大番頭の手のひら4
千代が恋煩いになったことは
身近の人たちに知れ渡って
いる。
そんなとき
その東柳啓介が
近くに来たのでといって
加野屋に寄った。
たまたま姪のさえと
うめと宣がいるところで
千代は啓介に出会った
ことになる。
声も出ないくらい驚く
千代だった。
「覚えている?」
千代も
みんなもあっけにとられて
いる間に
啓介は
みんなは
覚えていなかったと
思った。
「近くに来たから
寄っただけだから」と言って
帰ろうとした。
千代はあわてて
「待ってください」と
いったが
手に持っていた
てまりを落として
それをふんずけて
ひっくり返って・・
啓介は
あわてて
千代に
「大丈夫??」
といって
手を差し出した。
宣は
「はぁ~~~~まるで
小説のような出来事」と
つぶやいた。
これで
啓介は加野屋に案内されること
になった。
よのは、それを聞いて
新次郎とあさ連絡をという。
啓介は
通された座敷で
千代と話をした。
加野銀行という
看板を駅で見たという。
どうやら
近いらしいので
寄ってみたと
いうわけだ。
千代にとっては
天にも昇る気持ちだった。
「来てくれはりまして
おおきに
もう二度と
お逢いできないと
思っていたので・・」
「いまさらなんだけど
僕の名前は
東柳啓介というんだ。
キミは?」
「え?
うちの名前ですか・・」
千代は緊張した瞬間
大きな声がした。
成沢が
女子大学校設立の
事業がうまくいかず
よっぱらって
くだをまいているのだ。
「今の日本には女子の大学校は
早すぎたのか・・」
という。あさは
「なにをいうているのですか」と
叱咤する。
「まず高等女学校を
作ったほうがいいと言われた」と
いうのだ。
成沢もまずはそうして
それから
時を待って
女子大学校を作ろうと
いうだ。
あさは「あほだす」と
いった。
縁側で
成沢とあさが
そういうやり取りをしている
のを
小庭をはさんで
うめたちは
見聞きできる。
うめは
あさが
大声で成沢を
あほよばわりをしているので
注意しようとした。
しかも
千代も
啓介も・・・
大声で話すあさに
おどろき
啓介は
もっと驚き・・・
あさはみんなが見ているのに
きづいて
「さ、いきますで、」と成沢を
追い立て
「みなさん、お騒がせしました」と
いって
去って行った。
啓介は
「もしかしてこの間
暴漢に刺されたというお母様は
・・・」
「へぇ
いまのはうちの母です。」
「で、あちらが??」
廊下の向こうに
新次郎と
よのがいた。
千代は
驚いた。
啓介はさっとあるいて
新次郎のところまでいき
自己紹介をした。
新次郎は
「わては・・」としどろもどろで
名前をいった。
啓介は「今日はお譲さまにけがをさせて
しまいまして」という。
千代は自分が勝手にコロンだと
いうが
よのは、「まぁまぁ」といって
「堪忍だッせ」と
「あのようなところを見せて」と
いって、笑った。
よのも「ほんに。ほんに」といった。
緊張した空気が
なごんだ。
宣は「なかなかいい男
はんですね」と
新次郎にいった。
新次郎は渋い顔をした。
あさは、支援者の人たちと
事務所で話をしていた。
女子大学校を
大阪に建てるつもりだけど
寄付金の問題で
今井の別荘のある
東京のメジロに建てたいと
いった。
今井は
大手銀行なので支援者は
びっくりした。
今井はあさの実家だが
加野屋に援助は全くなかった。
その今井の父が
成沢の話に感激して
目白の一等地の
5500坪の土地を
使ってほしいという。
支援者は
驚いた。
そして喜んだ。
日本一の大学校にして
ほしいとの
忠興の気持ちである。
こうして、土地を確保できて
ずいぶんと
助かることになった。
支援者は力を得たように
成沢も
感激しながら
頑張るといった。
そんなこんなで
啓介は加野屋をさること
になった。
よのは、啓介を見送る
ときに、「千代は花嫁修業を
しています。また大阪にこられる
ことがあったら
寄ってください」と
啓介にいった。
新次郎は
落ち込んでいた。
「帝国大学の・・・なんたら
かんたらって・・・」
そこへあさが啓介に会えなかった
のでどんな人だったのかと
聞きに来た。
「ないしょや・・・」
「なんやのそれ
いけず!!!」
とあさは叫んだ。
和歌山では
養の助の結婚式が
行われた。
あの露芝の着物をはつは
着ていた。
はつは「あさと新次郎さんが
お祝いのお金をようけ送って
くれました」と
栄達と惣兵衛にいった。
「受け取ったらいい、そのうち
子供が生まれたらようけ
お金がいるから」と
いった。
「そうですね・・・」
とはつは嬉しそうに受け取った。
ところが
郵便屋は
またやってきて
一通忘れていたと
いう。
養の助へである。
新兵召集の手紙だった。
郵便屋は「おめでとうございます」
といって
さっていった。
結婚したばかりなのに
軍隊へはいることになる。
はつは、
「そんな・・・」と
声を詰まらせた。
***********************
千代の初恋は・・
すてきな小説を読むように
再会の日がやってきた。
あまりの突然に千代は驚くが
こうでなくては
千代は誰と結婚するのかと
思う。
仕事も大学校にも
興味がなく
早く結婚して
子供が欲しいという。
あさは啓介に会えなかったけど
よのは、どうやら
啓介を気に入ったらしい。
千代が恋煩いになったことは
身近の人たちに知れ渡って
いる。
そんなとき
その東柳啓介が
近くに来たのでといって
加野屋に寄った。
たまたま姪のさえと
うめと宣がいるところで
千代は啓介に出会った
ことになる。
声も出ないくらい驚く
千代だった。
「覚えている?」
千代も
みんなもあっけにとられて
いる間に
啓介は
みんなは
覚えていなかったと
思った。
「近くに来たから
寄っただけだから」と言って
帰ろうとした。
千代はあわてて
「待ってください」と
いったが
手に持っていた
てまりを落として
それをふんずけて
ひっくり返って・・
啓介は
あわてて
千代に
「大丈夫??」
といって
手を差し出した。
宣は
「はぁ~~~~まるで
小説のような出来事」と
つぶやいた。
これで
啓介は加野屋に案内されること
になった。
よのは、それを聞いて
新次郎とあさ連絡をという。
啓介は
通された座敷で
千代と話をした。
加野銀行という
看板を駅で見たという。
どうやら
近いらしいので
寄ってみたと
いうわけだ。
千代にとっては
天にも昇る気持ちだった。
「来てくれはりまして
おおきに
もう二度と
お逢いできないと
思っていたので・・」
「いまさらなんだけど
僕の名前は
東柳啓介というんだ。
キミは?」
「え?
うちの名前ですか・・」
千代は緊張した瞬間
大きな声がした。
成沢が
女子大学校設立の
事業がうまくいかず
よっぱらって
くだをまいているのだ。
「今の日本には女子の大学校は
早すぎたのか・・」
という。あさは
「なにをいうているのですか」と
叱咤する。
「まず高等女学校を
作ったほうがいいと言われた」と
いうのだ。
成沢もまずはそうして
それから
時を待って
女子大学校を作ろうと
いうだ。
あさは「あほだす」と
いった。
縁側で
成沢とあさが
そういうやり取りをしている
のを
小庭をはさんで
うめたちは
見聞きできる。
うめは
あさが
大声で成沢を
あほよばわりをしているので
注意しようとした。
しかも
千代も
啓介も・・・
大声で話すあさに
おどろき
啓介は
もっと驚き・・・
あさはみんなが見ているのに
きづいて
「さ、いきますで、」と成沢を
追い立て
「みなさん、お騒がせしました」と
いって
去って行った。
啓介は
「もしかしてこの間
暴漢に刺されたというお母様は
・・・」
「へぇ
いまのはうちの母です。」
「で、あちらが??」
廊下の向こうに
新次郎と
よのがいた。
千代は
驚いた。
啓介はさっとあるいて
新次郎のところまでいき
自己紹介をした。
新次郎は
「わては・・」としどろもどろで
名前をいった。
啓介は「今日はお譲さまにけがをさせて
しまいまして」という。
千代は自分が勝手にコロンだと
いうが
よのは、「まぁまぁ」といって
「堪忍だッせ」と
「あのようなところを見せて」と
いって、笑った。
よのも「ほんに。ほんに」といった。
緊張した空気が
なごんだ。
宣は「なかなかいい男
はんですね」と
新次郎にいった。
新次郎は渋い顔をした。
あさは、支援者の人たちと
事務所で話をしていた。
女子大学校を
大阪に建てるつもりだけど
寄付金の問題で
今井の別荘のある
東京のメジロに建てたいと
いった。
今井は
大手銀行なので支援者は
びっくりした。
今井はあさの実家だが
加野屋に援助は全くなかった。
その今井の父が
成沢の話に感激して
目白の一等地の
5500坪の土地を
使ってほしいという。
支援者は
驚いた。
そして喜んだ。
日本一の大学校にして
ほしいとの
忠興の気持ちである。
こうして、土地を確保できて
ずいぶんと
助かることになった。
支援者は力を得たように
成沢も
感激しながら
頑張るといった。
そんなこんなで
啓介は加野屋をさること
になった。
よのは、啓介を見送る
ときに、「千代は花嫁修業を
しています。また大阪にこられる
ことがあったら
寄ってください」と
啓介にいった。
新次郎は
落ち込んでいた。
「帝国大学の・・・なんたら
かんたらって・・・」
そこへあさが啓介に会えなかった
のでどんな人だったのかと
聞きに来た。
「ないしょや・・・」
「なんやのそれ
いけず!!!」
とあさは叫んだ。
和歌山では
養の助の結婚式が
行われた。
あの露芝の着物をはつは
着ていた。
はつは「あさと新次郎さんが
お祝いのお金をようけ送って
くれました」と
栄達と惣兵衛にいった。
「受け取ったらいい、そのうち
子供が生まれたらようけ
お金がいるから」と
いった。
「そうですね・・・」
とはつは嬉しそうに受け取った。
ところが
郵便屋は
またやってきて
一通忘れていたと
いう。
養の助へである。
新兵召集の手紙だった。
郵便屋は「おめでとうございます」
といって
さっていった。
結婚したばかりなのに
軍隊へはいることになる。
はつは、
「そんな・・・」と
声を詰まらせた。
***********************
千代の初恋は・・
すてきな小説を読むように
再会の日がやってきた。
あまりの突然に千代は驚くが
こうでなくては
千代は誰と結婚するのかと
思う。
仕事も大学校にも
興味がなく
早く結婚して
子供が欲しいという。
あさは啓介に会えなかったけど
よのは、どうやら
啓介を気に入ったらしい。
