常子、花山伊佐次とであう6
滝子は店で青柳の帳簿を見ていた。
昔の帳簿が見たくなったという。
滝子はお膳をだして
隈井と清をまねいた。
そして、滝子は自分の決意をいった。
「この青柳商店はここでかんばんを下ろそうと
思う。

店をたたんで軍に貸し出すつもりだ。

このまま続けても納得のいかない仕事には
たえられない。
そんなことをするぐらいならたたんだほうがいい。
私はあと一年も持たない。
最後ぐらい格好つけさせておくれ。
隈井だって、もう解放をしてやってもいい。」

隈井は
「解放だなんて」と泣いた。

滝子はお得意さんに誘われて
木曾に療養に行くという。
滝子は清にも「まだお前は若いから
誰に遠慮することなく好きにいきて
行っておくれ」という。

清は
木曾へ一緒に行くという。
木曾で仕事を見つけるという。
お母さんのそばにいますという。

「なさけないけど、お母さんに褒められる
事ばかり考えてきたのでこれからも
そうしたい」という。
隈井は「木曾まで送らせてください」
といった。
「大番頭ですから・・・。」
そういって泣いた。
滝子は「では最後の大芝居につきあって
おくれ」と言った。

そして小橋家をよんで
「目黒にいい貸し家があるので
そちらへ行くように」という。
「青柳をほんの一時軍に貸し出すだけだ。
戦争が終わったら、またここで
仕事をするから、また一緒に暮らそう。
祭りに行く約束をしただろ?」
滝子は笑った。

常子は不安に思った。
一か月後
青柳商店は最後の時を迎えた。
出ていく滝子はみんなとお別れをした。
「結局守りきれなかったね。
君子を守るといったのにね」という。
君子は「たくさん守って
もらった」と言って
「この家に生まれて幸せでした」と
いって
滝子に抱き着いて泣いた。

美子は「まだ浴衣が出来上がってないので
すが、今度お逢いするときまでに仕上げ
ますから必ず帰ってきてください」といった。

滝子は常子にいった。
「材木は40年前に植えたものが
大きくなって未来の人のために
役に立つんだよ。
次の人のために材木を植えるんだ。
今ある材木は40年前の人が
自分たちのために植えてくれた
つぎに生きる人のことを考えて
暮らしていくんだよ。」

常子は真剣な顔をして
「はい」といった。

そして滝子と別れた。
滝子は人力車に乗って出発した。
これが滝子の姿を見た最後だった。

三か月後

深川の材木問屋はすべて
廃業した。
常子たちは目黒の借家に引っ越した。
その頃ミッドウエー海戦で日本は
負けてしまい、さらに苦難の道を
歩むことになる。
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大好きな祖母と別れることに
なった。
最後の大芝居をに付き合って
おくれといったが
大芝居とは
戦争が終わったらまたここで
仕事をする。祭りにもいくといった
だろ?
といったあのことだ。
滝子は二度と帰ってくることは
ないとわかっていたが
戦争が終わったら・・・また
ここで一緒に暮らそう・・・
希望である。安心である。
そして、祭りに行くと言っただろう?
と、約束は守れないけど守りたいという
気持ちを伝えた。
こうして、滝子は深川を去って行った。
常子たちは目黒に引っ越して
あたらしい生活を始めるが
戦争のために苦労する
事になるのだろうと思った。