道を照らす人3
九州から来た宮部が今日は
帰る日だという。
あさは、宮部を見送るために
一緒に屋敷の廊下を歩いていた。
宮部は「大阪は楽しかったしおいしいものも
いっぱいあって
いいところだと思うけど
みんな早口早足で
忙しそうだ。
早く九州に帰って遠賀川の
河童ときゅうりでも食べたくなった」と
いう・・
そこへ、あさは、雁助の声が聞こえた。
「うめ・・・
わしと一緒にこの家でえへんか?」
あさは、驚いた。
宮部も「これはこれは」といって
話しかけようとしているので
思わず宮部の手を引いて
「あかんあかん」と
廊下を走って行った。
「あの、うち・・・」
うめが返事をしようとして
雁助がつめよってきたので
思わず後ずさりしたら
湯が沸いた鍋を
落としてしまった。
雁助は鍋を取ろうとして
その熱さに
「あちちち」と
大騒ぎとなった」。
あさは
「どうもご苦労さんでした」と
「気になる」という
宮部を追い出すように
見送った。
「うめ・・・」あさは
うめが心配だった。
ところが台所では
かなりの大変な騒動だった。
「あつ、あつ~~~」と
手を水につける雁助。
丁稚が「どうされましたか」と聞くの
で、雁助は「軟膏をもってきて
くれ、はよ!!!」
と叫ぶ。
うめは雁助に謝ると
雁助は「自分が悪い」という。
そして、「うそだす」といった。
「あんたを連れ出したら
おあさ様に
なんで、なんでと
追いかけられしまいますさかい
な・・・」
「ほな
どこにもいかはりまへんな
どこにもいかはらへんとこの家に・・」
「はぁ、きちんと銀行になるまで
この家に。。。」
雁助はそういった。
それからしばらくして、栄三郎は
店のみんなを集めた。
加野屋は三年後の開業を目指して
銀行になると宣言した。
加野屋の新たな船出だすと
いう。
雁助は、「これから八代目は
だんさんというのではなくて
頭取と呼ぶわけやという。
頭取さんや。。。
みんなよう覚えておけ。」と。
栄三郎は「雁助おおきに」と
いった。
あさは、「店が新しく変わるので
不安もあると思う。
銀行になったからと言って
みんながみんな、成功する
とはいえない。
成功したのはひとにぎり
です。
でも、畑違いの炭鉱と違って
おなじお金を使う仕事だから
大丈夫、みんなよろしく」という。
それから、石炭の会社もひとつの
会社にするという話も合った。
新次郎は、いそがしくて
聞いてなかった。
とにかく、新しい加野屋の
出発だというで
みんな気を引き締めた。
しかし、雁助は・・・
どう思っているのか。
新次郎はその様子をみて雁助を
呼び、ふたりで話をした。
「銀行ができたら出て行くつもりやろ」と
新次郎はいう。
雁助は、新次郎は商いに興味ないと
いっていたけど、熱心に
なってきたという。
「本当のことを言うと
石炭もそれなりに面白かったけど
性に合わない。やっぱり
銭金の様なものにしか興味がない」と
いった。
新次郎は「あんたが好きなのは
銭金ではなく
お父ちゃんに教え込まれた信用という
ものではあらしまへんか」という。
「御明察です。
堂島の大名や
商人は信用できたが
どこの誰かもわからない人に
お金を貸すとは
信用できない、しかしおあさ様
は、信用できるのでしょうね。」
「ふん。。。せやな。。」
「両替屋の加野屋がなくなったら
わてには奉公するものがあらへん
のだす。
栄三郎さんが不足ではない。
あのお方は若い。
奥さんにたきつけられたら
どんどんのびるひとだから
わてのような古いものがいたら
伸びなくなる」という。
「そんなことはない。
でも、もう自分以外の者の
ことは考えなくていいから
自分のことだけ考えたら
どうや?
自分がどうしたいのかよく考えて
ほしい。」
新次郎は、長年つかえてくれた雁助に
そういった。
「自分のことだけを考えてくれ・・・」と。
雁助は「自分のことだけを考える?」と
つぶやく。
「もし、結果、出て行くことにしたら
のれん分けにはならないけど
雁助が独立するための資金は
加野屋が出します。
それが加野屋からあんたへの
せめてもの、恩返しだす。」
新次郎は雁助にそういった。
「なるほどなぁ・・・
新次郎さんは大旦那様にまるで
似てへんみたいで
よく似てますね。
おあさ様は人を見る目があったんですね。」
雁助は
感心した。
「え?」新次郎は聞き返した。
新しい会社はだれが社長になるのか
おなごしたちは大騒ぎをしていた。
「栄三郎さまやろ」。
「いや違う、おあさ様だ」と弥七がいう。
うめは
あの東京であった風変わりな男性が
じつは福沢諭吉だが
「あなたは、おなごの社長になり
なさい」といったことを
思い出した。
「まさか・・・・」とうめはいうが。
新次郎が「あさはどこや」と
大騒ぎをした。
実は、雁助があのあと
新次郎に新しい会社の社長
になった話をした。
だから、おあさ様は人を見る目が
あるといったのだった。
新次郎はあさを捕まえて
問い詰めると
その通りだという。
自分は何もできないと
新次郎が言うがあさは
何もしなくても自分がすると
いった。
いくら新しい時代とはいえ
いきなりおなごの社長は世間も
政府も認めないから
といって、新次郎になって欲しいと
思っていたという。
新次郎ほど大阪の商人に好かれて
いる人もいない。あさより人望がある。
顔も広い。
これは才能だとあさはいった。
栄三郎もよのも賛成したという。
「どうか、加野屋の社長になって
おくれやす」といった。
この話は五代にも相談した。
すると、「ナイスアイディア」といった
という。
新次郎は、むかむかしながら
大阪商法会議所へ行った。
「ホンマにともちゃんは・・!」
と、
いいながら廊下を歩いていると
せわしく人が走っている。
何事かと
部屋の中をみると
五代が
倒れていた。
*****************
新次郎がいよいよ本領発揮と
なる時代が来ました。
雁助のこともしっかりと
見ているし
なによりも、人の気持ちを
理解している。
こういう上司がいると
仕事はやりやすい。
意欲もでる。
もっと頑張ろうと思う。
それがリーダーには
必須条件である。
あさは所詮働き蜂なのかも
しれない。
だが、こうして新次郎という
良きパートナーを持った
あさは、落ち着いて
仕事に励めるものだ。
雁助は本当に
加野屋を出て行くのだろうか。
うめは、やはり、とどまるのだろうか。
丸く収まるといいですが。
で、五代の病状がここで
悪化していった。
いったい・・・
五代は・・・。
九州から来た宮部が今日は
帰る日だという。
あさは、宮部を見送るために
一緒に屋敷の廊下を歩いていた。
宮部は「大阪は楽しかったしおいしいものも
いっぱいあって
いいところだと思うけど
みんな早口早足で
忙しそうだ。
早く九州に帰って遠賀川の
河童ときゅうりでも食べたくなった」と
いう・・
そこへ、あさは、雁助の声が聞こえた。
「うめ・・・
わしと一緒にこの家でえへんか?」
あさは、驚いた。
宮部も「これはこれは」といって
話しかけようとしているので
思わず宮部の手を引いて
「あかんあかん」と
廊下を走って行った。
「あの、うち・・・」
うめが返事をしようとして
雁助がつめよってきたので
思わず後ずさりしたら
湯が沸いた鍋を
落としてしまった。
雁助は鍋を取ろうとして
その熱さに
「あちちち」と
大騒ぎとなった」。
あさは
「どうもご苦労さんでした」と
「気になる」という
宮部を追い出すように
見送った。
「うめ・・・」あさは
うめが心配だった。
ところが台所では
かなりの大変な騒動だった。
「あつ、あつ~~~」と
手を水につける雁助。
丁稚が「どうされましたか」と聞くの
で、雁助は「軟膏をもってきて
くれ、はよ!!!」
と叫ぶ。
うめは雁助に謝ると
雁助は「自分が悪い」という。
そして、「うそだす」といった。
「あんたを連れ出したら
おあさ様に
なんで、なんでと
追いかけられしまいますさかい
な・・・」
「ほな
どこにもいかはりまへんな
どこにもいかはらへんとこの家に・・」
「はぁ、きちんと銀行になるまで
この家に。。。」
雁助はそういった。
それからしばらくして、栄三郎は
店のみんなを集めた。
加野屋は三年後の開業を目指して
銀行になると宣言した。
加野屋の新たな船出だすと
いう。
雁助は、「これから八代目は
だんさんというのではなくて
頭取と呼ぶわけやという。
頭取さんや。。。
みんなよう覚えておけ。」と。
栄三郎は「雁助おおきに」と
いった。
あさは、「店が新しく変わるので
不安もあると思う。
銀行になったからと言って
みんながみんな、成功する
とはいえない。
成功したのはひとにぎり
です。
でも、畑違いの炭鉱と違って
おなじお金を使う仕事だから
大丈夫、みんなよろしく」という。
それから、石炭の会社もひとつの
会社にするという話も合った。
新次郎は、いそがしくて
聞いてなかった。
とにかく、新しい加野屋の
出発だというで
みんな気を引き締めた。
しかし、雁助は・・・
どう思っているのか。
新次郎はその様子をみて雁助を
呼び、ふたりで話をした。
「銀行ができたら出て行くつもりやろ」と
新次郎はいう。
雁助は、新次郎は商いに興味ないと
いっていたけど、熱心に
なってきたという。
「本当のことを言うと
石炭もそれなりに面白かったけど
性に合わない。やっぱり
銭金の様なものにしか興味がない」と
いった。
新次郎は「あんたが好きなのは
銭金ではなく
お父ちゃんに教え込まれた信用という
ものではあらしまへんか」という。
「御明察です。
堂島の大名や
商人は信用できたが
どこの誰かもわからない人に
お金を貸すとは
信用できない、しかしおあさ様
は、信用できるのでしょうね。」
「ふん。。。せやな。。」
「両替屋の加野屋がなくなったら
わてには奉公するものがあらへん
のだす。
栄三郎さんが不足ではない。
あのお方は若い。
奥さんにたきつけられたら
どんどんのびるひとだから
わてのような古いものがいたら
伸びなくなる」という。
「そんなことはない。
でも、もう自分以外の者の
ことは考えなくていいから
自分のことだけ考えたら
どうや?
自分がどうしたいのかよく考えて
ほしい。」
新次郎は、長年つかえてくれた雁助に
そういった。
「自分のことだけを考えてくれ・・・」と。
雁助は「自分のことだけを考える?」と
つぶやく。
「もし、結果、出て行くことにしたら
のれん分けにはならないけど
雁助が独立するための資金は
加野屋が出します。
それが加野屋からあんたへの
せめてもの、恩返しだす。」
新次郎は雁助にそういった。
「なるほどなぁ・・・
新次郎さんは大旦那様にまるで
似てへんみたいで
よく似てますね。
おあさ様は人を見る目があったんですね。」
雁助は
感心した。
「え?」新次郎は聞き返した。
新しい会社はだれが社長になるのか
おなごしたちは大騒ぎをしていた。
「栄三郎さまやろ」。
「いや違う、おあさ様だ」と弥七がいう。
うめは
あの東京であった風変わりな男性が
じつは福沢諭吉だが
「あなたは、おなごの社長になり
なさい」といったことを
思い出した。
「まさか・・・・」とうめはいうが。
新次郎が「あさはどこや」と
大騒ぎをした。
実は、雁助があのあと
新次郎に新しい会社の社長
になった話をした。
だから、おあさ様は人を見る目が
あるといったのだった。
新次郎はあさを捕まえて
問い詰めると
その通りだという。
自分は何もできないと
新次郎が言うがあさは
何もしなくても自分がすると
いった。
いくら新しい時代とはいえ
いきなりおなごの社長は世間も
政府も認めないから
といって、新次郎になって欲しいと
思っていたという。
新次郎ほど大阪の商人に好かれて
いる人もいない。あさより人望がある。
顔も広い。
これは才能だとあさはいった。
栄三郎もよのも賛成したという。
「どうか、加野屋の社長になって
おくれやす」といった。
この話は五代にも相談した。
すると、「ナイスアイディア」といった
という。
新次郎は、むかむかしながら
大阪商法会議所へ行った。
「ホンマにともちゃんは・・!」
と、
いいながら廊下を歩いていると
せわしく人が走っている。
何事かと
部屋の中をみると
五代が
倒れていた。
*****************
新次郎がいよいよ本領発揮と
なる時代が来ました。
雁助のこともしっかりと
見ているし
なによりも、人の気持ちを
理解している。
こういう上司がいると
仕事はやりやすい。
意欲もでる。
もっと頑張ろうと思う。
それがリーダーには
必須条件である。
あさは所詮働き蜂なのかも
しれない。
だが、こうして新次郎という
良きパートナーを持った
あさは、落ち着いて
仕事に励めるものだ。
雁助は本当に
加野屋を出て行くのだろうか。
うめは、やはり、とどまるのだろうか。
丸く収まるといいですが。
で、五代の病状がここで
悪化していった。
いったい・・・
五代は・・・。
