第二次世界大戦後、全てが破壊し尽くされた沖縄はアメリカの統治下にありました。何しろ深刻なモノ不足で、人々はその日の生活もままならない日々を送っていました。1948年7月の第三次通貨交換の頃には通貨が3倍以上となり、インフレが進んでいました。

 

戦後、1950年頃までは琉球政府が貿易を管理していましたが、密貿易が盛んに行なわれていました。宮古島や八重山のルートが主流だったようです。煙草はその多くがアメリカ軍基地から流出した闇煙草でした。

 

アメリカ軍と琉球政府は徐々に秩序を整えていきます。1952年9月に煙草消費税が導入されると、輸入煙草に琉球政府の納税証紙が用意されるようです。現在20種類ほど確認されている、封緘紙タイプの証紙はこの頃に作られたものと思われます。

 

さて、1950年代の輸入煙草を見ると、統治していたアメリカの煙草は多く見られます。日本専売公社の製品も輸入されていました。安価な製品としては【マカオ】【台湾】【香港】などのアジアからの輸入が目立ちます。

 

中でも【マカオ】は種類が多かったようです。そのマカオ製品の中には、日本語の名前の付いた銘柄がいくつか見られますのでご紹介します。日本の名前ですが、全てローマ字表記となっています。

 

【マカオ】煙草は琉球専用に用意された銘柄も数多く見られ、中でもこちらは”琉球煙草”と言っても良いような感じがします。

 

 

                     マカオ製

 

日本専売公社の両切りレギュラーサイズの【チェリー】は輸入煙草の販売シェアーのトップが続き、【しんせい】もベスト5に入るほどに良く売れていました。日本語の名前を付ける事、これはマカオの煙草会社の販売戦略の一つなのでしょう。

 

 

                    サクラ (桜)

 

                  (レギュラーサイズ)

 

デザインには桜の木に富士山が描かれていて、日本のイメージそのものです。当時の喫煙者の中には、「日本のたばこか?」と思ってしまう人も多かったのかもしれません。封緘紙として利用された琉球政府の証紙は確認していません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                    カオ― (花王)

 

                   (レギュラーサイズ)

             

 

          デザインには桜の花びらが描かれ、いかにも日本風です。

 

                封緘紙として使われた証紙です。

                     〔輸正―9〕

       括弧の数字は≪琉球民営煙草デザイン≫に記載された通し番号です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                   キリン (麒麟)

 

              〔印―10〕    レギュラーサイズ

 

       伝説の麒麟が描かれています。キリンビールの商標にそっくりです。

 

これは【U字型包装】で上部が包装紙で包み込まれているので、封緘紙は使われていません。サイドに丸型の納税印が印刷されています。

                  〔印―10〕 中型

 

 

 

 

この他にもローマ字表記でマカオ煙草の(あかつき=暁)(ほまれ=誉)台湾煙草(バナナ=香蕉)などの銘柄が残されています。