おばあちゃんの大勝負3

あさは
病気でふせっているという
成沢に弁当を届けた。
おなかを満たさないと
活力はでない。
これほどまでにたたかれるとは

成沢は言う。
「逆境に強いと自分では思っていたが
こんなにも傷つけられるとは・・・・
他人の妬み嫉みがいかに
大きいか」と
成沢は言った。

「それは目出度いこと」と
あさはいう。
「は???」
成沢は聞き返した。

「たたかれるというのは注目
されているという事だ」

あさはいう。
存分にたたかれたらいい。という。
打たれても
打たれても
つぶれない心を持てばいい。
寄付金がなかなか集まらないのは
不況のせいだ。
景気が良くなるのを
待ってると時を失う。
宣を秘書につけるから
がんばりましょう」と
あさはいった。
成沢はこれほどまでに
たたかれているのに
あさはびくともしない。
なぜそんなに強いのかとあさに聞く。
「家にうつうつ悩むより
外でたたかれるほうが性にあって
いるのだろう。
朝の来ない夜はない」と
あさはいった。
「だから前向かなあかん。
九つ転び十起き
まずは
腹ごしらえしましょう。」

はい、」
成沢はまた元気になった。

東京にも創立事務所をおき
各界の著名人の夫人に援助を
お願いに回った。

女子大学校の名前を成沢は言う。
日の出女子大学校では
という。
どんなに暗い夜でも必ず
朝はくるという意味だと
成沢は言った。

新次郎は賛成した。

翌日
加野銀行での話だ。

炭鉱の石炭は
よく売れる。
しかし、不景気で保険の
加入者も増えない。
そんな時に
石炭の売り上げ
はありがたかった。

大隈から手紙が来た。

東柳から
縁談を辞退したいという
申し入れだった。

「なんで??」

よのは
驚いた。

啓介が
婿養子になる気はないと
いうのだった。
啓介は役人の仕事が決まって
いた。

千代は、あっさりと
「しかたない」といった。
「やっぱり栄三郎や新次郎に選んで
もらった人のほうがいい」と
いった。

「次のお相手を探して」と
いって部屋を出た。

千代を追いかけようとしてよのが
倒れた。

あさは千代を追いかけた。


千代はどんどんあるき
ながらあさを振り切って
「ほっといて」と言ったが。

あさが「千代・・・・」と
いうので

千代はあさの胸で
泣いた。

千代はその夜部屋で宣と話を
した。

「ぎょうさん泣いたら
すっきりした」という。

「忘れたほうがいい」と
宣がいう。「しかし千代ちゃんが
もしあきらめへんというの
なら今から東京へ行って
あのエリートを
凌雲閣の上からつるして
おどかしたってもええんやで。」
大阪の凌雲閣は9階だが
東京浅草のは
12階建てだ。
これがいい景色なんだと
宣がいう。

「それやったらホンマに怖いな」と
千代が言う。

宣は「どこからつるしたろか」と
いって二人は

怖いなとか
丈夫な縄を用意せなとか

いって笑った。

その様子を新次郎は
よのにいった。

笑っていたことでほっとした
らしい。
友だちはいいもんだと
いった。

あさは、新次郎に
すぐに東京へ行って
東柳に会うという。

もしかしたら
啓介の前で以前
成沢を叱咤激励をした
というか
きついことを言っていたので
あれが
もとで
断って来たのではという。

たしかに

「しっかりしておくれやす」とか

「あほと違いますか」

とか・・・

あのせいかもしれないと
あさは悩んでいた。
あんな怖い母親がいることで
千代もそんな女と思ったかも
とあさは考えた。

啓介は
政府で働くというのだから
あきらめるしかないと
いった。

しかし

本心は

あきらめられなかった。

そして

よのも。。。

「寝込んでいる場合ではない」と
つぶやいた。
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確かに
啓介が見合いを断ったのは
あさが原因ではないかと
思う。
あんな怖い母親がいるのである。
しかも
女子大学校を作るという
社会運動までやっている女傑である。
これなら
だれでも、怖がるだろう。
ここで
よのが立ち上がった。
そして
あさも新次郎も・・・