箕輪 優子
チャレンジする心―知的発達に障害のある社員が活躍する現場から

やっぱり!やっぱり!やっぱり!

読みながらガッツポーズしていた。(深く感動していたことは、いうまでもない)


知的障害を伴う自閉症の方のことについて質問される機会が多いし、そういう相談

はたいてい「就労し、自分なりに自立できるか」「結婚できるか」といったことなので、

勉強のために読んだ本。ある会社で、知的障害のある社員だけの特例子会社を

つくり、そこで、生き生きと、素晴らしい能力を発揮して働く人たちの様子を、彼らを

採用し、見守って共に働いてきた著者が書いた本。


普通の会社と何ら変わらない。収益を上げ、立派に経営も軌道に乗っている。

唯一違うのは…採用されたのは全員が「知的障害がある」と行政によって認定され

た人びと、おおむねIQ70以下で、社会的活動に困難があると判断された人々だ

ってことだ。会社の名前は、「横河ファウンドリー」という。


私はこれまで「自閉症を体験する」というワークショップ形式の講演会をしてきた。

自閉症じゃない人に、自閉症ってどんな感じがするものか、少しでも「心で感じて」

もらうためだ。


私には、知的障害はないとされている。が、知的障害を伴う自閉症の人たちを理解

したい、という質問をたくさん受けたし、自分でも、知的障害があるってどんな感じ

がするものか、いろいろ想像してきた。その時に、「こうじゃないかなあ」と思って

いたことが、この本の中にはたくさんたくさん、「実例」として登場する!!


もちろん、自分以外の人のことを完全に理解することなんて、できない。でも…

よかった! 決して間違った方向で考えていたわけじゃなかったんだ。確かに。


私は、知的障害(つまり知的発達に問題)があると、どうしてもある程度の発達障害

が伴うと思ってる。社会全体のことを知るとか、対人関係の技術を身につけること

だってすべて、知的な処理能力、理解力は必要だし、たくさんの数の言葉を覚え、

使いこなすのもやっぱり知的な作業だから、コミュニケーション力にも影響する。


つまり、社会性を身につけ、対人関係を理解し、コミュニケーション能力を持つと

いう部分は、知的発達の障害があると多かれ少なかれじゃまされてしまうはずだ。


となると、知的障害がある人なら、誰でもいくぶん自閉症に似た部分をもっていて

もおかしくない。だからこそこの本が、「知的発達を伴う自閉症」と診断されている

人たちをよりよく知り、理解するのに役立つわけ。


この本を読んでいると、「知的障害」と一概に呼ばれているもの自体、実はかなり

あいまいで、実際に持っている能力にはばらつきが大きく、非常に得意な分野や
苦手な分野があり、不具合の程度も人それぞれであることがわかる。その点は

知的なものを含む・含まないに関わらず、あらゆる発達障害全般に共通だと思う。


要は、私が講演のたびに一生懸命繰り返していた「障害について本で学んだこと

を実際の人に応用するのではなく、目の前にいる人を観察して、想像力を使って

理解しようと努力してください」って考え方は、決して間違いじゃなかったんだ!


この本の中では、養護学校や福祉施設の方に「この人の能力ではこの程度以上

は無理ですから」と言われていた人たちの中から採用され、会社にやってきた人

たちが、劣等感(知的障害があると、「頭が悪い」とか「何もできない」ものだと思

われてしまいがち。だけど、そのことを本人たちも知っていて、傷ついているとは

みんな思わないらしい)を脱ぎ捨て、意欲や向上心を持つ→いろいろな仕事に

チャレンジしてみる→やれば予想以上にできることもあり、適性も見つかる→自信

をもち、さらに意欲的になる、という、プラスのサイクルが回り始める様子が活写

されている。


そして、いったんものごとがプラスに動き始めると、素晴らしいことが起きた。

養護や福祉関係者、家族が目を疑うほど、全員が能力を伸ばしはじめるのだ。

「福祉事業ではなく本物の、収益を上げる会社として機能する」という目標も達成。

知的障害者をお情けで雇い、適性も考えず、ただ簡単なことしかできない、教えて

もどうせわからない、という思い込みから、きちんと社員教育もせず、単純作業を

繰り返させるだけ、というのはむしろ侮辱的な扱いなんじゃないか? という、大事

なことが見えてくる。(だって自分がそんな扱いを受けたら、イヤじゃない?)


「うちの社では、知的障害のある彼らこそ貴重な人材であり戦力です」という著者

の言葉が身にしみる一冊だった。適材適所をみつけ、自分の適性を発揮して会社

の中でいい仕事をしている時は、彼らは「障害者」じゃない。生活の他の部分では、

他人の助けが必要な「障害者」であっても、職場では立派な「戦力」だ。


親である人にとっても大事な情報があった。


会社で実力を発揮しやすいのは、親が子どもの頃から、将来社会の中で自立して

いくために(障害のある子どもであっても、自立するのだ)”「家族の中で重要な役割

を担う一員であること」、「幼い頃からどのような大人になってほしいかのイメージを

持つこと」、「短所を認めながらも、ひとつでも多くの長所を見つけること」、「できる

ことを増やす生活を心がけること」”という、四つのポイントを意識して育てていた人。


前向きであること、失敗してもいいからできるだけ多くの体験をしてみることの重要性

も指摘されていた。言うまでもない。やってみなければ、できることも見つからない。


よかった。私が迷い悩みながらまとめた「親であるあなたへのメッセージ 」と共通

する部分がたくさんある。あれを作っている時は、知的障害のあるお子さんにとって

も同じ考え方で大丈夫なのかどうか、確信が持てずにいた。でも、どうやら、子ども

を育てるにあたって一番大切なことは、どんな子どもであろうと共通しているらしい。


やっぱり!やっぱり!やっぱり!


「知的障害がある」と言われる人びとを、よりよく知りたいと真剣に思うすべての人に、

ご一読をおすすめしたい本。