なぜかニュースを見ていると「中国の旧正月、春節」っていう表現があちこちに見られるけれど
太陰暦は日本で「旧暦」と呼ばれているだけだと思うので、この言い方は何だかおかしい。

華人(中国系人)にとって、年に一度のお正月と言えば春節であって、旧も新もないはずだ。

ところで、日本では今年、ことのほか華人観光客の大量の買い物が注目されているようだ。
「手当たり次第」「お金に糸目をつけず」大量にバンバン買っていく、というのが一般的な
イメージらしく、近年すっかり定着してきた

「爆買い」

という呼び方が、あちこちのメディアで使われている。

デパートや量販店などは、ここぞかき入れ時とばかり手ぐすね引いて待ち構えているようだ
けれど、一般の日本人は、何だかすごい買いあさり方だよね、という、やや冷ややかな見方を
しているような感じも受ける。

自分が観光地で育ったせいか、個人的には、あまりたくさんの観光客があふれる状態は好きでは
ない(正直、店が混んだりするのは日常生活の邪魔だし、高くても観光客相手に物が売れると、
物価が吊り上がってしまう)。けれども、華人の迫力のお買い物ツアーに関しては、日本に来て
たくさんの物を買いたい気持ちはよく分かるし、年に一度の正月休みに特に集中してしまう
のは、華人の人口を考えれば、仕方のないことだと思っている。

なぜなら、わざわざ日本に来てあれだけの買い物をするのは、日本に対する
信頼のあかしだから。

シンガポール人ですら(あちらで同じ物を売っているのに)「日本で買う」ことにこだわる。
その方が値段的に割安な場合もなくはないけれど、もっと重要なのは、「日本の店で売っている
からには、コピー品などではなく、ホンモノに違いない。品質も確かなはず」という信頼感だ。

海外では、たとえメイド・イン・ジャパンと書いてあっても、果たしてホンモノかどうか
信じ切れない部分が常にある。中国本土(中華人民共和国)では特に、食品や赤ちゃんのもの、
化粧品など、信頼できる安心安全な製品を手に入れるのが難しいという危機感が強い。日本人
から見れば、かさばる大量のオムツを買っていくのは不思議に見えるかもしれないが、自分の
子どもに安全なものをと願う気持ちは、切実だ。

わざわざ日本に旅行しなくても、海外に出店している日系の店で買うとか、日本から通販で
取り寄せるとか、すればいいのでは?と思うかもしれないが、経営が日系でも「品物が粗悪な
コピー品にすり替えられているのでは」「日本から発送と書いてあっても、事業者が信用
できるのかわからない」「輸送途中に何かあるのでは」といった不安がつきまとう。実際に
日本に来て、この目で確かめて買いたいという考えは、もっともなのだ。

日本で気前良くお金を使っている人々が、決してお金持ちばかりとは限らない。普段はとても
倹約してお金を貯め、本当に良い物を手に入れたいとやってくる人も多い。そして、自分の
ためだけでなく、親や親戚にも良い物を使ってもらいたいから何個も買っていく。

バブルの頃は、日本人がヨーロッパに行って高級ブランド品を買いあさり、現地でヒンシュクを
買っていたものだ。けれどあれば、あくまで自分のためにぜいたく品を手に入れたいという
人が中心のブームだった。

自分や家族のために、品質が良く安心・安全な物を手に入れたい、という理由でお金を使う
ことの方が、私にはよほど理解できる。