常子、子供たちの面倒を見る2
大樹は熱を出していた。
苦しそうにしている。
その夜、星野が帰ってきた。
玄関に見慣れない女性の靴が
あった。
何事だろうと思っていたら
奥から常子が声をかけた。
「常子です・・」
星野はおどろいて、「常子さん?」と
いった。

大樹の風邪をしって星野は
常子に感謝した。
常子は昼間の件でおれいに来たと
いった。
常子の膝の上には青葉が寝ていた。
しばらく、いていいですか?と
常子は星野に聞いた。
星野は「僕はもちろん」といった。

子供たちを寝かしつけて
星野は茶の間で常子にお茶を
いれた。
男手ひとつで子供を育てる
ことはなかなか大変である。
青葉は幼稚園なので
朝、弁当を作って持たせて
いるという。
大樹の世話や、自分のことも
合わせると、あさ、会社につく
のがぎりぎりだといった。

常子は子供たちの名前は
星野がつけたかと聞いた。
大樹は星野がつけた。
すくすくと育って
人を支えられるような
大きな木のようになって
欲しいと思ってつけたという。
青葉は妻がつけたといった。
加菜子というが、彼女も植物が
好きなので、おたがい意気投合
したという。
「菜の花のようにまわりを明るくさせるような
ひとでした・・・」
と星野が言った。

星野は常子が昔と変わらず
目標をもって生きて
しかも、会社を興していた
ことに、驚いたという。

星野はサラリーマンで労働時間が
きまっているので、子育てには
ありがたいらしいが、これから
会社が一時繁忙期になる。
そのときの週に一回木曜日
の会議にはどうしても参加なので
その日は子供たちは夜は遅くまで
ふたりで留守番という。

ふと、常子はふたりが遅くまで
留守番をしている様子を
思い描いた。
そして、その日だけでも
一緒に留守番をしていいかと
星野に聞いた。
星野は遠慮しながらも
受けることにした。

帰るとき玄関に
そっと桔梗の花が
いけられていた。

星野は「桔梗は縁起の
いい花です。
木へんに吉とかきまた更にと
かきますので
戦国の武将も家紋に
つかっていたほどです。
咳止めの効果もあります
し、会社でもこの成分を
つかって。。。」
と話し始めたので
常子は、植物オタクの星野が
いまだに変わらないでいることに
うれしく思った。
そして、つぎの木曜日には
子守に来ることを
確認して帰った。

家では美子が常子がなかなか
帰ってこないので
心配していた。
「15年ぶりだったら積もる話も
あるのかしらね。」
という。
星野と常子は付き合っていたのでは
といったので君子は心配そうな
顔をした。

そこへ、ただいま===と
元氣に常子が帰ってきた。

あっけらかんと
今度、週一回
子守に行くことになった
ことや、桔梗の話を
する星野はかわっていない
ということを嬉しそうに
話した。

やがて、会社では
トースターの最終試験が
おわった。
トースト一年分をやいた
商品試験だった。
トーストは1460枚だった。

焼きこげ具合やらやきむら
やら・・発熱の状態など
いろいろ試験をした結果を
大塚がまとめて花山に提出
した。
何一つどのメーカーも満足
な結果にならなかった。
常子は「最後まで、頑張り
ましょう」と記事の作成や
写真撮影など雑誌作りへの
指示を出した。


しばらくして、岡緑は花山が
その結果を見てどう感じたのか
まだ、一行も書かれていないことを
気にしていた。

そんな編集室に、花山は筆を洗う
びんに水を汲みに来て
水をくんでそのまま黙って
部屋に帰って行った。

「もしかしたら遊んでいる
のかな?」と
社員が言う。
(この人は、名前がわかりません。
君は首だと言われた人です)

美子は、花山をいつも理解しようと
しているので、
花山は試験の結果からどのメーカーの
商品も批判の対象になるような
結果だったので、悩んでいると
いった。安全性に問題も
あるものもあったからだ。

メーカーの人も全身全霊をかけて
作っているわけでその商品を
批判するのだから相当な覚悟が
いるはずだといった。

花山はその夜、やっと
ペンを動かした。

夜遅くまで、仕事をしている
花山の隣の部屋で常子は
よりそうように、残っていた。
********************
子供二人の世話は大変です。
というよりも
子供たちはさみしいものです。
学校からただ今と帰っても
お帰りと言ってくれる
お母さんがいません。

この時代は
女性が働くことは希だった
し、結婚したら
仕事を辞めるのが
多くの選択肢でしたので
たいていは
子供たちが
ただ今と帰る家には
お母さんがいました。

私も、実は、かぎっ子で
(かぎっ子という言葉さえも
いまは死語ですが)
友人の家に行くと
お母さんがいて、話しかけて
くれます。
学校はどうだったのとか
いろいろ話しかけてきます。
でも、大樹たちは
きっと、友人宅へ遊ぶと
いうことはしないで
家で留守番生活と
いうパターンだったのでしょう。
だから、風邪をひいていても
気が付かない。
大人も本人もよほど悪くならない
かぎり気が付かないのです。
でも星野はそんな男手の育児
にもねを上げることなく
たんたんを子供をかわいがって
います。
美子や鞠子がもしかして
常子と再婚と思っても
星野はきっと、このままが
いいというでしょうね。
大樹や青葉のお母さんは
加菜子さんだけだと・・・。

さて、いよいよ、大企業を
あいての論戦をいどむ
花山は、なかなかペンが進まなかった
ようです。

あの、ガラスの瓶に
水を汲みにやってきて
そのままだまって部屋に戻る
というのは、
よほどの緊張感だった
のでしょう。
あの瓶になにをいれたかと
いうと・・・・
万年筆の頭の部分。

昔の万年筆はよくインクが
固まって詰まっていましたので
これはきっと
書こうとして描けなかった
ことを意味するんだなと思いました。
ペンを握ったけど
なかなか、動かすことができない。

そのうえに、インクが渇いて
インクがでなくなって
瓶に水をくんでその瓶に
万年筆の頭の部分
すなわち
インクが出てくるところが
詰まっているのでそこを
溶かそうとして水を汲んで
万年筆の頭の部分は取り外しが
できるので、そこだけ水に
つけたということでしょうね。

何気ない動作ですが・・・・。
花山の苦悩が感じられます。

また、私のこどものころ
トースターは使いにくいとの
評判がありました。
なかなかパンが出なくなったり
焼きすぎたり
上手く焼けなかったり

なぜか

煙が出たり・・・とか。

その頃のうちはパン食は
全くなかったので
そんな話を聞いたことがある
なぁ====って感じです。

しかし、大学へ入学するとき
一人暮らしになりまして
あさはパンにしなさいという
話しになり
トースターを買ってもらいました。

が・・・・
あの
トースターでは
ありませんでした。

そうです。

オーブントースターです。。
ふたが全面にパタンを
あくあれね・・・
うまくすれば
クッキーも焼けますが

温度調節が難しい
かも・・・

でも、小さなお皿の
グラタンはできますし

ちいさな
ピザも焼けます。

ってことで

ポンと飛び出す

トースターは
使わないで

来ました。


アメリカンレトロ
を思うような
デザインのトースターが
すきですが・・・

オーブントースターのほうが台所には
おさまります・・・。