最後の御奉公5
渋沢は銀行の話をしましょうと
いって、クイズを出した。

「第一問
銀行を経営するものが
一番欲しくて
一番大切なものは
何だと思いますか?」

あさは、「お金ですか?」
と聞く。
「違いますな・・・ほんとうは
お金はいらないのですよ。」

「なんでだす?
お金がいらない???」

「其れでは第二問です。

両替屋にはなくて
銀行にはある仕組みが
何だと思いますか?」


あさは、「それやったらわかります。
預金です。
お客さんのお金を預かる仕組みです。」

渋沢は「正解」といった。
そのときあさに
正吉の言葉が
聞こえてきた。」
『両替屋は信用が第一や。
お金という大事なものを扱って
いるのだから。』
また雁助も
『両替屋は信用をお金に換えますのや』
といった。


「あ。。。
うちわかってしまいました。

お金よりなにより大切なものが
・・・信用
だすな?」

「御名答です。」

「一番大切なものは
信用です。
この店は信用できるかどうか
です。
少しの不安もあってはなりません。
この銀行に任せれば自分が持つより
安心だ。
すると、お金がお金を呼んでくるものだ」と
渋沢が言う。

あさは、「銀行を経営する前に
自分が信用されなくては
ありまへんな、」という。

「まじめに商いをして
自分の器を大きくして・・」

「お金は不思議なもので
あつかう、人の大きさに応じて
動きます。

私や五代さんが国益を考えて
つねづね、一番やらねばならないと
考えていたことは
何だと思いますか?」

「銀行の神様と
鉱山王の五代さんが
一番やりたいと思っていたこと


さっぱりわかりません。」

「教育です。
こどもではなく
日本のために誠実に
働いてくれる人です。

商いと教育は
大事な問題です。」

新次郎は、「やっと
商いやお金が
人間味のあるものに
見えてきた」と
喜んだ。

お店では
かよいと
住み込み・・
どっちを選ぶかと
話をしていた。

弥七はかよいというたら
なんだかさみしいという。

平十郎が
かよいになると好きなおなごと
暮らすこともできるという。
お給金の範囲で好きに暮らせると
いった。
このことを理解するには
まだまだ時間が必要で
ほとんどのものが住み込みで
働くことを
希望した。

台所では
かのが、
おなご衆はそのままこの白岡の
家で女中奉公ということになる。

わかいものは、奥様が
結婚相手をさがしてくれると
いうことだと
いった。

おなご衆は今まで変わらない
のでほっとした。

その隅っこで
うめは何かを考えていた。

雁助がうめに一緒に出て行こうと
いったこと
あさがうめがそうしたいなら
走してほしいといったこと。

であった。

一方栄三郎は
あさと二人で雁助と話をしていた。

「雁助頼む。
どこにもいかんといてくれ!!!

ってことは決して
いうてはあかんと
お兄ちゃんにくぎ刺されて
しもうた・・・。

せやけど

どこへいくつもりだすか?
どこかの商売敵の所だすか?」

雁助は
「伊予に行こうと思う」という。

愛媛県である。
別れた妻から手紙が来て
娘がどうしようもない病気
になって経済的に大変
なので助けてほしいと
いって
いるらしい。

「勝手に出て行ったくせに
いまさら、なにをというが
20年間自分は娘に何もして
やれなかった・・」という。

「その罪滅ぼしに伊予にいって
向うで働き口を探して
娘を守ってやりたい」と
雁助は言った。

うめはそれを廊下で聞いていた。
そしてふっと向うへ行った。

栄三郎は
「それやったら止めることはできない」と
いった。

雁助は栄三郎に「ないたらあかん」という。
「これから、新次郎さんと奥さんとで
立派に暖簾をまもっていかなあかん
のだす。」

という。

「わかった、お父ちゃんとの約束通り
払えるお金は払わせてもらいますから。」
と栄三郎はいった。
ようするに退職金である。

雁助は
「おおきに、
ありがとうございます」といった。


うめは、廊下で
「なんや、よかった」と
つぶやいた。


そこへ、雁助がやってきた。

「うめ」という。

うめは、「話を聞いてしまいました。
御嬢さん、心配だすな。
そやけど、番頭さんがそばにいたら
奥様かてどれほど心丈夫でしょうか。」

といった。

「うめ・・かんにんな。」

「なんでだすか?これでよかった
のです。
冗談でも
うちに、一緒に行こうといった。
その思い出があれば
うちは一人で生きていきます。
今までおおきに。」

雁助は「最後までこの家に奉公する
事が出来なかった。
あんたはどうか
ずっとおあさ様のそばでがんばって
おくれやすな。」といった。


「へぇ、まかせておくれやす。」


二人はそんな会話をしたのに。

あさは、それでも
ぼーっとしている
うめに声をかけて

久しぶりに相撲を取ろうと
いった。

「まけませんで。」

うめは「勘弁して」という。
「いくつになったというのですか。
でもおあさ様には負けられません。」
ずっと前にあさはうめに負けたことを
気にしていたという。

「しょうがありまへんな。」

ふたりは相撲を取ることにして

「はっけよい!!
のこった!!」

と声をあげて取り始めた。

二人は必死で
負けまいと

組んだが。


うめは
あさを投げてしまった。

「負けるやて
あかんな

うめのこと
泣かしてやろうと
思ったのに・・・」

うめは、「おあさ様」といって
あさに
なきついた。

うめは、今度は
うめが
ないた。


そして、
いよいよ
明治21年

加野屋は・・・・

銀行の看板を上げた。

その日、新次郎が千代とともに
あさの部屋にはいったら・・

そこでみたものは!!

「おっ!!」

「いやや、何してはりますの?
お母ちゃん・・・・。」

二人は

素っ頓狂な声を上げた。
******************
うめは・・・・
雁助が好きなのです。

いくら、頭でわかっていても
一生をあさにと思っても
計算違いの恋心は
どうしようもなく
割り切れるままだった。
でも、雁助はあろうことか
別れた妻からの手紙で
この店をやめることにした。
もともと、やめる覚悟であった
はずだったが
円満退職となった。
銀行など自分の思いと違う方向へ
店が行くのなら、店をやめますと
いう覚悟だったはずだ。
その時はうめに一緒に来てほしいと
までいったはずなのに。

そんな、仲たがい退職となる
はずだったのが、円満退職に
なったことで
うめは、ほっとした。

が・・・

雁助が奥様のもとに帰るという。

自分の居場所はそこにはないと
わかって、ぼーっとしている
うめに、あさは、相撲を挑んだ。

かなしい失恋を
忘れさせてやろうという
あさの心なのだろうか?

勝ってうめを泣かせたかったと
いうあさ。
それは、
うめに、泣いてもいいよと
いう事だったのだろう。

うめはあさの気持ちを知って
大声で泣いた。

そうそう
泣いたらすっきりするのですよ。

ちっとも、おかしなことでは
ありません。

こうして、新しい加野屋から
雁助が消えていく。

新しい時代を新しい人で
迎えることになる
加野屋の
女主人は・・・

亭主と娘から
どんなに、驚かれるような
格好をしているので
しょうか。

予告編にありましたが、
きっとあさは
洋装をしているのだと思います。

デコルテですね。

違うかな?