19歳の時、二年分の週刊漫画アクションを一ヶ月で一気に読破した私は、すっかり漫画アクションに嵌ってしまいます。年齢的にも丁度マッチしていたのでしょう、当時は私好みの作品が目白押しでした。
その作品のひとつに≪柔侠伝≫のシリーズがあげられます。B5判の無線綴じで、昭和43年から出版されたアクションコミックスは12冊で終わり、その後はB6判になります。一部の作品はB5判の同じ無線綴じの体裁で出版が続きました。
それは総集編と言う形だと思います。≪柔侠伝≫シリーズは前回ご紹介した後も≪現代柔侠伝≫として続きますが、第九集まで出版されたところで終了しました。その後の出版はB6判だけになります。
B5判での出版は昭和43年~昭和50年までと期間が限定されていますので、種類も限られてるわけです。全72冊だと思います。その中には私の好きな作品が揃っていましたし、何より表紙絵が好きでした。。そこで学生時代、全種類を集めてみようと思い立って古書店で見かけると購入していました。
このシリーズは、何冊かを早稲田の古書店に山積みされた投げ売り本の中から、100円か150円で手に入れています。第八集は大田区の古書店の価格シールがありますので、昭和53年に池袋のデパートで開催された古書市で、150円で購入しています。
あとは、高田馬場駅横のビッグボックスの古書感謝市で見つけていますが同じような価格でした。まだ発行されて間もない頃なので、未使用のように状態の良い本が揃いました。昭和51年~昭和56年の間です。
前作の≪昭和柔侠伝≫は第二次世界大戦が描かれていますが、こちらは戦後の混乱期から始まります。復員してきた柳勘太郎は、妻の朝子と一子勘一を探しますが巡り合えずに物語が進みます。
朝子も従軍看護婦として満州にわたり、我が子勘一とはぐれてしまい、やくざに囲われたり婦人警官となったり、数奇な生活を重ねます。そんな時代に勘一は縁あって九州で育ち、柔道を極めて行くのです。
前回も述べましたが、このシリーズを通して描かれているのは体制と反体制の二元論的な物語です。戦後の混乱期に勃興した露天商と、整理したい体制側が描かれます。露天商に身を置いた勘太郎が的屋の親分となり、GHQと結託したデパート建設を推進する権力側と対峙します。
第一子の勘一は九州で育ち、柔道で頭角を現して行きます。その後勘太郎、朝子、成長した勘一は再会して時代は進み、昭和30年代の、勘一の柔道の世界に物語の舞台は移ります。
親子三人のポートレートですね。復員してきた勘太郎と数奇な生活をしていた朝子、幼い勘一が揃っていますが、まだそれぞれ生き別れ状態の離れ離れで、実際は一緒にはいません。
露天商に身を置く勘太郎と浮浪児生活をする幼い勘一ですが、実際にはまだ再会していません。
的屋の親分となった勘太郎と、再会できない我が子の影を見て養子にした浮浪児の三郎。
若い頃からのライバル中野国彦が殺害され、犯人として逮捕されて留置生活を送る勘太郎。
ここからは九州で高校生活を送る、柔道に明け暮れた勘一が描かれます。中学生の時パチンコが目に当たり、隻眼となっています。B6判コミックスに見られるような、デザイン化された表紙絵に変わった感じです。
高校に入学したばかりでも柔道で強さを見せる勘一
やんちゃな高校生活の中、柔道だけは強かった勘一
高校柔道部の中でますます強さに磨きをかけ、貫録を見せる勘一
≪シャム猫≫≪マリア≫≪国際軍事法廷≫と同時に、池袋のデパートで開催された古書市で購入しています。大田区の古書店の出品で、他と同じ価格で150円でした。昭和53年です。
女性はデザイン化されたイメージ像ですが、父親が熊本の公害病で苦しみ犯罪に走る遊子かも知れません
早稲田の古書店に山積みされた投げ売り本の中から見つけました。この書店では読み古された本が多いのですが、まだ出版されて間もないので状態は未使用のようです。
勘一と、女性ははっきりしませんがのちに一緒になる茜ではないかと思います。
戦後の混乱期を生き抜く勘太郎と朝子の物語は第四集あたりまでで、第五集以降は成長した勘一が柔道で活躍する事になります。表紙絵にもそのあたりが表れているようです。
物語りはまだまだ続きますが、B5判での出版はここで終了し、この後はB6判で進みます。この作品の跡を継いで≪男柔侠伝≫に移りますが、そちらでは勘一が九炭争議に身を投じて行きます。労働者と九州炭鉱の経営者側との労使問題が舞台となります。
この労働争議の時代に茜と結ばれ、勘平が誕生します。私はこの九炭争議の終わりまで読みました。
物語りは勘平の世代へ続くのですがその後は読んでいません。明治から昭和30年代と言う時代背景も好きだったのですが、現代に移ってしまった事も読まなくなってしまった理由のひとつです。