常子、花山伊佐次とであう5
そのとし、ラジオが臨時ニュースw告げた。
ついに、日本は米英連合軍と
全面戦争に突入した。
昭和17年四月東京川崎名古屋に
空襲があった。
生活への締め付けもきつくなってきた。
出版へは政府の検閲が厳しくなった。
甲東出版は政府の顔色をうかがう
ような内容の雑誌にしていたので、
仕事がなくなることはなかった。
しかし、常子は面白い読み物では
ないと思っていた。
谷は出版できるだけいいと思えと
いった。
深川は人が少なくなりすっかり寂しくなった。
組合から清が帰ってきた。
がっかりしている。
何事だと滝子は聞く。
自分には青柳200年の看板を背負う
力がありません。
これからどうするかはお母さんが
決めてくださいといった。
この二か月で深川の木材商は個人営業を
禁止された。
陸軍の市道でお国のための営業なら
かまわないが、それをごばめば
やめるしかない
という。
どちらを選ぶか、滝子に聞いた。

青柳をつぶすか続けるか私に
きめろというのかい?
滝子はいった。
そして陸軍の下請けを選んだ。
常子は心配になった。
はたして今まで通り仕事ができる
のかと。

美子は滝子といくつもりにしている
夏まつりにきる滝子の浴衣を作って
いた。
しかし滝子の具合はよくない。
しばらく様子を見ましょうと医者は言う。

君子はお寺にお参りをした。
滝子が早く良くなりますようにと
祈った。

ふと後ろを見ると滝子がいた。

私のことを祈っているなら
やめておくれ。
こんなにぴんぴんしているのだからね。
という。

滝子は祈りに来たわけではない。
昔のことを思い出して
ここにきてみたという。
君子が子供のころおみくじを
引くと大凶だった。
そのとき滝子は
心配しなくていいから、私が
守ってあげるからといった。

君子も覚えていた。
滝子は笑った。
滝子は年を取るのは嫌だねという。

家に帰ると隈井が待っていた。
組合へ陸軍からの通達があったと
いう。
深川の青柳商店は立地条件がいいので
軍の事務所に使いたいというのだ。
軍の下請けも正式なものではなかった
らしい。
深川の材木商はこれでなくなるんだねと
滝子はいった。
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常子の心配通り
個人営業が禁止された時点で
すでに商売はできなくなっていた
わけです。

200年ののれんがここで
降ろされてしまいました。

何と、悲しいことでしょうか。

国民が生き生きと
いきていることが
国家の幸せと、当時の
指導者は思わなかったので
しょうか。

滝子の夢も誇りもここで
終わってしまいました。