昭和42年に創刊された青年誌、【週刊漫画アクション】に掲載された作品は、昭和43年8月から無線綴じのB5判雑誌サイズでコミックスが出版されていました。
昭和45年からはB6判のコミックスが登場しています。総集編のような形で一部の作品はB5判での発行が続きますが、雑誌サイズでの刊行は昭和50年で終了しています。
昭和43年~昭和50年までと期間が限定されていますので、種類も限られています。出版されたのは、全72冊だと思います。そこで学生時代、全種類を集めてみようと思い立って古書店で見かけると購入していました。
当時は古書店に山積みされた100円~150円程度の安価な本が沢山ありましたので、ほとんどは簡単に揃いました。昭和58年頃には安価な本は姿を消しましたが、昭和56年頃までには、ごく初期の本も300円、500円、1000円程度の価格でみつけ、昭和43年から昭和50年までだいたいは揃える事が出来ました。
初期の12冊では≪ルパン三世≫の二冊を含む、4冊は当時出会う事なく時間が過ぎ、≪ルパン三世≫以外の2冊を数年前にネットオークションで購入しています。≪昭和風雲録≫と≪ヘラクレスの涙≫の二冊です。その後出版された≪子連れ狼≫数冊と≪満州お菊≫も数年前にネットオークションで入手しています。
今回ご紹介する柔侠伝のシリーズは、≪現代柔侠伝≫が昭和50年まで発行されています。ここではそのうち、初期の≪柔侠伝≫と≪昭和柔侠伝≫をご紹介します。
前回ご紹介した初期のコミックスは、小学生の時にほとんど読んでいますが、このシリーズの事は全く知りませんでした。学生時代、東京で初めて知る事になります。19歳の事です。
このシリーズは、ほとんど早稲田の古書店に山積みされた投げ売り本の中から、100円か150円で手に入れています。あとはビッグボックスの古書市ですが同じような価格でした。昭和51年~昭和56年の間です。
東京で暮らし始めた私は、一ヶ月だけ親戚の借りていた四畳半に住みました。住人である大学4年だった親戚はまだ部屋に戻っていなかったのです。そこには二年間ほどの【週刊漫画アクション】が山積みされていました。その本を一ヶ月で読破した私は、すっかり漫画アクションに嵌ってしまいました。
その作品のひとつに≪柔侠伝≫のシリーズがあげられます。リアルタイムでは≪現代柔侠伝≫の中盤でしたが、部屋には≪昭和柔侠伝≫の中盤から全て揃っていました。20歳の時にアクションコミックスを全て揃えてみたいと思ったのも、この作品の影響があったと思います。
柳秋水 → 柳勘九郎 → 柳勘太郎 → 柳勘一 → 柳勘平と、子供へ物語は引き継がれていきます。柳家の一族が、常に権力側、体制側と対峙する形で物語が進みますが、どの人物もその生きざまが痛快ですごくカッコ良いのです。
体制、反体制の二元論的なのですが、いつの時代でも人情味あふれる庶民がおおらかで愉快にありありと描かれていて、本当に楽しい作品です。
柔侠伝
時代は明治時代です。柔術家の父親、柳秋水に講道館柔道を打ち破ることを叩き込まれた主人公、柳勘九郎は柔術家として講道館に挑みますが、結局講道館に入り柔道で頭角を現して行きます。講道館で修行する貧乏書生の矢崎正介と出会い、良きライバル、友人として物語が進行します。
明治時代の庶民の生活、上流階級の生活、やくざの生活が入り混じり、途中には明治期の監獄生活まで描かれています。その後、時代は大正に移り、柳勘九郎は柔道に邁進します。常に弱い者の側に立ち、正義感のある柳勘九郎ですが、最後は日本を離れて大陸へ渡る事になるのです。その時、勘九郎に思いを寄せる駒子が一緒について行きます。
体制、反体制的な作品なので政治色も見られ、柔道など全く知らない私ですが、明治時代の風俗は面白く、登場人物がみな生活感を持って生きている様子が描かれていて、すぐに引き込まれてしまいました。
早稲田通り沿いにある古書店の一軒では、B5判雑誌が山積みされていました。その山積みの中から3冊とも見つけています。定価は3冊とも1冊 150円でした。
若い頃の勘九郎と、描かれているのは勘九郎に思いを寄せる矢崎正介の妹、千鶴でしょうか。
あか抜けた雰囲気になった勘九郎と、女性は襟をぬいているので分かりませんが成長した千鶴だと思います。
大陸へ渡って馬賊となった勘九郎と、一緒についていった駒子です。
昭和柔侠伝
時代は昭和初期の事です。大陸へ渡って馬賊となった柳勘九郎の一子、柳勘太郎は、勘九郎の死によって14歳の時に一人日本へ戻り、母親駒子の頼みで父親の親友、矢崎正介の家へ書生として寄宿します。
講道館で柔道を始め、腕を上げて行きます。戦時体制の中、飛行機乗りに憧れた勘太郎は飛行兵となります。この作品は多くが第二次世界大戦の模様が描かれています。そうした時代の中で朝子と出会い、第一子柳勘一を設けます。
軍国主義の日本が舞台となっていて、中盤以降はほぼ第二次世界大戦の模様が描かれます。子供の頃から柔道のライバルだった中野国彦が士官となり、権力側として勘太郎と対峙する形です。飛行兵となって戦地で生活する柳勘太郎の物語です。
早稲田通り沿いにある古書店の一軒では、B5判雑誌が山積みされていました。その山積みの中から4冊とも見つけています。定価は4冊とも1冊 150円でした。
子供の頃の勘太郎と、勘太郎の初恋の相手、矢崎正介の娘の友人で病弱な恵美さんです。
飛行兵になったばかりの勘太郎と、女中をやめて従軍看護婦になった朝子です。
飛行兵として活躍する勘太郎と、一緒になったばかりの朝子です。
こちらも第三集の表紙と同じ年の頃の二人です。
雑誌サイズの表紙絵はどれも素晴らしく、まるで画集を見ているようです。感動した作品で、今も表紙に描かれた若い勘太郎と朝子を見ると、自分が若い時代に読んだ頃を思い出し涙がこぼれそうになります。
しかし物語はこの後も続きます。終戦以降は≪現代柔侠伝≫に引き継がれる事になります。そちらは次回ご紹介します。第一子、柳勘一の物語ですが、年を重ねて行く勘太郎と朝子も魅力的です。