常子、大きな家を建てる2
君子が倒れた。
ガンだった。
本人にはそのことは告げない
常子。
「お医者様は何の心配もない、
きちんと治療したらなるだろうって。」
「そういうとだったら、退院したいわ。」
君子は
ひとりでいるより、みんなといたいと
いう気持ちだった。
昭和39年10月。
朝、ラジオからオリンピックの放送が
聞こえる。
君子はそれを聞きながら
子供たちの声に注意をむけた。
たまきが、真由美の髪を
といていた。
でもたまきは咳をしている。
君子がそこへ来てたまきの
額に手を当てると
「熱い」といった。
どうやらたまきは
風邪をひいているらしい。
たまきは学校を休むことに
なった。
君子はたまきのかわりに
真由美の髪をといた。
真由美は髪の毛をといて
もらうのが好きだという。
君子は真由美のそんなところが
美子と一緒だといった。
鞠子は真由美と潤をつれて
幼稚園へ行った。
君子はたまきに氷枕を
あてがいながら
昔、鞠子が体調を崩したことを
おもいだしていた。
たまきは常子に似ているようで
鞠子によく似ている。
勉強がすきで
やりはじめたら最後までやること
がんこなところ
そういってたまきの頬に両手を
あてて、「こうしたら安心でしょ」と
いった。
君子が子供のころ母である青柳滝子から
こうしてもらったことも
たまきに話した。
夕方水田や常子美子が帰って来る。
たまきが風邪をひいて学校を
休んだと聞いた水田は
おどろいて
たまきの部屋に行く。
君子はたまきにおかゆを
つくっていた。
そして、ニンジンを葉っぱの
形にアレンジしてどう?と
大昭にきいた。
大昭は、きれいですねという。
白いおかゆの上にのったあかい
人参の甘露煮のような
葉っぱにたまきは
「きれい」と喜んだ。
そして君子は真由美にハンカチのきれい
なたたみ方を教えた。
そばで潤が絵をかいていた。
そして今日も
大家族の夕餉が始まった。
潤はその大きな家に住んでいる
一人一人の似顔絵を
書いていた。
君子は、「この絵をちょうだい」と
潤にいうと潤は気持ちよくくれた。
みんな、楽しそうに食事をした。
君子は目を細めてその光景を
みていた。
部屋に帰る君子に付き添って
廊下を行くとき
君子は鼻歌を歌っていた。
常子は君子が鼻歌を歌うときは
悲しい時だと覚えていた。
それをきくと、君子は笑って
「知らないうちに心配かけて
いたのね」といった。
「でもうれしいときも鼻歌が
でるのよ」といった。
「今日は
髪をといて
料理をして。。
にぎやかに笑って
あと何日みんなでご飯を
食べられるかしら」と
つぶやく。
常子は「何をいっているのですか?
数えたらきりがありませんよ」と
いった。
君子は仏壇に手を合わせて
「今日はぐっすりと寝れるわ」と
いった。
「おやすみ・・」
「おやすみなさい・・・」
廊下に、君子の鼻歌が
聞こえてきた。
常子は…うつむいて聞いて
いた。
昭和39年12月。
君子の病状は悪くなり
一日中寝ているときが多く
なった。
常子は相変わらず仕事に打ち込んで
いたが、ある日
花山とともに
帰宅した。
花山は君子の見舞いに来たという。
出迎えた鞠子は
「ありがとうございます」といった。
******************
常子は癌であることを
君子に隠している。
君子は知っているだろうし
治らないだろうということも
知っているだろう。
自分の体のことだから。
鼻歌はそんな君子の悲しい気持ち
の表れだったのではと思う。
楽しいときも出るのよというが
三姉妹の常識は君子が鼻歌を
歌うときは悲しみを隠している
ときだった。
だから、きっと常子が君子にうそを
ついていることを見破っていて
嘘をつかなければならない常子
を悲しいと思っているのではと
思った。
常子がいたのは君子という
大きな存在があったからであると
昔、花山がいった。
そして、花山は君子になにを
言いに来たのだろうか。
君子が倒れた。
ガンだった。
本人にはそのことは告げない
常子。
「お医者様は何の心配もない、
きちんと治療したらなるだろうって。」
「そういうとだったら、退院したいわ。」
君子は
ひとりでいるより、みんなといたいと
いう気持ちだった。
昭和39年10月。
朝、ラジオからオリンピックの放送が
聞こえる。
君子はそれを聞きながら
子供たちの声に注意をむけた。
たまきが、真由美の髪を
といていた。
でもたまきは咳をしている。
君子がそこへ来てたまきの
額に手を当てると
「熱い」といった。
どうやらたまきは
風邪をひいているらしい。
たまきは学校を休むことに
なった。
君子はたまきのかわりに
真由美の髪をといた。
真由美は髪の毛をといて
もらうのが好きだという。
君子は真由美のそんなところが
美子と一緒だといった。
鞠子は真由美と潤をつれて
幼稚園へ行った。
君子はたまきに氷枕を
あてがいながら
昔、鞠子が体調を崩したことを
おもいだしていた。
たまきは常子に似ているようで
鞠子によく似ている。
勉強がすきで
やりはじめたら最後までやること
がんこなところ
そういってたまきの頬に両手を
あてて、「こうしたら安心でしょ」と
いった。
君子が子供のころ母である青柳滝子から
こうしてもらったことも
たまきに話した。
夕方水田や常子美子が帰って来る。
たまきが風邪をひいて学校を
休んだと聞いた水田は
おどろいて
たまきの部屋に行く。
君子はたまきにおかゆを
つくっていた。
そして、ニンジンを葉っぱの
形にアレンジしてどう?と
大昭にきいた。
大昭は、きれいですねという。
白いおかゆの上にのったあかい
人参の甘露煮のような
葉っぱにたまきは
「きれい」と喜んだ。
そして君子は真由美にハンカチのきれい
なたたみ方を教えた。
そばで潤が絵をかいていた。
そして今日も
大家族の夕餉が始まった。
潤はその大きな家に住んでいる
一人一人の似顔絵を
書いていた。
君子は、「この絵をちょうだい」と
潤にいうと潤は気持ちよくくれた。
みんな、楽しそうに食事をした。
君子は目を細めてその光景を
みていた。
部屋に帰る君子に付き添って
廊下を行くとき
君子は鼻歌を歌っていた。
常子は君子が鼻歌を歌うときは
悲しい時だと覚えていた。
それをきくと、君子は笑って
「知らないうちに心配かけて
いたのね」といった。
「でもうれしいときも鼻歌が
でるのよ」といった。
「今日は
髪をといて
料理をして。。
にぎやかに笑って
あと何日みんなでご飯を
食べられるかしら」と
つぶやく。
常子は「何をいっているのですか?
数えたらきりがありませんよ」と
いった。
君子は仏壇に手を合わせて
「今日はぐっすりと寝れるわ」と
いった。
「おやすみ・・」
「おやすみなさい・・・」
廊下に、君子の鼻歌が
聞こえてきた。
常子は…うつむいて聞いて
いた。
昭和39年12月。
君子の病状は悪くなり
一日中寝ているときが多く
なった。
常子は相変わらず仕事に打ち込んで
いたが、ある日
花山とともに
帰宅した。
花山は君子の見舞いに来たという。
出迎えた鞠子は
「ありがとうございます」といった。
******************
常子は癌であることを
君子に隠している。
君子は知っているだろうし
治らないだろうということも
知っているだろう。
自分の体のことだから。
鼻歌はそんな君子の悲しい気持ち
の表れだったのではと思う。
楽しいときも出るのよというが
三姉妹の常識は君子が鼻歌を
歌うときは悲しみを隠している
ときだった。
だから、きっと常子が君子にうそを
ついていることを見破っていて
嘘をつかなければならない常子
を悲しいと思っているのではと
思った。
常子がいたのは君子という
大きな存在があったからであると
昔、花山がいった。
そして、花山は君子になにを
言いに来たのだろうか。
