夢見る人3
新次郎と千代はその夜
あさの部屋でねることに
なった。
ところが、どこで寝るかという
ことで、千代は待合室で
新次郎はあさの部屋の長いすで
という話になる。
急に千代が泊まるというので
布団がないのだ。
「そうだ、」新次郎がいう。
「今日は三人でここで寝よう」と。
惣兵衛とはつは
藍の助の部屋で休むこと
になった。
うめは、「客間でなくても
いいのですか」とはつにきく。
急にやってきたことなので
客間は気が引ける。
久しぶりに藍の助ともゆっくり
話がしたいからと
はつがいう。
病室ではベッドのうえで
あさと千代。
千代が小さい時から
こうして寝ていたと
あさはいう。
新次郎は千代は寝相がいいから
といって自分は長椅子に
寝た。
「何や楽しいな」と
あさはいう。
藍の助は仕事の疲れで
寝てしまった。
はつは、「ほっとした」という。
惣兵衛は「あの妹さんだったら
刺されても死なへんというた
やろ」という。
はつは、笑いながら
「ほんまでしたね」といった。
緊張がやっととけて
はつは笑顔になった。
「そんなことで死んでしまったら
あさはどんなに無念やった
やろか」という。
「千代もまだ子供やというのに」と
いった。
惣兵衛は
はつを抱きしめた。
あさのほうは、新次郎は寝て
しまった。
というか
寝てふりをしていた。
ふたりで、ゆっくりさせて
やりたいとの新次郎の
気持ちなのだろう。
このところの看病で
千代も寝ていない。
しかし、自分は若いから
大丈夫だと千代は言う。
あさは千代にとんでもないところ
を見せてしまったという。
あの時どんな感じで倒れたのか
と千代に聞くと
千代は、こうして
おなかを抑えてといって
ああ、思い出したくないと
いって話をきった。
何が悲しくて自分の親が
刺されるところを
この目で見なくてはいけない
のかと、千代は
怒った。
あさは、「せやな
めったにないことだす。
今のもデリケシが
ありまへんどしたな。」
「ありまへん!!」
「あんなことされるほど
憎まれていたやなんて
自分のことばかり
考えて周りが見えてなかった
んやな。」
千代は、「そもそも弱みが
ないおかあちゃん
は嫌われる」と
いった。
「弱みはある」とあさはいった。
新次郎と千代である。
そもそも、あさはお嫁に
きてもしばらく新次郎に
ほったらかしにされていたこと
新次郎は美和のもとに
いっていたし・・・と
話をした。
その寂しさを埋めるために
お商売に励むことにした。
そんなとき
新選組が4百両をかりにきた。
あさは、新選組の前に
出ていった。
「そのお金、ホンマに返してくれる
のですやろな?」
「おのれ、新選組を信用できないと
いうのか!!」
大石という武士が怒った。
切られると、新次郎は
はっとした。
その話を聞いて千代は
「なんてことを・・」と
あきれた。
「ほんまですな。
土方さま
やっぱり
お金を返すどころやあらしまへんど
したな・・・」
千代は
「そら、
お父ちゃんもあわてたですやろな」
という。
新次郎は、笑いをこらえて
いた。
あさは、「それまで自分のことなど
ほったらかしにしていた
旦那様が、へっぴりごしでも
嫁やというてかばってくれた」と
うれしそうにいった。
そのおかげで、わだかまりが解け
て、夫婦らしくなってきた。
そして千代が生まれたという。
生まれて
数か月だったけど
千代のおしめの世話や
お乳のせわなどが
楽しかった。
あさは「仕事は生きがいだけど
あんたがいてへんほうがよかった
なんてどないしたら
そんなことを思いつきますのや」
と千代に言った。
千代は「小さい時からぎんこたんこ
ぎんこたんこばっかり
いっていたから銀行と炭鉱が
大事なんだ」と思って
いた。
あさは笑った。
千代も、「あほみたい」といって
笑った。
そのころ、萬谷は
暗がりの道でうずくまっていた。
警察官が巡回中に萬谷をみつけた。
「何をしている?」
「花見だすがな。」
花などない。
萬谷は
酒もない
花見もできないと
いって力なく笑った。
それは泣き声となった。
「おまえ、萬谷やな。加野屋の
女主人をさした・・・」
萬谷は捕まった。
惣兵衛は「これが銀行か・・・」と
加野屋の店を
みた。
栄三郎は、藍の助に少しの時間だが
両親を病院へ連れて行って
あげるようにといった。
「いい当主にならはったな・・・あの
弟さん・・・」惣兵衛は
笑った。
こうして大阪の街を見ながら
はつと惣兵衛は病院へむかった。
ふたりは笑顔で
会うことができた。
*****************
病院であさとふたりベッドの上で
話をすると
それは・・・
いいにくいことも
言えるでしょうね。
お互いのぬくもりが伝わるし
顔は天井を向いているから
話しはしやすいですよ。
だから、すこしの優しさも
ほんの愛情も
ぬくもりで充分に伝わるもの
です。
母が入院した時
わたしは、ベッドのよこに布団を敷いてねる
つもりでしたが
したから伝わる寒さに
これはあかんと思って
怒られるのを覚悟で
母のベッドのなかにいれてもらい
ました。
ちょうど、千代とあさのように。
それを思い出しました。
年齢もあさ親子とおなじくらいの
ときでした。
仕事で忙しい母でした。
幼いころから
あまりかまってもらえなかった
のですが、
母のぬくもりを
感じながら
隣に寝て
今でも懐かしい思い出と
なりました。
新次郎と千代はその夜
あさの部屋でねることに
なった。
ところが、どこで寝るかという
ことで、千代は待合室で
新次郎はあさの部屋の長いすで
という話になる。
急に千代が泊まるというので
布団がないのだ。
「そうだ、」新次郎がいう。
「今日は三人でここで寝よう」と。
惣兵衛とはつは
藍の助の部屋で休むこと
になった。
うめは、「客間でなくても
いいのですか」とはつにきく。
急にやってきたことなので
客間は気が引ける。
久しぶりに藍の助ともゆっくり
話がしたいからと
はつがいう。
病室ではベッドのうえで
あさと千代。
千代が小さい時から
こうして寝ていたと
あさはいう。
新次郎は千代は寝相がいいから
といって自分は長椅子に
寝た。
「何や楽しいな」と
あさはいう。
藍の助は仕事の疲れで
寝てしまった。
はつは、「ほっとした」という。
惣兵衛は「あの妹さんだったら
刺されても死なへんというた
やろ」という。
はつは、笑いながら
「ほんまでしたね」といった。
緊張がやっととけて
はつは笑顔になった。
「そんなことで死んでしまったら
あさはどんなに無念やった
やろか」という。
「千代もまだ子供やというのに」と
いった。
惣兵衛は
はつを抱きしめた。
あさのほうは、新次郎は寝て
しまった。
というか
寝てふりをしていた。
ふたりで、ゆっくりさせて
やりたいとの新次郎の
気持ちなのだろう。
このところの看病で
千代も寝ていない。
しかし、自分は若いから
大丈夫だと千代は言う。
あさは千代にとんでもないところ
を見せてしまったという。
あの時どんな感じで倒れたのか
と千代に聞くと
千代は、こうして
おなかを抑えてといって
ああ、思い出したくないと
いって話をきった。
何が悲しくて自分の親が
刺されるところを
この目で見なくてはいけない
のかと、千代は
怒った。
あさは、「せやな
めったにないことだす。
今のもデリケシが
ありまへんどしたな。」
「ありまへん!!」
「あんなことされるほど
憎まれていたやなんて
自分のことばかり
考えて周りが見えてなかった
んやな。」
千代は、「そもそも弱みが
ないおかあちゃん
は嫌われる」と
いった。
「弱みはある」とあさはいった。
新次郎と千代である。
そもそも、あさはお嫁に
きてもしばらく新次郎に
ほったらかしにされていたこと
新次郎は美和のもとに
いっていたし・・・と
話をした。
その寂しさを埋めるために
お商売に励むことにした。
そんなとき
新選組が4百両をかりにきた。
あさは、新選組の前に
出ていった。
「そのお金、ホンマに返してくれる
のですやろな?」
「おのれ、新選組を信用できないと
いうのか!!」
大石という武士が怒った。
切られると、新次郎は
はっとした。
その話を聞いて千代は
「なんてことを・・」と
あきれた。
「ほんまですな。
土方さま
やっぱり
お金を返すどころやあらしまへんど
したな・・・」
千代は
「そら、
お父ちゃんもあわてたですやろな」
という。
新次郎は、笑いをこらえて
いた。
あさは、「それまで自分のことなど
ほったらかしにしていた
旦那様が、へっぴりごしでも
嫁やというてかばってくれた」と
うれしそうにいった。
そのおかげで、わだかまりが解け
て、夫婦らしくなってきた。
そして千代が生まれたという。
生まれて
数か月だったけど
千代のおしめの世話や
お乳のせわなどが
楽しかった。
あさは「仕事は生きがいだけど
あんたがいてへんほうがよかった
なんてどないしたら
そんなことを思いつきますのや」
と千代に言った。
千代は「小さい時からぎんこたんこ
ぎんこたんこばっかり
いっていたから銀行と炭鉱が
大事なんだ」と思って
いた。
あさは笑った。
千代も、「あほみたい」といって
笑った。
そのころ、萬谷は
暗がりの道でうずくまっていた。
警察官が巡回中に萬谷をみつけた。
「何をしている?」
「花見だすがな。」
花などない。
萬谷は
酒もない
花見もできないと
いって力なく笑った。
それは泣き声となった。
「おまえ、萬谷やな。加野屋の
女主人をさした・・・」
萬谷は捕まった。
惣兵衛は「これが銀行か・・・」と
加野屋の店を
みた。
栄三郎は、藍の助に少しの時間だが
両親を病院へ連れて行って
あげるようにといった。
「いい当主にならはったな・・・あの
弟さん・・・」惣兵衛は
笑った。
こうして大阪の街を見ながら
はつと惣兵衛は病院へむかった。
ふたりは笑顔で
会うことができた。
*****************
病院であさとふたりベッドの上で
話をすると
それは・・・
いいにくいことも
言えるでしょうね。
お互いのぬくもりが伝わるし
顔は天井を向いているから
話しはしやすいですよ。
だから、すこしの優しさも
ほんの愛情も
ぬくもりで充分に伝わるもの
です。
母が入院した時
わたしは、ベッドのよこに布団を敷いてねる
つもりでしたが
したから伝わる寒さに
これはあかんと思って
怒られるのを覚悟で
母のベッドのなかにいれてもらい
ました。
ちょうど、千代とあさのように。
それを思い出しました。
年齢もあさ親子とおなじくらいの
ときでした。
仕事で忙しい母でした。
幼いころから
あまりかまってもらえなかった
のですが、
母のぬくもりを
感じながら
隣に寝て
今でも懐かしい思い出と
なりました。
