道を照らす人4
新次郎が五代を訪ねると
事務所は大騒動だった。
五代が倒れた。
医者が帰った後
新次郎は気が付いた五代に
声をかける。
「大丈夫ですか?」
「しんちゃん・・」
「ようよう、お会いできましたな。」
新次郎は五代の体を起こすのを
手伝い、椅子に腰かけた。
「お逢いしたらお礼をいおうと
思っていました。」
春に造幣局の櫻をあさと千代で
見に行ったという。
造幣局には珍しい桜やきれいな桜がたくさん
植えられている。
その桜の通り抜けをしたという。
あそこをみんなが通り抜けできるように
してくれたことをお礼が言いたかった。
いまでも、造幣局の櫻の通り抜けは
有名で地元の人はもちろん
わたしも、通り抜けに行ったことが
ある。
五代は、あれは、局員だけがみれる
のはあまりにももったいない桜やなと
つぶやいたことから
そこの職員が発案したという。
新次郎は、相変わらず自分の
手柄を作ろうとしない
五代をかっこつけやと
いった。
五代は「この姿のどこが
かっこつけですか?」
新次郎のほうがかっこつけ
だという。
全く商売には関心のない振りを
してここというところは
抑えにかかると五代は言う。
新次郎は、石炭の会社の
社長を自分にと言ってことも
なぜかと聞いた。
五代は、「あれは助言です。」
という。
戦のある時代に必要な力は
強いことだったが
いまは、人の話を聞く力
が大事だという。
新次郎には簡単なことだった。
うん、とかすんとか言っていたら
いいだけのことだという。
新次郎は、核心に迫った。
これほどの力を持った
五代がなぜ、自分の銀項やら
財閥やらを作らなかったのかと
いうことだ。
まだほかにもある。薩摩閥をいかして
政治家になって日本を動かせた
かもしえれない。
ひとにばかり、力を貸して
汚名をかぶったばかりか
自分の銀行も財閥も作らない。
五代は、笑った。
自分という人間を認めてもらえなくても
何も悔いはない。
未来に名を残す気もない。
みんなが作った大阪があったら
それでいい。
「やっぱりかっこつけや!」
新次郎と五代は笑った。
「最後に一つ格好つけさせて
もらったらいいですか?
わたしはもう、あささんに会いたく
ありません。
この姿を見せたくないのです。
どうかしばらくは多忙で会えないと
伝えてください」という。
新次郎は、「このまま消えてしまう
おつもりですか?
まだ、あさにはあんさんが必要です。」
といったが・・・
五代は、これからは必要なのは
新次郎だという。
「まるであなた方は・・・・
えっと、いい言葉が見つからない」と
いいつつ、英語でつぶやき
「そうだ、比翼の鳥だ」といった。
想像上の鳥だ。
体は一つだがそれぞれが首から上が
独立している、羽根はそれぞれ
ひとつもっていて合わせて一対
である。
「約束してください
あささんを内からだけではなく
外からも支えると・・・
どうか
頼みます・・・・!!!」
三坂はそれを廊下で聞いていた。
新次郎は
いつもと同じように
「ただいま~~~~~」と
陽気に軽く店に帰ってきた。
「どうでしたか?
いい社長になるというてました
でしょ?」とあさが聞く。
ふたりは、座敷にいって話をした。
あさは、新次郎を社長にと
思ったのは、五代が商法会議所
の会頭をやめるといったとき
新次郎が、北海道の官有物の
売買の状況をしるした内部資料を
三坂にもらってきて
みんなに配ったときだった。
いちいちの説明よりも
まずは、資料をつかって
数字をみるということ
だった。
客観的にみることができた。
そんな新次郎を見て
あさは、この人だと思った。
五代もこれから加野屋が大きく
なるには新次郎の力が必要
といったという。
いつのまにか
座敷には
よのと栄三郎が・・・
そして、店の番頭以下の
従業員が
あつまった。
あさは、自分がいるから
商売は心配ないという。
どんなことをしても
お手伝いしますという。
「どうか・・・
社長のけん
よろしく」と
あさはいった。
「どうか・・・」とあさは、
頭を下げた。
新次郎は、首を振る。
栄三郎は
「自分からもお願いします」と
頭を下げた。
「これ、
顔上げてえな~~
これっ!!!」
新次郎はあわてた。
「なぁ新次郎」とよのが言う。
「うちは商売のことはわからない
けどあんたと栄三郎とあささんの
三人でこの加野屋を支えるというのは
お父ちゃんが一番望んでいた
ことだす。
ほんなら
私からもお願いしましょうかね。」
よのは、座りなおして「
「新次郎・・・
どうか
よろしゅう・・・・・・」
と、頭を下げた。
新次郎の前の三人が
頭を下げた。
新次郎は、あわてて
「もう、みんなやめてぇなぁ~~
そんなに拝まれても
御霊神社の御神体では
あらしまへんのやで。
わかりました・・・・
わてに何ができるか
わからへん
でもみんなが
明治の世を進むためには
わてみたいに、ぺらぺらら
盾が必要というのだったら
しょうがあらへんな・・・
ひきうけましょか・・・」
という。
よの
あさ
栄三郎は
驚く。
雁助も、「えらいこっちゃ、みんな!」
といいながら
大声で
「新次郎さんが働く言うてはりまっせ!!!!!」
と叫んだ。
店の
一同、全員起立した。
弥七は
「ほんまに
びっくりぽんや」
といって、みんなで
新次郎のもとに駆けつけ
「なんや?」という
新次郎をかつぎあげ
胴上げをした。
「わっしょい
わっしょい」
「わては、しりまへんで。
座っているだけだすさかいなぁ~~~」
と、叫ぶ新次郎を
みんなで
胴上げした。
あさは、「わかってます、ほんまに
おおきに、旦那様」
よのは、「ではうちらは
御霊神社にお参りに
いきましょか~~」と
おなごしたちにいった。
新次郎の
笑い声
と
わっしょい
の声が
響いた。
こうして加野屋にもう一つ
新しい風場葺いたのだった。
ひと段落ついた後
あさは、新次郎に
五代の様子を聞いた。
「いつぞや、五代は死んでも
大阪は残るというていたので
心配だった」と
いった。
「まだ、話したりないこともあったし
聞きたいこともあるので
近いうちに合わしてもらいたい」と
あさはいう。
新次郎は「あんたらほんまに
不思議なきずなだ」という
五代は、あさをもっと育てたいというて
たし、
あさは、五代さんに恩を返したい
というし。。
「あんたたちこそ、ほんま
比翼の鳥やがな・・・」
あさにとっては五代はずっと先をみている
ひとだし、
やっと追いついたと思ったら
まだ、ずっと前を歩いている人だ
永遠に追いつけないといった。
新次郎は五代の伝言を
伝えた。
しばらくは忙しくて
会えないと言っていたと
いった。
あさに、よろしくといって
くれと言っていたと
新次郎は、苦しいうそを言った。
うめは、雁助のやけどの手当てを
していた。
「こんな毎日してくれんでもいい」と
雁助は言うが
うめは「いつかここを出て行くまで
はお世話します」という。
雁助は
うめを抱きしめたく思ったが・・
できない。
その数日後
五代は、死を覚悟したかのように
働いていた。
その頃新次郎は
山と積まれた
書類の中にいて
これをみんな見る仕事に追われた。
そこへあさがやってきた。
「旦那様・・」
「はぁ~~~~
肩凝るがな~~
こんなことしていたら
新しい会社ができる前に
寝込んでしまいますがな~~」
と愚痴る。
「肩こりで寝込む方はいません
よって。」
そういって、また書類をもって
きた。
「しょうないなぁ~~」という。
あさは、「五代さま
ほんまに、お見かけしませんけど。」
という。
どこか悪いのではと
あさは心配する。
寄合所でもそんな噂があるという。
「たとえ、どこか悪くても
ほかに五代の面倒を見る人は
多いからあさが心配することでは
ない」と新次郎は言う。
あさは、納得した。
年が変わった。
そこに、あのときの客がいた。
山崎である。
よく来るので雁助も栄三郎も
山崎をじっと見た。
美和の店、晴花亭で、あさが美和を相手に
お茶をして話をしていると
そこに、三坂が来た。
「明日五代さまは東京にいかはり
ます。
もしかしたらもう二度と
この大阪に戻ってくることは
ないと思います」という。
美和は思い当たることがあった。
あさは、驚いた。
「それはどういうこと?」
三坂は
苦しそうにうつむいた。
*******************
比翼の鳥・・・
五代にとっては
新次郎とあさだが
新次郎にとっては
五代とあさだった。
しかし・・
不思議な友情につながれた
新次郎と五代も
また、比翼の鳥かもと
思ったリする。
新次郎が
疑問に思った、五代はなぜ
自分の財閥を持たない
銀行を持たない。
また、政府の役人にならない
という、手柄はみんな
周りの人のものと
した、その価値観に驚いた。
自分の名前より
現実の宝物が
残ればいいという
考え方だった。
新次郎はそれに感動した
のかもしれない。
ほんとうなら
自分の嫁さんと仲良くする
五代がうざいだろうけど
この男ならと
思ったことだろう。
五代の命が尽きる日が
近いのだろうか。
さて、うめは雁助とは
一緒に家を出ないと決めて
いるらしい。
雁助も本来ならうめは
そうあるべきだし、
あさが許さないだろうと
思う。
が・・・・
本当の幸せとは・・・
うめにとって
雁助にとって
それはなにかと
疑問に思ったりする。
新次郎が五代を訪ねると
事務所は大騒動だった。
五代が倒れた。
医者が帰った後
新次郎は気が付いた五代に
声をかける。
「大丈夫ですか?」
「しんちゃん・・」
「ようよう、お会いできましたな。」
新次郎は五代の体を起こすのを
手伝い、椅子に腰かけた。
「お逢いしたらお礼をいおうと
思っていました。」
春に造幣局の櫻をあさと千代で
見に行ったという。
造幣局には珍しい桜やきれいな桜がたくさん
植えられている。
その桜の通り抜けをしたという。
あそこをみんなが通り抜けできるように
してくれたことをお礼が言いたかった。
いまでも、造幣局の櫻の通り抜けは
有名で地元の人はもちろん
わたしも、通り抜けに行ったことが
ある。
五代は、あれは、局員だけがみれる
のはあまりにももったいない桜やなと
つぶやいたことから
そこの職員が発案したという。
新次郎は、相変わらず自分の
手柄を作ろうとしない
五代をかっこつけやと
いった。
五代は「この姿のどこが
かっこつけですか?」
新次郎のほうがかっこつけ
だという。
全く商売には関心のない振りを
してここというところは
抑えにかかると五代は言う。
新次郎は、石炭の会社の
社長を自分にと言ってことも
なぜかと聞いた。
五代は、「あれは助言です。」
という。
戦のある時代に必要な力は
強いことだったが
いまは、人の話を聞く力
が大事だという。
新次郎には簡単なことだった。
うん、とかすんとか言っていたら
いいだけのことだという。
新次郎は、核心に迫った。
これほどの力を持った
五代がなぜ、自分の銀項やら
財閥やらを作らなかったのかと
いうことだ。
まだほかにもある。薩摩閥をいかして
政治家になって日本を動かせた
かもしえれない。
ひとにばかり、力を貸して
汚名をかぶったばかりか
自分の銀行も財閥も作らない。
五代は、笑った。
自分という人間を認めてもらえなくても
何も悔いはない。
未来に名を残す気もない。
みんなが作った大阪があったら
それでいい。
「やっぱりかっこつけや!」
新次郎と五代は笑った。
「最後に一つ格好つけさせて
もらったらいいですか?
わたしはもう、あささんに会いたく
ありません。
この姿を見せたくないのです。
どうかしばらくは多忙で会えないと
伝えてください」という。
新次郎は、「このまま消えてしまう
おつもりですか?
まだ、あさにはあんさんが必要です。」
といったが・・・
五代は、これからは必要なのは
新次郎だという。
「まるであなた方は・・・・
えっと、いい言葉が見つからない」と
いいつつ、英語でつぶやき
「そうだ、比翼の鳥だ」といった。
想像上の鳥だ。
体は一つだがそれぞれが首から上が
独立している、羽根はそれぞれ
ひとつもっていて合わせて一対
である。
「約束してください
あささんを内からだけではなく
外からも支えると・・・
どうか
頼みます・・・・!!!」
三坂はそれを廊下で聞いていた。
新次郎は
いつもと同じように
「ただいま~~~~~」と
陽気に軽く店に帰ってきた。
「どうでしたか?
いい社長になるというてました
でしょ?」とあさが聞く。
ふたりは、座敷にいって話をした。
あさは、新次郎を社長にと
思ったのは、五代が商法会議所
の会頭をやめるといったとき
新次郎が、北海道の官有物の
売買の状況をしるした内部資料を
三坂にもらってきて
みんなに配ったときだった。
いちいちの説明よりも
まずは、資料をつかって
数字をみるということ
だった。
客観的にみることができた。
そんな新次郎を見て
あさは、この人だと思った。
五代もこれから加野屋が大きく
なるには新次郎の力が必要
といったという。
いつのまにか
座敷には
よのと栄三郎が・・・
そして、店の番頭以下の
従業員が
あつまった。
あさは、自分がいるから
商売は心配ないという。
どんなことをしても
お手伝いしますという。
「どうか・・・
社長のけん
よろしく」と
あさはいった。
「どうか・・・」とあさは、
頭を下げた。
新次郎は、首を振る。
栄三郎は
「自分からもお願いします」と
頭を下げた。
「これ、
顔上げてえな~~
これっ!!!」
新次郎はあわてた。
「なぁ新次郎」とよのが言う。
「うちは商売のことはわからない
けどあんたと栄三郎とあささんの
三人でこの加野屋を支えるというのは
お父ちゃんが一番望んでいた
ことだす。
ほんなら
私からもお願いしましょうかね。」
よのは、座りなおして「
「新次郎・・・
どうか
よろしゅう・・・・・・」
と、頭を下げた。
新次郎の前の三人が
頭を下げた。
新次郎は、あわてて
「もう、みんなやめてぇなぁ~~
そんなに拝まれても
御霊神社の御神体では
あらしまへんのやで。
わかりました・・・・
わてに何ができるか
わからへん
でもみんなが
明治の世を進むためには
わてみたいに、ぺらぺらら
盾が必要というのだったら
しょうがあらへんな・・・
ひきうけましょか・・・」
という。
よの
あさ
栄三郎は
驚く。
雁助も、「えらいこっちゃ、みんな!」
といいながら
大声で
「新次郎さんが働く言うてはりまっせ!!!!!」
と叫んだ。
店の
一同、全員起立した。
弥七は
「ほんまに
びっくりぽんや」
といって、みんなで
新次郎のもとに駆けつけ
「なんや?」という
新次郎をかつぎあげ
胴上げをした。
「わっしょい
わっしょい」
「わては、しりまへんで。
座っているだけだすさかいなぁ~~~」
と、叫ぶ新次郎を
みんなで
胴上げした。
あさは、「わかってます、ほんまに
おおきに、旦那様」
よのは、「ではうちらは
御霊神社にお参りに
いきましょか~~」と
おなごしたちにいった。
新次郎の
笑い声
と
わっしょい
の声が
響いた。
こうして加野屋にもう一つ
新しい風場葺いたのだった。
ひと段落ついた後
あさは、新次郎に
五代の様子を聞いた。
「いつぞや、五代は死んでも
大阪は残るというていたので
心配だった」と
いった。
「まだ、話したりないこともあったし
聞きたいこともあるので
近いうちに合わしてもらいたい」と
あさはいう。
新次郎は「あんたらほんまに
不思議なきずなだ」という
五代は、あさをもっと育てたいというて
たし、
あさは、五代さんに恩を返したい
というし。。
「あんたたちこそ、ほんま
比翼の鳥やがな・・・」
あさにとっては五代はずっと先をみている
ひとだし、
やっと追いついたと思ったら
まだ、ずっと前を歩いている人だ
永遠に追いつけないといった。
新次郎は五代の伝言を
伝えた。
しばらくは忙しくて
会えないと言っていたと
いった。
あさに、よろしくといって
くれと言っていたと
新次郎は、苦しいうそを言った。
うめは、雁助のやけどの手当てを
していた。
「こんな毎日してくれんでもいい」と
雁助は言うが
うめは「いつかここを出て行くまで
はお世話します」という。
雁助は
うめを抱きしめたく思ったが・・
できない。
その数日後
五代は、死を覚悟したかのように
働いていた。
その頃新次郎は
山と積まれた
書類の中にいて
これをみんな見る仕事に追われた。
そこへあさがやってきた。
「旦那様・・」
「はぁ~~~~
肩凝るがな~~
こんなことしていたら
新しい会社ができる前に
寝込んでしまいますがな~~」
と愚痴る。
「肩こりで寝込む方はいません
よって。」
そういって、また書類をもって
きた。
「しょうないなぁ~~」という。
あさは、「五代さま
ほんまに、お見かけしませんけど。」
という。
どこか悪いのではと
あさは心配する。
寄合所でもそんな噂があるという。
「たとえ、どこか悪くても
ほかに五代の面倒を見る人は
多いからあさが心配することでは
ない」と新次郎は言う。
あさは、納得した。
年が変わった。
そこに、あのときの客がいた。
山崎である。
よく来るので雁助も栄三郎も
山崎をじっと見た。
美和の店、晴花亭で、あさが美和を相手に
お茶をして話をしていると
そこに、三坂が来た。
「明日五代さまは東京にいかはり
ます。
もしかしたらもう二度と
この大阪に戻ってくることは
ないと思います」という。
美和は思い当たることがあった。
あさは、驚いた。
「それはどういうこと?」
三坂は
苦しそうにうつむいた。
*******************
比翼の鳥・・・
五代にとっては
新次郎とあさだが
新次郎にとっては
五代とあさだった。
しかし・・
不思議な友情につながれた
新次郎と五代も
また、比翼の鳥かもと
思ったリする。
新次郎が
疑問に思った、五代はなぜ
自分の財閥を持たない
銀行を持たない。
また、政府の役人にならない
という、手柄はみんな
周りの人のものと
した、その価値観に驚いた。
自分の名前より
現実の宝物が
残ればいいという
考え方だった。
新次郎はそれに感動した
のかもしれない。
ほんとうなら
自分の嫁さんと仲良くする
五代がうざいだろうけど
この男ならと
思ったことだろう。
五代の命が尽きる日が
近いのだろうか。
さて、うめは雁助とは
一緒に家を出ないと決めて
いるらしい。
雁助も本来ならうめは
そうあるべきだし、
あさが許さないだろうと
思う。
が・・・・
本当の幸せとは・・・
うめにとって
雁助にとって
それはなにかと
疑問に思ったりする。
