19世紀、インド亜大陸の北西部に存在したシク王国。シク教徒の軍事力と精神性を結集させたこの国家は、ラジット・シン(Ranjit Singh)のもとで一時はパンジャーブ一帯を制し、ムガル帝国やアフガニスタン、さらにはイギリス東インド会社と対峙しました。

私が参考にしたのは、大英図書館に収蔵されている東インド会社の報告書のみ。しかしその中から読み取れるのは、単なる「征服された国」という枠では収まらない、シク王国の誇りと孤独です。















漫画では、包頭巾の兵士たちの戦いから、イスラム勢力の反発、そして若き最後の王子ドゥリープ・シン(Duleep Singh)の孤独までを描きました。光の山(Koh-i-Noor)のダイヤモンド、そして遠い異国で涙する王女たち…。黒白で描いたラストの3枚は、ただの過去ではなく「今なお失われ続けているもの」へのレクイエムです。

現代の私たちが知る「イギリスの宝石」の裏に、どれだけの物語が埋もれているか。
歴史とは、征服された側の沈黙の記録でもあるのです