「本能寺の変」は、日本史の中でも最も劇的なクーデターのひとつです。1582年、天下統一を目前にしていた織田信長は、家臣・明智光秀の謀反により本能寺で自害に追い込まれました。
多くの歴史資料では、信長は冷静に最期を迎えたと描かれ、明智光秀の動機も「怨恨」や「野心」などさまざまに語られてきました。しかし、彼らは本当にそんなに“整った”死を選んだのでしょうか?
私は「信長公記」や「信長と弥助」「天正伊賀の乱」の記述を参考にしつつ、もっと“人間くさい”武将たちを描きたくなりました。燃え上がる火の中で歯を食いしばり、悪態をつきながらも笑って死地に向かう家臣たち。
光秀の表情も、「勝者」のそれではなく、自分の過去と罪を一緒に焼き尽くしてしまいたいという苦しみをにじませています。
この漫画は史実の再現ではありません。けれど、想像という名のフィクションが、史実以上に「人間の真実」に触れられることもある。そう信じて、描きました