柔らかい心1
あさはどうしても新次郎の
容態が気になり一緒に病院へ
いこうと新次郎にお願いした。
新次郎は、わかったと
笑っていった。
千代たちの長女の名前を新次郎
は多津子と名づけた。
多くの恵みの雨が降るようにと
いう名前だった。
新次郎らしいきれいな名前だと
千代がいった。
病院では緊張して待合室で
二人は待っていた。
新次郎はあさの顔を見て
「自分はいい年だから
しかたがない、ぽっくりぽんと
いってもいいのでは」と
いってあさを笑わせようとした。
あさは、「そんなことを
言っている場合では
ない」という。
「お待たせしました」と
主治医がやってきた。
「検査の結果がでましたら
お知らせに伺います」という。
「その時はぜひ一服」という。
先生は新次郎のお茶の仲間
であった。
新次郎の顔の広さと人望の
おおさにあさは、新次郎を
うらやましく思った。
そんなとき宣から
手紙が来る。
そして、はつと養の助が
加野屋にやってきた。
藍の助が倉掛とやりとりをして
東京に店を出そうと
しているという。
藍の助は加野銀行より
加野商店で仕事を
やっている。
東京で早く店をだせるように
と新次郎が配慮をした。
養の助が
今日あさのもとにきたのは
そうはいってもはつが惣兵衛が
なくなってから元気がないので
元気づけるためだという。
新次郎は藍の助たち兄弟が
やさしいので感心した。
あさは宣の手紙を見てがっかり
したという、そういいながら
リビングに入って来た。
そこではつと対面した。
はつは心配そうに
何があったのかと聞く。
あさははつの顔を見て
うれしそうに笑った。
「あ、お姉ちゃん!!
あ、養の助も・・
これはうれしいこと。」
気落ちしていたのは
なにかというと
このところあさのことを
マスコミがかきたてる。
男性用の本にも明治の女傑
のひとり白岡あさと書いて
いる。
『かくのごとき男勝りの女傑で
ある白岡あさが日本商家屈指の
名門今井家より出たのが
驚きである・・』
と書かれている。
新次郎はその記事よりも写真のほうが
問題だという。
不機嫌そうな顔で映っているのだ。
あさは、写真うつりで不機嫌なので
はなく、
宣の手紙の一部だった。
大学校の一年であさの悪口を
言いふらしている学生がいると
書いてあった。
いけ好かないおばさんとか
うるさいおばさんとかである。
あさはかげでこそこそと
人の悪口を言うのはおじさんの
専門だと思っていたが
このように若い女性もそうだった
のかと気落ちしている。
「女性の敵は女性だ」と
うめはいう。
あさは「自分が一本筋を通して
生きているおなごだったら
陰口は言わない」という。
はつも賛同した。
あさはすっかり機嫌がよく
なった。
新次郎は「あさが女傑とか
男勝りと言われても
かわいらしいところがある
のを知っているのは自分だけだ」と
いう。
「これは気持ちのいいことだ」といった。
はつはあさに話をした。
もう半年もたつのに
惣兵衛がいないことになれて
いないという。
ときどき
旦那様と
呼んだりする。
あさはその気持ちがなんと
なくわかるきがした。
そんな日が来るだろうけど
信じられないといった。
数日後、医者がやってきた。
新次郎のお茶を一服
飲んだ。
「お手まえ頂戴いたします。」
飲み終えた後
あさがやってきた。
そして告げられた結果とは。
悲しいものだった。
新次郎は今こそ覚悟をした
のだろうか。
あさは、帰る医者を呼びとめていった。
「どんな薬を使っても
自分の体を切り取ってでもいいから
旦那様を助けてください。」
医者は
「何としても助けたいが
力があっても
お金があっても
どうにもできないことがある。
それは決められた
命・・・寿命です。
どうか
どうか
ええ時間を過ごしてください。」
あさは覚悟を決めるときが
きた。
あさは新次郎に言った。
「まえに新次郎が言っていた
富士山の見えるところに
別荘を建てましょう。
御殿場と言います。
ええ避暑地になります。」
「あさ。。。おおきにな
そやけどもうええわ
ここにいてたいわ。
ここで一家みんなで・・な?」
あさは涙が出た。
「何泣いてますのや?
いまは、事故にあったり戦争で
打たれたりして
おもいもかけないことで
死んでしまう人がたくさんいる。
それに比べたらな・・・」
そういって新次郎はあさのそばに
すわった。
「わては奥さんとこうしている
ことができますのやで。」
「そうですな
うちが泣いたら
あきまへんな。」
そう、あさはいって
涙をふいた。
**********
寿命とは
変えることができない。
運命である。
それに逆らうことはできない。
あさは、新次郎を亡くす日を
迎えることを覚悟しよう
と、わかっていても
はつと同じではないだろうか。
何を見ても悲しくて
今こうしていることが
どんどん時間とともに
過去になり
そして新次郎がいない
未来がやってくる・・・。
その日が近づいてくる。
そのためにいま自分は何ができる
のだろうか、医者がいうように
いい時間を過ごすことが
大事なことだと思っただろう。
配偶者との別れ。
女性にとってこれは一番大きな
ストレスという。
いくら自分の子供がいても
配偶者との別れは悲しい。
その時のために
どう一緒に生きていくか
が
問題だ。
一日一日を
大事に生きること・・
わかっていても具体的に
どうするべきか
なかなかわからないものである。
あさはどうしても新次郎の
容態が気になり一緒に病院へ
いこうと新次郎にお願いした。
新次郎は、わかったと
笑っていった。
千代たちの長女の名前を新次郎
は多津子と名づけた。
多くの恵みの雨が降るようにと
いう名前だった。
新次郎らしいきれいな名前だと
千代がいった。
病院では緊張して待合室で
二人は待っていた。
新次郎はあさの顔を見て
「自分はいい年だから
しかたがない、ぽっくりぽんと
いってもいいのでは」と
いってあさを笑わせようとした。
あさは、「そんなことを
言っている場合では
ない」という。
「お待たせしました」と
主治医がやってきた。
「検査の結果がでましたら
お知らせに伺います」という。
「その時はぜひ一服」という。
先生は新次郎のお茶の仲間
であった。
新次郎の顔の広さと人望の
おおさにあさは、新次郎を
うらやましく思った。
そんなとき宣から
手紙が来る。
そして、はつと養の助が
加野屋にやってきた。
藍の助が倉掛とやりとりをして
東京に店を出そうと
しているという。
藍の助は加野銀行より
加野商店で仕事を
やっている。
東京で早く店をだせるように
と新次郎が配慮をした。
養の助が
今日あさのもとにきたのは
そうはいってもはつが惣兵衛が
なくなってから元気がないので
元気づけるためだという。
新次郎は藍の助たち兄弟が
やさしいので感心した。
あさは宣の手紙を見てがっかり
したという、そういいながら
リビングに入って来た。
そこではつと対面した。
はつは心配そうに
何があったのかと聞く。
あさははつの顔を見て
うれしそうに笑った。
「あ、お姉ちゃん!!
あ、養の助も・・
これはうれしいこと。」
気落ちしていたのは
なにかというと
このところあさのことを
マスコミがかきたてる。
男性用の本にも明治の女傑
のひとり白岡あさと書いて
いる。
『かくのごとき男勝りの女傑で
ある白岡あさが日本商家屈指の
名門今井家より出たのが
驚きである・・』
と書かれている。
新次郎はその記事よりも写真のほうが
問題だという。
不機嫌そうな顔で映っているのだ。
あさは、写真うつりで不機嫌なので
はなく、
宣の手紙の一部だった。
大学校の一年であさの悪口を
言いふらしている学生がいると
書いてあった。
いけ好かないおばさんとか
うるさいおばさんとかである。
あさはかげでこそこそと
人の悪口を言うのはおじさんの
専門だと思っていたが
このように若い女性もそうだった
のかと気落ちしている。
「女性の敵は女性だ」と
うめはいう。
あさは「自分が一本筋を通して
生きているおなごだったら
陰口は言わない」という。
はつも賛同した。
あさはすっかり機嫌がよく
なった。
新次郎は「あさが女傑とか
男勝りと言われても
かわいらしいところがある
のを知っているのは自分だけだ」と
いう。
「これは気持ちのいいことだ」といった。
はつはあさに話をした。
もう半年もたつのに
惣兵衛がいないことになれて
いないという。
ときどき
旦那様と
呼んだりする。
あさはその気持ちがなんと
なくわかるきがした。
そんな日が来るだろうけど
信じられないといった。
数日後、医者がやってきた。
新次郎のお茶を一服
飲んだ。
「お手まえ頂戴いたします。」
飲み終えた後
あさがやってきた。
そして告げられた結果とは。
悲しいものだった。
新次郎は今こそ覚悟をした
のだろうか。
あさは、帰る医者を呼びとめていった。
「どんな薬を使っても
自分の体を切り取ってでもいいから
旦那様を助けてください。」
医者は
「何としても助けたいが
力があっても
お金があっても
どうにもできないことがある。
それは決められた
命・・・寿命です。
どうか
どうか
ええ時間を過ごしてください。」
あさは覚悟を決めるときが
きた。
あさは新次郎に言った。
「まえに新次郎が言っていた
富士山の見えるところに
別荘を建てましょう。
御殿場と言います。
ええ避暑地になります。」
「あさ。。。おおきにな
そやけどもうええわ
ここにいてたいわ。
ここで一家みんなで・・な?」
あさは涙が出た。
「何泣いてますのや?
いまは、事故にあったり戦争で
打たれたりして
おもいもかけないことで
死んでしまう人がたくさんいる。
それに比べたらな・・・」
そういって新次郎はあさのそばに
すわった。
「わては奥さんとこうしている
ことができますのやで。」
「そうですな
うちが泣いたら
あきまへんな。」
そう、あさはいって
涙をふいた。
**********
寿命とは
変えることができない。
運命である。
それに逆らうことはできない。
あさは、新次郎を亡くす日を
迎えることを覚悟しよう
と、わかっていても
はつと同じではないだろうか。
何を見ても悲しくて
今こうしていることが
どんどん時間とともに
過去になり
そして新次郎がいない
未来がやってくる・・・。
その日が近づいてくる。
そのためにいま自分は何ができる
のだろうか、医者がいうように
いい時間を過ごすことが
大事なことだと思っただろう。
配偶者との別れ。
女性にとってこれは一番大きな
ストレスという。
いくら自分の子供がいても
配偶者との別れは悲しい。
その時のために
どう一緒に生きていくか
が
問題だ。
一日一日を
大事に生きること・・
わかっていても具体的に
どうするべきか
なかなかわからないものである。
