戦後、アメリカの統治下にあった沖縄では、煙草の製造販売は本土のように国の専売制ではなく、島内の民営会社が行っていました。
１９５１年から１９５７年にかけて４社が設立されましたが、外資系の一社は半年程度で解散し3社が復帰まで営業を続け、狭い島内でシェア獲得のための販売合戦にしのぎを削っていました。
これまで初期の記念煙草のほか、各社の設立当初の銘柄を会社別にご紹介しました。
今回は見本用煙草をご紹介します。販促のために用意された３本から５本程度をパッケージングしたもので、昭和５０年代までは専売公社でも良く見られた気がします。
何しろ沖縄では3社が競合していましたので、過剰ともいえる宣伝が行われていたようです。３社の協定が結ばれていないときには価格合戦も激しく、サービスセールも良く行われていたと聞きます。
見本煙草もいろいろと用意されていたようですが、資料などが残されてはいませんので、現在その全体像を把握することは出来ません。現存数もとても少ないようです。琉球政府の納税印は、銘柄によって押印された製品とされていない製品が存在します。
《琉球民営煙草デザイン》においても、確認できた１５銘柄をご紹介するに止まっています。多分他にもまだ存在していたのではないかと想像しています。
パッケージ自体の数が少なく、なかなか目にする機会はありません。今回ご紹介するパッケージは、お世話になった沖縄の知人が重複して所蔵されていたパッケージを貰い受けたものです。
私が所持している僅かな数の御紹介なのですが、他のパッケージは《琉球民営煙草デザイン》をご参照ください。
琉球煙草株式会社
おとひめ
納税印 〔印―４〕
３本入りの見本パッケージです。民営各社はそれぞれ、各地のたばこ販売店と特約店契約を結んでいました。これはその特約店が一緒に用意したのではないかと思います。湧川商会は、民営会社設立前は外国製煙草の輸入業者でした。
２０本入りのようにおとひめが描かれてはいませんが、印刷色は一緒です。とても少ないようで、私は数枚程度しか現存しないのではないかと思っています。
セブンスター
納税印 〔印―２ｂ〕
４本入り見本煙草です。初期の両切り煙草の銘柄で、ソフトパックでの包装です。
バイオレット
４本入りの見本パッケージです。以前ご紹介した【琉球＝バイオレットの歴史】に詳しく述べましたのでご参照ください。沖縄テレビの広告入りも見られます。
プロバー
４本入りの見本パッケージです。当初の製品は一般的なフィルターチップロングサイズでしたが、途中からこちらのチャコールフィルターキングサイズに変更されます。時代ははっきり分かりません。多分１９６７年ごろではないかと思います。
沖縄煙草産業株式会社
ビクトリー
４本入り見本パッケージです。発売当初のキングサイズのデザインです。市販の２０本入りは間もなくロングサイズに変更されています。展開していませんので、表と裏の両面を展示しています。
プリンス
納税印 〔印―２ｃ〕
４本入り見本パッケージです。１９６７年、発売当初のロングサイズ製品です。市販の２０本入りはこの後スーパーキングサイズに変更されています。
オリオン
納税印 〔印―６〕
４本入り見本パッケージです。１９６７年の設立１０周年にあたり用意されました。サービスセールの表示があります。１９５９年に発売された両切り煙草だったオリオンの、デザインを変更しての再販売です。
オリエンタル煙草株式会社の製品も見本煙草が作られていますが、残念ながら私の手元にはありません。《琉球民営煙草デザイン》に掲載してますのでご参照ください。
琉球民営煙草デザイン
ご紹介している資料の詳細は《琉球民営煙草デザイン》にてご確認いただけます。手前みそ乍ら、
小生の纏めました資料です。宜しかったらご覧ください。
これらのパッケージは、多くの民営会社のパッケージとともに、いずれもデザイン集の作成の為にと貰ったものですが、ひとつの時代を物語る貴重な資料です。
国立国会図書館のほか、東京都立図書館、沖縄県立図書館にてご覧になれます。
僅かですが残部がございますのでご希望の方はご連絡ください。