自慢の娘2
藍の助が元気がないと
あさが心配する。
新次郎はあさにお茶を入れながら
「もうすぐはつさんとの
約束の三年だから
今後のことを聞いてみよう」と
いう。
あさは、藍の助にはここで
働いてほしいのだが。

話しは千代のことになる。
「千代も女学校で宣たちに
影響されてもっと勉強したいとか
働きたいとか
いってくれないかな」と
いうが・・・
新次郎は「それはどうだすかね?」と
笑った。

そこへ女子行員のツルとハトがきて
「お茶は私らが・・・」という。
亀助があさを探しに来た。

あさにとってお茶は
どうがんばっても新次郎以上に
上手く入れれないので
新次郎にあまえさせてもらって
いるといった。

そして、

あさは気になっていることを
ツルたちに聞く。

「女学校ぐらいの女の子が
母親に相談て
なんやろな?」

「そうだすな。しゃれた
お洋服のことですやろか」

「それとも学校の先生が
厳しすぎるという事とか」

亀助も入って
「其れとも好きなお人ができた
という話とか・・・」

一同
「わぁ~~~~っ」と
歓声をあげる。

あさは「それは困りますな。
でも楽しみやな」という。

千代がはじめてあさにする
相談事である。
あさはテンションが高くなった。

とこらが
相談て言うのは
宣のことだった。

このままだと卒業したら
宣は結婚させられてしまう
あさに、千代は
助けてほしいというのだった。

「よそ様の家のことだから」と
あさは、躊躇する。
千代は「ああいう子こそ
勉強させてあげるべきだ」と
いった。

あさは、千代が女学校に言って
友だち思いになったことが
うれしいといった。
続けてあさは
千代が卒業した時には
女子大学校の設立が成るまで
手伝ってほしいといった。
亀助の下で秘書として働いてもらって
女子大学校ができたあかつきには
そこに入学してもらいたいし
いずれ一緒にこの加野屋を・・・

千代は、「何だす、それ!!
勝手に人の道を決めるな」と
千代がいう。
「理解のある母親だという顔をし
ながら自分の意見は正しいから
従いなさいと
押し付けるところが嫌いだ」と
千代が言う。

(言われてみれば
そのとおりだ・・)

「うちは自分が一番正しいとは
思っていない」とあさはむきになって
いうが
千代は「ひとに悪口言われても
刺されても
そないなところ結局ちょっとも
変わりはりまへなんだわなぁ~。」
と手厳しくいう。

あさは「あんたのためを思って」と
いうが・・・
いつものように
物別れとなった。

あさは、ショックで
千代と口を利きたくないと
新次郎に言う。
押し付けたことはないと
いうが・・・
そんな風にとるなんてと
あさは新次郎に愚痴った。

千代はよのの肩をもむ。
よのは、「きもちいいわ~~」と
いって喜んでいる。

その様子をあさは見て
「千代は優しい顔をしている
な、天女様みたい」と
いって驚いた。

あさは、「なんでうちにだけ
きついのか」という。

新次郎は
「あさが入院した時
手や足をさすっていたけどな」と
言う。
しかもまだ千代はさなぎであると
チョウチョに例えて言った。

そんな子供に親ができることは
どんなに嫌われても
お日様のようにさんさんと
照らしてあげることだけだと
いう。

あさは、難しいといった。

その頃和歌山では
寝ていた菊が
うなされていた。
はつは驚いて
菊のそばにいって
声をかけた。

「蔵の夢を見た」という。

「くら?」

はつは、いつのことか
菊に蔵に入れられたことを
思い出した。

「あれは怖かったやろな?
私も子供のころ
母親に閉じ込められていた
んや、しょっちゅうな。

跡取りのあんたがそんなことで
どうするのか?
家をつぶす気かと
よく言われた、あれは怖かった」と
いった。
惣兵衛もよく閉じ込めたという。
よく泣いていたが
そのうちに閉じ込めても
ご飯抜いても何も言わなくなったと
話した、
はつはじっと聞いていた。

何かの折に何も逆らわないほうが
早く終わると気が付いたみたいだと
いう。
「藍の助も養の助も
いくら怒られても
へへへと笑っていますな。」

はつは「なかなかしつけがうまく
できなかった」という。

菊は「あんたは
優しい顔をして厳しいお母ちゃん
だすがな。
藍の助も養の助もあんたに一目
おいてます。

同じ怖いお母ちゃんだけど
なにがちがっていたのやら」と
菊はいった。

はつは
菊をよこに向けてあげた。

「おおきにな・・・」

はつは菊の足腰をさすりながら
言った。
「うちは、こんなに長いこと
お母さんと暮らしているのに
言い忘れたことがあります。

旦那様を
あなたの息子さん惣兵衛さんを
育てて下さっておおきに。

山王寺屋さんを守りながら
子を産み育てることが
どんなに大変だったかと
いまのうちにはわかることでは
ありません。
でもあんなにやさしくて体もたくましく
そだててくれはって
おおきに。
おかげでうちは
あったかい家と明るい息子に
恵まれて暮らしています。」

「こんなぼろやで
なにがあったかいや?」

「そうでしょうか。
自分にとって大阪の山王寺屋の
お屋敷より
西洋のお屋敷より、りっぱな
家です。」

「偉い嫌味やな・・このお嫁さんは・・
ふふふ・・・」

「じき養の助のお嫁さんが来たら
もっともっとにぎやかになります。」

「そやな・・あのこ
ようけ子を作りそうだしな~~」

「そうだすな。」

はつと菊は
笑った。

あさの傷が治ったある日のこと
だった。
美和のレストランで
女子大学校の趣意書につける
成沢の教育論の冊子の
刊行が決まった。
寄付金集めは
難航している。

あさは、これから京都へ行って
寄付金の支援をお願いしに
いって来るという。

平十郎は
「へ???」と驚く。

「今から京都へ?」

亀助は
「あすは朝一番で銀行の会議が」

というと

「今日中に帰ってきますから」と
あさはいう。

「いまからステイションへ行って
汽車に乗って大隈さまが教えて下さった
ところへ三軒回って
それから・・・もうひとつ
行きたいところがあります。」

「またそないな無茶な」と
亀助が言う。

「行ってきます」とあさが出て
いく。

亀助は追いかけた。

あさが行きたかったところとは
千代の寮だった。
***************
言われてみれば
あさの千代に対するこれからのこと
は、押しつけがましいですね。
一緒に女子大学校の設立の仕事を
手伝ってもらって
女子大学校ができたら入学して
もらって
そのうち加野屋でいっしょに働いて
・・・・・
千代に希望を聞くこともなく
つらつらと自分の考えを言われたら
千代も
怒ります。

そして宣のこと。
あさはよそ様の娘さんのことだから
というが・・・・

このまま結婚するのは宣が
かわいそうでもある。

この時代は、親や周りの人が
子供の結婚相手を決めていましたね。

好きでも嫌いでも
したがっていたことは
すごいことです。
でも、こうして世帯をはやばやと
持つことは子供をたくさん作れる
のですが・・・
社会の構造としては
外国と比べて
競争する力にはなりません。
もっと技術とかもっと人材力とか
国の力を考えると
はやばやと庶民が家庭に
はいることは
小さくまとまりすぎると思います。
特に女子教育は資源のない日本にとって
は、人材という資源を
作り出す点で、片手落ち。
男子がそうなっても人口の半分の
女子が眠ったままそのまま終わって
しまうことはもったいない。

女子の高等教育が少子化につながって
いるという見方もありますが
それは、それ
これはこれで、別の問題です。
女子が大学を出て23歳。
3年頑張ってやっと使える人材に
なって26歳。
そこから結婚、出産、仕事を休むとなれば
女子にとってはつらいです。
それを本当の意味で女性も社会に参画する
には、結婚、出産、育児をスムーズにできる
社会のありかたを作って行けば
いいのです。

たとえば
保育園の問題がありますが
国だけではなく
企業もそれに協力していくべきでは
と思います。
でなければ、粗悪な保育園が問題に
なるでしょう。
とにかく保育園が欲しいという
お母さん方にとって
どこでもいいと切実に
思っているお母さん方にとって
内容を吟味する余裕すらないと
思えてなりません。
それよりも、身近に思える
自社企業の経営する保育園。

企業が保育園経営をすることで
自社の社員の家族を守ること
になるのではと思います。
また、自社の社員の家族ばかり
ではなく、ご近所のお子様も
受け入れるとなれば
地域におけるその企業の
値打ちが格段と上がると思いますが。
どうでしょうかね???