とにかく前へ5

すみれが作ったおしめ
をエイミーは受け入れてくれな
かった。
呆然とおしめをもって家路につく
すみれのまえに
紀夫と勘違いした
兵隊姿の男が倒れた。

そして
「腹・・・・減った・・」

と、うなりながら立ち上がり
さっていった。

そんな辛い時代に
あって、すみれもつらい思いを
していた。

紀夫との結婚写真を見て
「おとうさん、どこにおるんやろ
ね・・・・」
とさくらに話しかけた。


そのころ大阪の闇市に住む
ゆりたちは、毎日の生活と
戦っていた。

すさんだ闇市にあっては
喧嘩は日常のもの。
潔が仕入れてきた
毛布を、300円で売ると潔が
ゆりに指示をした。
「高い」というゆりだったが
そこに数人の男たちが走って
きて、なぐりあいとなった。
それに巻き込まれたゆりは
どろのなかに突き飛ばされて
たおれた。

周りの男たちは
わらって「どんくさいやつや」と
いった。
ゆりは「もうこんなところ嫌や」という。
潔は「かつての坂東営業部の顧客を
まわって販路を確保する、そのうえで
立て直す時に協力してもらうという
筋書きでがんばっているから
それまでは泥水をすすってでも
生きなくては」という。
もう泥だらけのゆりだった。

ゆりはうちひしがれていた。
潔は、かつて、野上の父が
「坂東家を何があっても守る
んや」といった言葉が
よみがえる。

しかし、それはこの時代では大変なこと
だった。

外で泥まみれの体を
お湯につけていると
ヘイからガラの悪い男
たちがのぞき、「一緒に一服しよう
や」、と声をかける。
ゆりは、「やめてください」といって
お湯をかけるが
男たちはワイワイと騒ぎ立てる。

やっとの思いで追い払ったが
ゆりは、潔と栄輔の話を聞いて
しまった。
潔は「かつての坂東営業部の取引先に
もう一度旗揚げするという話をもって
いくので、しばらく忙しい」と
いった。
栄輔は、自分も行くというが潔は
こんなところにゆりを置いていけれ
ないので、ゆりを守って欲しいと
いった。

麻田の店では時子たちが集まって
わいわいといっている。
「すてきだ」と雑貨を見て言う。
千代子も「やっぱり女はいくつに
なっても、乙女やな」という。
文はわらって「やめてよもう~~」と
いったのでみんな笑った。

店の前を外人の女性が笑いながら
歩いて行った。

時子たちは「くやしいけど
あんなおしゃれしたいな」という。
「いつまでもんぺはいてな
あかんのやろ?」

すれみは
「作り方を教えましょうか」と
遠慮がちに言った。
「お洋服はつくれないけど
店に置いてある雑貨みたいなものは
古い服を切って作り変えることはできる」
といった。
女性たちはよろこんだ。
そして、手芸教室となった。
ほしいものを手作りする。
その喜びを一同は一緒に味わうことに
なった。

写真いれができた時子は
「何を入れようかな」という。
そして、家のお金は自由に使えな
いけど、といってみんなそれぞれ
持っているものをすみれにお礼として
くれた。
コッペパンだったり
辞書だったり。。。。

みんな悪いなという顔をして
去って行った。

麻田は大事にとっておいたけど
といって紅茶にいれる
シナモンを出してきて
紅茶に入れてくれた。

残り少なくなったシナモンだった。

子供のころここで飲ませて
頂いたことをすみれは思い出した。

そして、自分が作るものは
ぜいたく品なんだといった。
「自分だってこの雑貨をいいと思っても
買わない」といった。
「もう、潮時なのかも」という。
先の不安ばっかりだ。
麻田は
すみれは若いから
これからだから
何があろうとも
どこにいこうとも
なにもしなかったら
何も見つからないものだと
いった。

そして麻田は工房で
靴をつくりはじめた。

そのころ、五十八は
近江の本家にいた。
忠太郎が一緒だった。
すみれのことや
ゆりのことが心配だった。

五十八は親として情けないという。
忠は、離れていても心配して
くれる家族がいるのは
いいことだという。
五十八はそれだけでいいのかと
聞くと
「ええんです」と
忠は言った。

すみれは雑踏のなか
ゆりを訪ねた。

潔に売ってくれと頼んだものが
あって、それが売れたと
潔に言われた。

潔は、すみれに働けなんていって
すみれを追い込んだのかなという。
「そんなことはない」とすみれは言う。
「だって・・
こんなに、つらくても
笑顔に変える
ちからにかえる人が
いる。

前に進む力になってくれる
ひとが
勇気をくれる人が

いる

それが人生の宝だとかつて
母は言った。

そのことを

すみれは、ゆりの家にあった
坂東家の家族の写真を見て
おもいだした。

「ごめんね

わたしは
大丈夫や・・・」
すみれの心の中に
紀夫の声が聞こえてくる。

『僕の子を
僕とすみれの子を

しっかり頼みます・・・』

すみれは笑顔になって
帰って行った。

がんばれ

すみれ・・・・
***************
いまが一番大変な時です。
どうしても雑貨屋さんは
日々の暮らしの付け合せの様な
ものです。
かわいいものが欲しいと思っても
その前に食べ物である。
それがない時代・・・みんな空腹を抱えて
いた。
食べることに必死になっていた。

でもすみれを思って心配してくれるひとは
たくさんいた。
キヨも、麻田さんも
時子たちも
そして、ゆりや潔、栄輔も・・
明美もはいるかもしれない。
先の不安を抱えて
すみれは、さあ・・・・と
歩き出したわけです。

この辺・・・

どうしても暗くて

視聴率も下がりますが

これがないと

次の展開もありませんしね。

すみれは、こうして、がんばって
いますが、

潔の仕事も大変なわけです。
果たして坂東営業部という
名前に、どれほどのひとが
賛同してくれるのか
協力してくれるのか

わかりません・・・。

こんな時代に、ゆりが羽織っている
タータンチェックの赤いストールは
ひときわ目立ちます。
これでは
いつもめ事に巻き込まれる
かと
思いますが・・・。