お天気の崩れを感じさせてくれる肩のしびれに耐えかねて
早くに、床についた
寝つきも、いいし
眠りも、深いほう
なのに
どのくらい眠っていたのか
寝返りを打った刹那
鼻先を、なにかの香りが、かすめ通った
誰も居るはずのない 独りの部屋
このかすかな清涼感のある香り
軽いメンソールのようなこの香り
小学生の頃
ひとりで、母方の祖母の家に泊まりに行った時
天井の高い和室で
眠りにつく前に
手元の灯りだけで、本を読んでた
ふと
背後に、視線を感じ振り向くと
障子の前に、誰か 女性の影が・・・・
『おばあちゃん 』
祖母は、眼科医だったから
こんな薄暗い中で読書してると、叱られる
と
あわてて、本を閉じ
手元の灯りを消して、目を閉じた
そのまま、眠ってしまった
翌朝
『おばあちゃん
ゆうべ、私ンとこに来たの・・・何時頃だった 』
「昨夜は、部屋の前通ったら
もう、電気、消えてたから
障子、開けなかったけど・・・・・」
そういえば
静寂の中
障子の、開け閉めする音
聞こえなかった
祖母の家で、私が泊まってた部屋
私が生まれる少し前
曾祖母が、最期を迎えた部屋だった
そして
泊まった日は
曾祖母の誕生日だった日・・・・・・だった
肩の痺れを和らげるために貼った膏薬 (こうやく) の香りで
一度も会ったコトのない曾祖母に 「会ったかもしれない日」が
よみがえってしまった