第二次世界大戦後、アメリカの統治下にあった琉球には、民営煙草会社が四社設立されました。そのうちの一社は外資系で、半年程度で撤退していますので三社が復帰まで煙草の製造販売を行います。

 

今回は、1956年5月に設立された【オリエンタル煙草株式会社】の新聞広告や商品チラシなどの中から、1950年代に掲載された初期の広告をパッケージと共にご紹介します。

 

【オリエンタル煙草株式会社】では、大変貴重な宣伝チラシが残されています。琉球の民営煙草会社は三社が競合していましたので、新聞などで盛んに宣伝を行っています。新聞では各社の銘柄が数多く掲載され、大変賑やかでした。

 

 

 

単独銘柄のチラシなども用意されていたと思われますが、私はこれまで見かけた事がありません。唯一確認できる銘柄が【オリエンタル煙草株式会社】の≪トップ≫だけです。

 

以前当ブログでご紹介していますので、再展示です。【オリエンタル煙草株式会社】の広告の歴史を見るにあたっては、先ずこちらのご紹介は外せません。

 

 

 

 

 

 

 

【オリエンタル煙草株式会社】の第一号製品は≪スメル≫です。1956年8月9日に新発売されました。単独での新聞広告が残されています。二色刷りで豪華な広告です。

 

      沖縄タイムス             1956年8月31日   掲載

 

 

ごく初期のパッケージではサイドの品名が英字で書かれています。これは品名表記がカナ文字で、二代目のデザインです。これも販売は短期間で、まもなく≪スメル 二十本入≫の文字が小さくなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1956年の会社設立から2年後の、1958年に掲載された新聞広告です。初期は全て両切り煙草です。今では見る事の出来ない、貴重な銘柄が並んでいます。と言うのも…、

 

【オリエンタル煙草株式会社】でも、前回の≪琉球煙草株式会社≫同様、1960年頃に商品整理を行っているのです。世間がフィルターチップに替わる時代に併せて、両切り煙草と一部のフィルターチップの製品を、一斉に廃止しています。

 

       沖縄タイムス    1958年5月8日           掲載

 

 

因みに、【琉球煙草株式会社】では1960年頃の大整理前の製品でも、もともと販売量が多かったので、パッケージもいくらかは残っていますが、【オリエンタル煙草株式会社】の製品はそれより販売量が少なく、また銘柄数も多く、現在ほとんど見かけません。私も所持していない銘柄がいくつもあります。

 

1958年2月14日に販売が開始された両切りメンソール煙草の≪ポール≫です。こちらの新聞広告に掲載された6銘柄の中では、最後に登場した銘柄です。

 

 

 

 

 

 

 1960年には、懸賞金の当たる謝恩特売が行われたようです。詳しい新聞広告が見られます。

 

           琉球新報        1960年6月19日  掲載

 

 

 

会社の特約販売店に空箱10枚を持ち込むと抽籤券と交換してもらえるシステムで用意されました。その抽籤券です。

 

会社の代表銘柄として、フィルターチップの≪ロン≫と≪マーキュリー≫の写真が掲載されています。記載された製品名を見ると、両切りは≪スメル≫と≪ポール≫だけです。

 

他に掲載されている≪ロン≫≪マーキュリー≫≪ポピー≫≪ロビー≫の4種類はフィルターチップ製品です。

 

 

 

 

                    免税煙草で販売された≪マーキュリー≫

 

1959年3月18日に新発売されました。これはごく初期のパッケージで、サイドの品名が英字です。すぐにカタカナで≪マーキュリー≫と書かれるようになります。沖縄でもほとんど見られない貴重なパッケージです。

 

 

               こちらが二代目の≪マーキュリー≫です。

 

 

 

 

     ≪マーキュリー≫は、【オリエンタル煙草株式会社】の用意した免税煙草です。

 

琉球政府は、100%島産葉煙草を使用した製品の税金を免除していました。証紙は自社で用意した免税用証紙が利用されています。

 

これは1961年8月20日までの措置ですので、1961年には琉球政府の証紙に替わります。三社がそれぞれ〚免税煙草〛を用意していました。

 

  〚免税煙草〛は5銘柄が存在します。その5銘柄には〚免税証紙〛が貼付されていました。

 

              《バイオレット》 琉球煙草株式会社

              《ニューキング》 琉球煙草株式会社

              《マーキュリー》 オリエンタル煙草株式会社    

              《ヨット》    沖縄煙草産業株式会社

              《ビクトリー》  沖縄煙草産業株式会社

 

 

 

スタンダード型包装はごく短期間で、間もなくU字Ⅱ型包装に変更されています。1960年にU字Ⅱ型包装に変更されたようで、こちらと同じ免税証紙の貼付されたU字Ⅱ型包装の製品もあります。

 

証紙や包装形態の違いの他、印刷にも変化が見られて分類は多いのですがいずれも現存数が少なく、キングサイズの≪マーキュリー≫はコレクター泣かせの銘柄と言えそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

1959年10月12新発売された≪ロン≫です。ごく初期には手作業で包装された、スタンダード型包装で登場しますが、1961年頃にはU字Ⅱ型包装に変更されます。初めはキングサイズで用意されていました。

 

 

 

 

 

【オリエンタル煙草株式会社】でも1960年頃に商品整理を行って、1950年代の銘柄はほとんど姿を消してしまいます。これは、両切り煙草の整理という一面もあったようです。≪ロン≫は人気商品でしたので、販売は続けられます。

 

当初は手作業によるスタンダード型包装だったようですが、〈オリエンタル煙草株式会社〉の工場は〈琉球香港煙草株式会社〉の設備を買収しているので【U字Ⅱ型包装】の機械もあったと思います。

 

復帰まで12年以上販売が続いています。その間に煙草サイズの変更に加え、所在地名が変わったり活字の変化も多く、ひとつの銘柄で最も多く分類されます。私は11種類に分類しています。

 

当初は手作業によるスタンダード型包装だったようですが、〈オリエンタル煙草株式会社〉の工場は〈琉球香港煙草株式会社〉の設備を買収しているので【U字Ⅱ型包装】の機械もあったと思います。

 

 

【オリエンタル煙草株式会社】の初期銘柄を幾つか当ブログでご紹介していますので、宜しかったらご参照ください。

 

 

≪ロン≫に付いては、本土復帰後も専売公社によって銘柄が引き継がれて販売が続きましたので、以前民営会社の時代のパッケージの歴史を当ブログでご紹介しています。

 

 
 
【琉球煙草株式会社】でも【オリエンタル煙草株式会社】でも、1960年頃に大掛かりな商品整理を行っています。それまでの両切り煙草と、一部の売り上げの伸びないフィルターチップの製品を製造中止にします。
 
 
例えば【日本専売公社】でも、早々と製造中止になったりテストマーケットで姿を消す商品はあります。しかし本土の製造量は、沖縄とは桁が違います。本土では少なくとも数百万、数千万単位で販売されます。
 
一方、沖縄では売れない商品は数百個から数千個程度でしょう。まだ戦後の復興で大変な1960年頃、コレクターの数は僅かだったのでしょう。偶然にでもパッケージが残されている事は、とても少ないと思われます。