- 『365通のありがとう』 ジョン クラリク
この本の著者、アメリカ人の弁護士で現職は裁判官。
内容は、完全に行き詰まってしまったかに思われた状況から、どうやって巻き返したかという、人生の逆転劇。
そのきっかけになったのが、一年間、毎日一通は手書きのお礼状を書こう、と決意したことだった……。
彼はこれまでの人生で、お礼状を書いたことがほとんどない。周囲にも、お礼状を習慣にしている人はいない。
その事実にまず、驚かされる。
アメリカにはカードショップが多く、あれほど印刷された既製品のグリーティングカードがあふれているのに
時間をとってお礼状を書く人はどうやら、少ないらしい。
プレゼントをもらっても、誰からのものか覚えていなくて当たり前。
気に入らないものは、デパートでさっさと交換してもらおうと考える。
そう聞くと何とも味気なく、殺伐とした感じがする。
でも、考えてみれば日本のお中元やお歳暮だって、普通、メッセージを添えるようにはできていない。
いまどき、持参して手渡しする人も少ない。ただ、モノを送っておしまい、だ。味気なさでは負けていない。
自分自身はどうだろう。
この本を読みはじめたときは、「お礼状を書かない人生なんて、想像できない!」と思っていた。
人生最悪の状況に陥っているからといって、「感謝するようなことなど、何も思いつかない」と考える著者に、
正直、共感できなかった。人間どんな時でも、探せば何かしら、ありがたいと思えることくらい見つけられるはず。
たとえ今でなくても、過去を振り返ったらきっと何かある。親切にしてもらった経験とか、昔の友情とか……。
実際、著者は「一日一通のお礼状のネタ探し」という行為を通して、これまで気づかなかったさまざまな
「ありがたいこと」を発見し直し、それにつれて、満ち足りた謙虚な気持ちを持つようになっていく。
不思議なもので、彼の考え方が肯定的になると人生の流れも変わり、すべてが好転しはじめる。
やっぱりそうだよね、と思いながら読み進めていったけれど、途中から、だんだんと気になりだした。
自分が最後に「手書きのお礼状」を書いたのは、いつだったっけ?
そう考えだすと、落ち着かない気分になった。
切手代が高くつくから。お礼状は早く届いたほうがいいから。そんな理由をつけて、もう何年も、お礼はもっぱら
メール送信ですませていたような気がする。相手の顔を思い浮かべながらカードや便箋を選び、手で書くことは
気がつけば、いつの間にかほとんどしなくなっている。
この本でいう「お礼状」はThank You Note、ちょっと一筆という感じ。
あらたまった長文では決してなく、ささっとペンを走らせるイメージだ。
私自身、人生に行き詰まりを感じている。だから今こそ、お礼状を書くチャンスなのかもしれない。
久々に、住所録を引っ張り出してみよう。この時期、クリスマスカードや年賀状に書き添えてもいいかも。
とにかく、著者にならって手書きでお礼のメッセージを書くことから、はじめてみようと思う。