常子、失業する3
君は首だと山岸が言った。
常子が困りますと言っても
知ったことかといって
首を言い渡した。
会社を去りゆくとき常子は早乙女
に感謝した。
まけないでねと早乙女が言うが
いまは、その言葉を受け止められません
といった。
廊下に出て思いにふけっていたら
給仕の坂田さんがキャラメルを数個
新聞紙に包んでくれた。
常子はありがとうございましたと言って
去って行った。
しばらくお寺で考え事をしていたが
決心をして帰ることにした。
森田屋では宗吉と照代が深刻な
顔で話をしていた。商売のことで相談
していたのだろう。
そこへ常子が帰ってきたので
びっくりした。

じつは首になったというと
ふたりとももっと
びっくりした。
家族たちは、悩んだ。
美子も鞠子も学校をやめるというが
それをしないでと常子が言う。
何のためにここまで来たのかわからないから
といった。
大丈夫、また仕事をさがるからと
常子は言った。
そぼ宅へ行くと
滝子は陸軍に呼ばれて出かけていると
いう。
が、そこへ滝子が帰ってきた。
そして、倒れてしまった。
滝子の話だと
ながびく戦争で木材が不足して
いる。
通常の半額で木材を調達してくれと
いわれたという。
半額はきついが、軍に逆らえないと
滝子はいった。
そして、深川の商店の寄合に
でなくてはといって起き上がった。

寄合では森田屋も参加していた。
ひまなので常子も参加した。
ところが、陸軍の材木を半値でと
いうとんでもない通達に
ついに商売をやめるという店が
出てきた。
みんなざわざわと不安が広がった。
そして、照代は宗吉に耳打ちするが
宗吉はうつむくばかり。
常子は気になった。

滝子が、「もうほかに店をたたむという人は
いませんか」


というと
照代は森田やは店をたたみますといった。

まつはそれを知らなかった。
なぜそんなことをいうのかと
家に帰ってから宗吉に怒った。
照代は「高崎は今軍需で景気がいいから
あちらへ行って商売をしましょう」と
いった。
まつはがんとして反対した。
小橋さんたちには申し訳ないと
照代が言うが
君子は納得して
青柳に行くといった。
まつはそれでも反対した。
照代は、思い切って
話をした。
「富江のおなかには赤ん坊が
います。
富江と赤ん坊のためにも
高崎へ行きましょう」という。

おどろく宗吉とまつ。
「相手は誰だ」と怒った。

相手は

長谷川だった。
長谷川は、「大将、富江さんと
結婚させてください」と
土下座した。
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富江さんだっていいお年でしょう。
結婚を考えてもおかしくないですね。
でも、いそがしいのと
なによりも富江の手がきちょうなの
が理由で富江を
嫁に出すということは宗吉には
考えがなかったのかもしれません。
身近にいる長谷川に気持ちを寄せても
おかしくはないと思いますし・・
なによりも、世間をあまり見ていない
女性は身近な男性か
親が決めた相手と結婚します。
よくよく考えれば
人生とは・・・とふかく
考えることなく
親のいいなりとか身近にいた
という理由だけで
嫁ぐ女性が多かったのでしょうね。
どこかに自分の王子様がいると
空をみあげて遠くを見るけど
案外、身近にいるのでしょうね。