二桁はその工場の製造機械番号だと聞いています。03番工場の4号機と言う事です。たばこの戸籍のようなものですが、この印刷は昭和44年5月から実施されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                    コロナ

 

   昭和21年 1月10日 発売   10本入  定価 10円

   昭和23年 3月31日 製造中止

 

金環蝕を描いた新製品です。デザインは公募懸賞の入選作が採用されました。《コロナ》《ピース》の2銘柄が同時に発売されましたが、《コロナ》は2年ほどの販売で製造中止になっています。


発売当初の定価は10円でしたが、同年7月には15円、同年12月には20円へと値上がりしています。翌年の昭和22年4月には30円、そして同年11月には50円となりました。

 

物資不足が深刻な混乱期の昭和21年1月にハードボックスと言うのは贅沢だったでしょう。当初の定価が10円で、昭和22年11月には50円です。当時としては高級な銘柄だったと思われます。

 

《ピース》や《新生》など、長期間販売された銘柄は昭和25年、昭和26年に値下がりしますが、《コロナ》は短期間の販売だったので値下げは行われていません。

 


 

                     内箱

 

 

 

 

昭和21年1月発売当初の【専賣局】銘で、証票は〈大日本帝國 専賣局證票〉です。昭和21年7月以降は、証票内の文字が〈日本政府 専賣局 證票〉へ変更されると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                    ピース

 

   昭和21年 1月10日 (専賣局) 10本入  定価 7円

 

平和な時代を迎えた事から名付けられた名前です。定価は7円から始まりますが、激しいインフレのため、昭和23年には60円まで値上がりしています。昭和25年と26年に2回、値下がりしますが…。《コロナ》と《ピース》の2銘柄は同時に発売されました。

 

当初は【専賣局】銘で証票は〈大日本帝國 専賣局證票〉です。発売から半年後の昭和21年7月以降、証票内の文字が〈日本政府 専賣局 證票〉へ変更されたと思います。

 

 

 

 

   昭和24年 6月 1日 (日本専賣公社)  定価 60円

 

【専賣局】銘から旧字体の【日本専賣公社】銘に変更されています。商標は桜のデザインです。証票内の文字が旧字体の【日本専賣公社】に変更されています。

 

イメージ 2

 

 

昭和24年6月以降、旧字体の〚日本専賣公社〛銘です。証票内の文字も〈日本専賣公社 證票〉と旧字体です。昭和25年以降は新字体の〚日本専売公社〛銘に変更されると思います。

 

 

 

 

 

 

この時代、琉球向けに少量輸出されています。パッケージは輸出用に赤色印刷で表記も英語です。琉球政府の納税ゴム印が押印されています。

 

             ≪琉球輸出用≫

 

 

 

 

               ゴム印のないパッケージも見られます。

 

 

 

琉球では、昭和26年に販売されていました。輸出専用パッケージなので本土では殆んど見かけません。輸出先の沖縄でも見かける事は無く、貴重なパッケージの一つです。

 

 

 

昭和27年から【レイモンド・ローウィ】氏の、鳩のデザインに変更されますが、現在も続くデザインですので改めてご紹介します。ここでは終戦直後のデザインだけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            新生 (細巻き)  定価 40円

 

    昭和22年11月 1日  U字形包装    (文字色 青色)  

    時期不明         打ち抜きカット (文字色 赤色)

    昭和23年        製造中止


戦後、新しく生まれ変わると言う事で、わかばを描いた ≪新生≫ が用意されました。発売当初は青色文字でU字型包装だったようです。デザインは一緒ですが文字の色がこちらは赤です。

 

             同じ包装形態で、地色の違いが見られます。

 

      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                 新生 (太巻き)

 

              日本専賣公社

               

  昭和24年 6月 1日 U字型包装 10本入  定価 30円

  昭和24年 6月 1日 U字型包装 20本入  定価 60円

  昭和24年12月      形態変更  10本入 (小箱となる)

 

細巻きの製造が中止され、昭和24年から新たに太巻きが販売されました。包装形態はU字型包装で、10本入と20本入が同時に発売されています。表記が【日本専賣公社】に変更されています。

 

商標は桜のデザインで専賣局とよく似ています。ただし、丸いマークの中の文字は【日本専賣公社】に変更されています。

 

 

 

  昭和24年12月     小箱  10本入  定価 30円   

  昭和24年12月  U字形包装   20本入  定価 60円

    昭和25年          小箱  10本入  定価 20円

             U字形包装   20本入  定価 30円

 

緑色の双葉が大きく3本描かれたデザインになりました。包装形態は、10本入がシェル&スライドと呼ばれるハードボックスで、20本入はU字型包装です。その後、昭和25年には20本入にわずかなデザインの変更もあり、値下げが行われます。

 

そして10本入≪新生≫は間もなく姿を消しますが、20本入は昭和27年にデザインが変更されて、新たな≪しんせい≫が誕生します。その後、20本入は平成の時代まで販売が続きます。

 

 

 

 

昭和24年6月以降、旧字体の〚日本専賣公社〛銘です。証票内の文字も〈日本専賣公社 證票〉と旧字体です。昭和25年以降は新字体の〚日本専売公社〛銘に変更されると思います。

 

 

 

 

 

 

 

昭和27年から登場するひらがなの ≪しんせい≫ は、パッケージのイメージが全く変わりますし、長期間販売されていますので改めてご紹介します。

 

私だけかもしれませんが……、こちらの ≪新生≫ は学生時代に【日本のたばこデザイン】で初めてデザインを見た時から(石鹸)のパッケージのような気がしてなりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              ハッピー 10本入

 

   昭和23年 7月 2日 専賣局 10本入 定価 30円

 

戦後、新しい時代が幸せであるようにと言う願いを込めて用意されたと言う事です。紙の向こうが透けて見えるほどに薄くてペラペラの紙です。最初は地色がベタ塗りでしたが、すぐに網線に変わります。10本入と20本入が並行して販売されていました。

 

   昭和23年        デザイン変更  定価 30円

   昭和24年 6月 1日  日本専賣公社に変更のため中止 

 

  まだ【専賣局】の表示ですが、地色はベタ塗りからストライプの網線に変更されています。

 

        

 

 

【専賣局】銘で、証票の中の文字は〈日本政府 専売局 證票〉となっています。昭和21年7月から使われている証票です。当初は右書きでしたが、昭和23年1月以降は左書きのようです。

 

 

 

 

 

 

      昭和24年 6月 1日 日本専賣公社  10本入

      昭和24年12月 下旬  製造中止

 

専賣局の銘が【日本専賣公社】に変更されています。商標は桜のデザインで、専賣局当時とよく似ています。丸いマークの中の文字も【日本専賣公社】に変更されています。

 

      

 

 

昭和24年6月以降、旧字体の〚日本専賣公社〛銘です。証票内の文字も〈日本専賣公社 證票〉と旧字体です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              ハッピー   20本入

 

  昭和23年 7月 2日 専賣局 20本入  定価 60円

  昭和23年       製造中止 (デザイン変更)

 

10本入と20本入が並行販売されていました。パッケージの紙質は10本入より厚くなっています。初めは専賣局銘ですが、昭和24年6月1日より【日本専賣売公社】銘に変わります。

 

   (昭和24年12月下旬には、10本入も20本入も製造が中止されています。)

 

   昭和23年        デザイン変更   定価 60円

   昭和24年 6月 1日 日本専賣公社となる

   昭和24年12月 下旬  製造中止

 

 まだ【専賣局】の表示ですが、地色はベタ塗りからストライプの網線に変更されています。

 

 

 

【専賣局】銘で、証票の中の文字は〈日本政府 専売局 證票〉となっています。昭和21年7月から使われている証票です。当初は右書きでしたが、昭和23年1月以降は左書きのようです。

 

昭和24年12月に廃止されています。昭和24年6月から変更された〚日本専賣公社〛銘は、販売期間としては半年程度ですが存在すると思います。

 

 

  10本入と、【専賣局】銘のフォントが全く違っています。証票内の文字も活字が違います。

 

 

 

 

何ともベタな名前で、学生時代に【日本のたばこデザイン】で初めてデザインを見た時、現物を見てみたいと思う気にかかるたばこでした。頂いたコレクションに3枚も含まれていて感無量でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                      

 

   昭和23年 7月 2日  専賣局  10本入 定価 40円      

 

昭和23年7月、《ハッピー》と同時に発売されました。定価は《ハッピー》より10円高い40円で、10本入と20本入が並行して販売されています。当初は【専賣局】銘でした。

 

 

 

昭和24年6月1日から【日本専賣公社】銘に変更され、地模様だった淡い緑色の細かいストライプがベタ塗りで濃くなりました。

 

  昭和24年 6月 1日  日本専賣公社に変更 定価 40円

  昭和25年 4月 1日    値下げ 10本入  定価 30円

  昭和25年 4月 1日    値下げ 10本入  定価 25円

  昭和26年 2月末    製造中止

 

  昭和24年6月1日に【専賣局】銘から【日本専賣公社】銘に変更されたパッケージです。

 

 

 

昭和24年6月以降、旧字体の〚日本専賣公社〛銘です。証票内の文字も〈日本専賣公社 證票〉と旧字体です。昭和25年以降は新字体の〚日本専売公社〛銘に変更されると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   昭和23年 7月 2日  専賣局  20本入 定価 80円  

 

10本入と同時に20本入も発売されています。昭和24年6月1日、【専賣局】銘から【日本専賣公社】銘に変更されますが、10本入のように地模様は変更されていません。

 

 

 

  昭和24年 6月 1日  日本専賣公社に変更 定価 80円

  昭和25年 4月 1日    値下げ 20本入  定価 60円

  昭和25年 4月 1日    値下げ 20本入  定価 50円

  昭和26年 2月末    製造中止

 

 

  昭和24年6月1日に【専賣局】銘から【日本専賣公社】銘に変更されたパッケージです。

 

 

 

昭和24年6月以降、旧字体の〚日本専賣公社〛銘です。証票内の文字も〈日本専賣公社 證票〉と旧字体です。昭和25年以降は新字体の〚日本専売公社〛銘に変更されると思います。

 

 

 

 

 

今回は、終戦直後の昭和21年~昭和24年に販売か、新発売された銘柄をご紹介しました。まだまだ物資不足、食糧不足にあえいでいた時代のパッケージです。どれも粗末な印象を持ちます。

 

中でも、10本入の≪ゴールデンバット≫≪ハッピー≫≪新生≫あたりは、包装紙とは考えられないほどに薄い紙です。「本当にこの紙で包装していたの?」と疑いたくなるほどにペラペラです。