ようこそ銀行へ6
あさは、はつと話もできずに
分かれたことを
残念に思った。
それより、千代の女学校の
話しも気になった。

和歌山の眉山家にはつと一緒に
藍の助が帰ってきた。

養の助は兄が帰ってきたと
惣兵衛を呼ぶ。

惣兵衛は「お帰り」と小さくいって
奥へ引っ込んだ。

あさは、女学校の入学願書を
みて、いろんなことを
教えてもらえることに
感動していた。

新次郎は
千代は学校に行っている間に
将来どうするのか
決めたらいいと
いった。

そして新次郎はあさは
「これからどこへ行くのか」
と、きく。

「進みきってしまってこれから
どこへ行ったらいいの
わからない」とあさはいう。

それが不安なあさだった・
加野銀行には
女子行員がいるとのうわさが
大阪中に広がり
女性がいることで華やかな
お店となったと
評判がよかった。

千代は女学校のことは
行きたくなかった。

よのに
自分のことが嫌いな両親が
追い出そうとしていると
千代は言う。

よのは、「ひどい両親やな」と
いう。
千代ははっとした。

千代ははつが藍の助を
迎えに来たことで
優しい人だと
思ったらしい。

そのとき、千代は
新選組のからくり人形を
みつけた。

千代が
二つか三つのころ
あさが、千代に造ってくれた
人形だった。

あさは千代が興味を示さな
かったので、捨ててくれたら
いいといったらしい。

よのは、もったいなくて
捨てられなかったという。
その小さいころ
よくあさは、千代を抱きしめて
いたという話をよのがしたので
千代は、考え込んでしまった。
「たしかに、実業家としては
よくできた人かもしれないけど
お母ちゃんとしては
不器用な人だったのではないかな」と
よのは千代にいったのだった。

工藤サカエの父は毎日娘の様子を見に
くる。
サカエはそのたびに
出納係に帳面を渡した。

サカエは「ほんまにすんません」と
いうとあさは、「こわもての
工藤さまがあんなに
父親の顔をするとは」と
びっくりした。

そこに、風体の悪い
萬谷がやってきた。

「頭取か、新次郎さんは?」と
女子行員に聞く。
昔の旦那衆の一人である
萬谷は、落ちぶれてしまったらしいが
商売のいい話があるので
融資をしてほしいと
いう話をした。
すこし、お酒も飲んでいる。
融資には担保が必要と
栄三郎がいう。
萬谷は
担保になるものがなく
昔のよしみでただで金を
貸してくれという。

あさは、「融資の話だったら
伺います」と
萬谷にいった。

萬谷は、「おなごと話はできない」
という。

あさは、「そんなに熱くなっていたら
お金の話はできない」と
いう。
「今日は帰ってください。」

「言われんでも帰るわい!
何じゃこの店、けったくそ悪い」

といって萬谷はでていった。


その日、京都見物にいったよのと
千代が帰ってきた。

たくさんのお土産をかって
ごきげんだった。

そして、千代は数か月のちに
京都の女学校へ入学する
ことになった。

その朝、荷物を持って千代が
旅立つ。

「いってきます。」

「いっといで・・・」


新次郎とあさは

千代を送り出した。

千代が入った寄宿舎の
部屋には
一人の女学生がいた。

そのこはじっと本を読んでいた。

「はじめまして、うち
同室の白岡千代と申します。」

そのこは、ぺこんと
頭を下げて
また本を読み始めた。

「なんや、愛想のない子・・」

千代はつぶやいた。

新次郎とあさは、
一緒に和歌山へ行こうと
話をした。

「一緒に旅をしたことなど
ないな」と新次郎。

惣兵衛に
そのうちに寄せてもらうと
いったので
一度行きたいと
いった。

あさは、うれしそうに
了解した。
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千代が女学校へ行く。
一人娘の旅立ちだった。
そこで出会った友人たちが
なにを千代に影響をもたらす
のだろうか?
わくわくする。
そして新次郎とあさは
たまにはゆっくりと
夫婦水入らずの旅を楽しみたいと
はつのいる和歌山を選んだ。
不器用な母親である
あさの悩みを
はつは聞いてくれるだろうか?
また、萬谷という
昔のよしみでという怪しげな
風体ですりよってくる
客がくることは
ありえることである。
あさのにらみが
すかっとする。