未来1
突然紀夫の両親が訪ねてきた。
そして、すみれに、紀夫のことは
あきらめてくれという。
ここまでまっても便りもなければ
様子もわからない。
戦死したものと思ってくれといった。
なによりも、すみれには未来があるから。
それがショックだったすみれは
翌日大阪で五十八にあって相談した。
「おまえはどう思う?」と聞かれて
すみれは「わかりません」といった。
五十八は「できるかぎり自分も
紀夫の消息を探してみる」といった。
闇市を歩いていると
元締めの根本と玉井が
言い合いをしていた。
「場銭を取らないとどうやって
暮らしていくのか」と玉井が言う。
根本は、この間の五十八の
話しがしみこんだらしく
場銭を取らない方向へと
考えているらしい。
たちどまると栄輔が追いかけて
きて、駅まで送るという。
落ち込んでいるすみれに
「ベビー相談室は評判がいいそうだね」と
聞く。すみれは栄輔に来てくださいというが
栄輔は、喜んで「何を相談しようかな」と
いう。すみれはふっと笑いそうになった。
そのとき、リヤカーを引いた物売りを
見つけて栄輔が走って行った。
そのリヤカーに赤い傘がのっていた。
その傘は、栄輔の両親がやっていた
傘工場でつくったものだという。
「戦争で焼けてしまってもうなくなった
と思っていたが、こんなところで
出会うとは・・・・・
すみれさんも」と栄輔は言った。
「願っていたら必ずかなうから」といった。
「いつも栄輔さんは元気で明るい。
それで、私も元気になる」とすみれは
いって、感謝した。
店に戻った。
ちょうど、良子と君枝が
子供たちが父親になつかないことを
悩んでいた。
その話はすみれには、つらいもの
だった。
すみれは一緒に型紙を作りながら
用事を思い出したといって
外へ出ていった。
泣いていると明美がハンカチを差し出した。
「なにかあったん?」
「ええ・・・」
明美は浮嶋時計店の店主に
ちょっと店を貸してと言って
店主に出てもらって
すみれと話をした。
すみれの話は、田中五郎にいわれたこと
だった。
あまりにもすみれの心には重たかった。
明美は、「なんだ、そうなんや。
死んだという話ではないのだから
ええことや。」といった。
そして、「あんたは
あんたで
淡々としとき。
淡々やで。」
といった。
次のベビー相談室の日は
前回以上に盛会だった。
店の中は客でいっぱいになった。
麻田の店に下駄を買いに来た
客は「またくるわ」といって
帰って行った。
君枝を案じて昭一が健太郎を
背負ってやってきた。
そのすがたをみて
すみれは、
「淡々と・・・・」
「淡々と・・・・」と
自分に言い聞かせた。
夕方、すみれはひとりになって
さくらを背負い
高台にのぼった。
紀夫を思って泣いた。
「会いたいね・・・
あいたいね・・・
お父さんに
あいたいね、」と
すみれはさくらに
いった。
****************
つらい場面です。
多くの女性が
戦争へ行った夫を
父を
兄弟を
恋人を
思って、なきながら、暮らした
時代だったのでしょう。
多くの子供たちが
両親を亡くし
父を亡くし
母とともに
父親の帰りを待ちわびた
時代だったのでしょう。
帰ってきた家族は
それなりに、悩み事があり
いまだ、生死さえわからない
家族は、祈るように
待ちわびていたのでしょう。
田中五郎の言葉は
すみれの幸せを思っての
言葉だったと思いますが
帰らない人を
ずっとまっている
姿をみているのも
田中にとって
すみれが、かわいそうで
たまらなかった
ことと
思います。
突然紀夫の両親が訪ねてきた。
そして、すみれに、紀夫のことは
あきらめてくれという。
ここまでまっても便りもなければ
様子もわからない。
戦死したものと思ってくれといった。
なによりも、すみれには未来があるから。
それがショックだったすみれは
翌日大阪で五十八にあって相談した。
「おまえはどう思う?」と聞かれて
すみれは「わかりません」といった。
五十八は「できるかぎり自分も
紀夫の消息を探してみる」といった。
闇市を歩いていると
元締めの根本と玉井が
言い合いをしていた。
「場銭を取らないとどうやって
暮らしていくのか」と玉井が言う。
根本は、この間の五十八の
話しがしみこんだらしく
場銭を取らない方向へと
考えているらしい。
たちどまると栄輔が追いかけて
きて、駅まで送るという。
落ち込んでいるすみれに
「ベビー相談室は評判がいいそうだね」と
聞く。すみれは栄輔に来てくださいというが
栄輔は、喜んで「何を相談しようかな」と
いう。すみれはふっと笑いそうになった。
そのとき、リヤカーを引いた物売りを
見つけて栄輔が走って行った。
そのリヤカーに赤い傘がのっていた。
その傘は、栄輔の両親がやっていた
傘工場でつくったものだという。
「戦争で焼けてしまってもうなくなった
と思っていたが、こんなところで
出会うとは・・・・・
すみれさんも」と栄輔は言った。
「願っていたら必ずかなうから」といった。
「いつも栄輔さんは元気で明るい。
それで、私も元気になる」とすみれは
いって、感謝した。
店に戻った。
ちょうど、良子と君枝が
子供たちが父親になつかないことを
悩んでいた。
その話はすみれには、つらいもの
だった。
すみれは一緒に型紙を作りながら
用事を思い出したといって
外へ出ていった。
泣いていると明美がハンカチを差し出した。
「なにかあったん?」
「ええ・・・」
明美は浮嶋時計店の店主に
ちょっと店を貸してと言って
店主に出てもらって
すみれと話をした。
すみれの話は、田中五郎にいわれたこと
だった。
あまりにもすみれの心には重たかった。
明美は、「なんだ、そうなんや。
死んだという話ではないのだから
ええことや。」といった。
そして、「あんたは
あんたで
淡々としとき。
淡々やで。」
といった。
次のベビー相談室の日は
前回以上に盛会だった。
店の中は客でいっぱいになった。
麻田の店に下駄を買いに来た
客は「またくるわ」といって
帰って行った。
君枝を案じて昭一が健太郎を
背負ってやってきた。
そのすがたをみて
すみれは、
「淡々と・・・・」
「淡々と・・・・」と
自分に言い聞かせた。
夕方、すみれはひとりになって
さくらを背負い
高台にのぼった。
紀夫を思って泣いた。
「会いたいね・・・
あいたいね・・・
お父さんに
あいたいね、」と
すみれはさくらに
いった。
****************
つらい場面です。
多くの女性が
戦争へ行った夫を
父を
兄弟を
恋人を
思って、なきながら、暮らした
時代だったのでしょう。
多くの子供たちが
両親を亡くし
父を亡くし
母とともに
父親の帰りを待ちわびた
時代だったのでしょう。
帰ってきた家族は
それなりに、悩み事があり
いまだ、生死さえわからない
家族は、祈るように
待ちわびていたのでしょう。
田中五郎の言葉は
すみれの幸せを思っての
言葉だったと思いますが
帰らない人を
ずっとまっている
姿をみているのも
田中にとって
すみれが、かわいそうで
たまらなかった
ことと
思います。
