海と空と島と線路と。
「降りる?」
「……降りない」
「……降りない」
何度も交わされた会話。
そのたびに僕は少しの溜息と苦笑い。
「強情だなぁ」
「ほっといて!」
この会話も何度目かな……。
僕は電車の窓枠の傍にある小さなテーブルに頬杖をつきながら。
車窓風景を眺める幼いわが子を見つめた。
細く艶やかな髪の毛をツインテールにして。
髪留めは昨日田舎の道の駅で買った和風模様のリボン。
その姿とともに。
電車の窓からは太陽の光によって色を変える大きな海と線路。
遠くには地続きの島……。
もっと晴れていれば真っ青な空と海が交わりあって。
目に眩しい光景なのだが、今日は雲が多い。
曇ってはいないが、重たそうに雲が空を覆っていた。
まだまだ幼い子供と思っていたけれど……。
車窓風景を見詰める瞳は少し物憂げで大人びている。
旅、というのは非日常。
毎日成長を見続けていた我が子の思いがけない姿を見ることができる。
「パパが降りたいんなら好きにしていいよ。
私はもう少し電車に乗っていたいの」
おやおや。
一人前に気を使っているようだ。
僕は目を細めてそんな娘を見つめる。
「車窓風景が気に入ったようだね。
いいよ、光咲(ミサキ)が満足したら降りて家に帰ろう。
それまでは僕も車窓風景を楽しませてもらうよ」
僕の言葉に光咲がほうっと顔を和ませる。
一人前にやせ我慢もしていたようだ。
僕たちが降りるべき駅はとうの昔に通り過ぎた。
家から遠ざかる電車。広がる車窓風景。
それでもいい。
娘の好奇心。
それもまた成長の証なのだから。






