常子、子供たちの面倒を見る3

花山の原稿書きにつきあって
会社に残った常子。
ふと昼間、美子が言ったことを
おもいだした。
「花山さんは、毎号毎号、一行
一行、全身全霊で雑誌を作って
います。それと同じようにメーカー
のかたも、心を込めて作った
商品なので、それを批判するというのは
相当な覚悟ですよ・・」


あくる朝、光和医薬品社でのこと。
星野の会社である。
始業時間ぎりぎりに星野が
はいってきた。

先輩が「よく間に合ったな、
今日はダメかと思った」と言いながら
「いい人はいないのか?
こどもの面倒を見てくれるひととか。」

と何気に再婚の話をする。
「よかったら、紹介するぞ」とまで
いわれた。
苦笑いの星野だった。

常子のほうは一晩かかって
花山の原稿ができあがった。

それを読んで常子は「すばらしいです。」
といった。
だが、いつもと違って数社のメーカー
名をだして、辛らつな批判になって
いることに
常子は気になって花山に聞いてみた。

花山は、「そうでなくては、商品試験
にならないだろう?」といった。
こうして、記事が出来上がり
本木の写真とともに印刷へと
作業が進んだ。
ほっとする社員一同だった。
その日、美子は南とデートだった。
常子に遅くなるからというと
常子は「わたしもよ、行くところが
あるのよ」といって先に帰って行った。

いくところとは
星野宅だった。
約束した日だった。
家を訪ねると
子供たちはうれしそうに
ドアを開けて迎えてくれた。

「遅くなってごめんね。でも
この時間なのよ」と常子は言うが
大樹は、大丈夫という。
「夕食は食べたの」と聞くと
大樹は食べたというが
青葉が食べていない。
人参が嫌いなのだ。
夕食のおかずは人参が
はいっている野菜の煮物
だった。
常子は、ちょっと考えて
「台所使っていいかな」といった。

星野が家に帰ると
家の外へ、子供たちの
やわらかな
暖かい声が聞こえる。

不思議に思って中に入ると
子供たちが食事をして
いた。

「お帰りなさい」と
子供たちや常子が言う。

星野は「これは?」と聞くと
常子は人参が嫌いな
青葉のためにジャガイモと
人参をすりつぶして
コロッケにしたという。
ふたりは、おいしいと
いって食べた。
それを嬉しそうに常子が
みていたので、星野は
あの時と同じだといった。

常子が星野にお味噌汁を
作ってくれたことが
あった。
おいしいというと
常子は嬉しそうにして
いた。

常子と星野は
台所でかたづけをしながら
子供の話をした。
常子は二人の子供たちが
素直にすくすくと育っている
ので、星野たち夫婦の人柄だ
という。
人の気持ちをよく考える
子供たちだと思ったのだった。
たとえば
人参の入った煮物が嫌いな青葉
は、それでも食べないと家政婦の
うめさんに悪いかなと気にして
いたというのだ。

星野は、人の気持ちを考える
子供にと加菜子さんが育てた
事を話した。
常子は笑顔で聞いていた。

美子は南とのデートがおわり
家に帰った。
玄関先で南は美子に
ある話をした。

美子は呆然として
家に入ったので
ただいま帰りましたとも
言わずだったので
君子はびっくりした。
「どうしたの?」と聞くと
「かか、あのね・・・」と
いいかけた。
そこへ常子が「ただいま帰りました」
といって入って来た。
美子が常子にどこへ行っていたのか
と聞くと、星野宅だと答えた。
そして事情をいった。
なぜかご機嫌な常子だった。

そのよる、美子は布団を敷きながら
常子の三か条をみていた。
まんなかに鞠子と美子を嫁にだす
とある。

「ととねえ、じつはね・・・」と

美子は常子に話をした。

「なに?どうしたの?」

「大昭さんから言われたの。」

「うん・・・」

「結婚考えているって・・」

常子は、笑顔になって
「あらあらあら」と
いった。
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大樹と青葉は
夜、ふたりで星野が帰るのを
待っているのですよね。
不安ですよね。
さみしいですよね。

いつもは静かな我が家に
もどる星野は
足が止まったのですよね。
なぜか、我が家からあたたかい
楽しそうな声が聞こえて
くるのです。

こんなことを思い知らされたら
おもわず、再婚しようと
思いますよね・・・

常子は罪だわね・・・・・
星野と子供たちに対してです。
星野は再婚を考えていないと
思うし、子供がいる家に
嫁いでくる女性も
苦労をしなくては
いけなくなるだろうし。

それはそれは
美子の結婚よりは
障害が多いと思います。

だから、楽しい思いをさせた
そのぶん、きっと
傷つくことがあると思います。
なんだか、悲しいし
つらいですね・・・。

え?
いっそうのこと星野が常子と
再婚をしたらいいって?
だから、優しい星野の気持ちを
考えたら
・・・結婚が
二度目の自分のもとにくる
と常子に苦労をかけること
になるだろうし・・・などと
考えているのではと思います。

常子が親切心でちょっと子供たち
の面倒を見ただけなら
子供がかわいそう。
この親切心の結論は何かすばらしい
事がうまれるもとになるので
あれば、いいですけどね。

好きなおばちゃんでも
あしたから、お母ちゃんとよぶ
のは・・・
どうでしょうね???

で・・・・・
どきどきするのは
トースターの商品試験の
本が出回る日です。
発行されるとどうなるので
しょうかね・・・・
大変なことになるのでしょう
ね・・・
一部のメーカー名を挙げて辛らつな
批判をしたというので
きっと
花山にとっては許されないほどの
粗悪品だったのでしょう。
読者という消費者を味方につけながらも
じつはメーカーの人間もあるいみ
消費者なので、読者のなかに
も敵を作って
いるということでは
・・・・?