道を照らす人2

五代があさに、「もし
自分が死んでも自分が作った
大阪は残る」といったことば。
あさには、不安が残った。

その頃加野屋では
栄三郎は
雁助に加野屋が銀行になるのが
反対なのかと
聞いていた。

栄三郎がいうには、二年前五代が
いっていたという。
「銀行に変われない両替屋は
いずれ消えてなくなる。
これはあささんの考えが正しい。」

それからいまは、銀行に変われなかった
両替屋は見る影もなくなって
しまっている。

「加野屋は今からでも銀行を作る
べきではないのだろうか?」

雁助は
うつむいて聞いていた。

『みんなで加野屋ののれんを
守ってな・・』
と、正吉がいっていたことを
思い出していた。

「ここが潮時だすな・・
だんなはん・・・」
雁助はつぶやいた。
それは、栄三郎には
聞こえなかった。
雁助は「加野屋は250年の老舗だ」
という。
「両替屋の仕事がなくなったからと
いって、お金を扱う仕事をやめたら
あかんと思う」という。

「のれんを守るためだす。
銀行にいたしましょう」と
いった。
栄三郎は、決まったと思った。

「お姉さんに言うてきます」と
いって、栄三郎は言って
去って行った。

よのと新次郎はそれを聞いていて
びっくりした。

台所では、「銀行になったら
どうなるのだろう?」
「おなごしはくびかな」という。
みんな不安だった。
雁助は
店に座って店をじっとみた。

うめはそんな雁助の様子を
心配そうに見ていた。

栄三郎は、よのに、報告をした。
よのは、納得した。
よのは
あさに、加野屋は両替屋から銀行
になったらどう変わるのかと
聞いた。

かのは、それが心配だという。

あさは、「違いは銀行はカンパニー
ですね」という。
「雇主が働き手と一緒に暮らすという
のではなく、お給金を渡して生活を
してもらう。
仕事の時間は会社にいて
終わったらそれぞれの家に帰ってもらう。」

よのは、「一緒に暮らさないので
さみしい」という。

あさは「住み込みのおなごし以外は
別の家に住んでもらう」という。

「みんなのお膳は?」

「朝ごはん晩御飯は別々です。
それぞれ用意してもらいます。」
「それ、みんなできるやろか」と
よのがいうので
あさは、「しばらくは、かよいか
住み込みか、選んでもらいましょう」と
いった。

あさは、よのに、感謝した。
そして、石炭の仕事が大きくなった
ので、近いうちにカンパニーにする
といった。
「わが加野屋も銀行だけやなくて
新しい会社を作ろうと思う」という。
つまり、加野屋の名前を持った会社が
大きくなるという事だ。
「こちらは栄三郎さんにお願いする
ことにして
石炭のほうの社長は・・・」

というと

よのは
「ええ??と
驚いた。

あれから、炭鉱の支配人宮部は
加野屋にいて、炭鉱の会社の話を
あさから聞いた。

「炭鉱の社長の件は・・・」
とあさがいうと
新次郎がやってきて

「今日お帰りでしたね。」
と言って入って来た。

そのうえに、千代が
「うめが話がある」と言って
やってきた。

うめと話をする
あさと新次郎。

うめは「銀行になったら
雁助さんはどうなるのか」と
聞く。
あさは、「支配人になってもらう」と
いった。

「のれん分けは・・・」と聞くが

雁助ののれんわけは、のれん分けに
ならないが・・・。
支店という仕組みがるといった。
「商いがしやすいように、道頓堀や
難波、できたら神戸、奈良に支店を
おきたい」とあさはいう。
雁助にはその中でも一番大きな支店の
支店長になってもらうといった。

だから、のれん分けとは意味が違うと
いった。

うめは、「自分が口出しすることではないと
わかっている」といった。
「雁助さんは先代から加野屋を守ってきたので
悪いようにはしないでほしい」といった。

こんなことをいううめは
始めただとあさはいう。

「古参の如才のない奉公人どうし
なにか
通じるものがあるのだろう」と
新次郎は言った。

銀行になったら雁助が
頼りのあさだった。
もしかして、出て行くというのではと
心配した。
新次郎は
「もしそうなったとしたら
雁助の選んだ道だから
止めることはできない。」という。
「商いを変えているのに
雁助に変わらないでというのは
身勝手かなと
思った」とあさは言う。

千代は、「また銀行の話?」
と聞く。

「千代にまで銀行という
言葉を覚えさせて
しまった」と
あさは、反省した。

そのころ、五代は体にむちを
うって大阪の繁栄のために
働いていた。

雁助は台所にいるうめにいった。

「番頭さん?」

「もうわての時代ではないということ
だすな・・・
そろばんをはじいている間に
時代が変わってしまった。
会社、やて。
響きが冷たいな。」

うめは「番頭さんは加野屋になくては
成らない人だす」という。
「大奥様や、栄三郎さん、新次郎さん
おあさ様・・みんな番頭さんにいてほしいと
おもてはります。

・・・もちろん、うめも。」

雁助は顔を上げてうめをみた。

「なぁ、うめ・・・」

「へぇ」

「わてと一緒にこの家でえへんか?」

うめは、
驚いた。
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つまり、これは
雁助のプロポーズですが・・・
うめは、一生をあさと、ともにと
決意したと依然言いました。
一生、一人の主人を守り抜くと
きめたというのに・・
どうする???
うめ!!!!

うめがいないと
あさは、どうなる????

うめの幸せとは何か???
である。
加野屋を出た雁助に何ができるのか
ということだ。
他にどんな仕事があるのか?
たとえ、両替屋に就職をしても
もう、両替屋そのものが時代にあって
ないのである。
とたんに、生活の苦しみである。
ここは、一緒になるなら
なるで銀行というものに
人生をかけなくてはと
思うが・・
それは、時代の違う私だから
そう思うのだろうか??
勤め人の構図ができてきた時代
である。
江戸を知っている人たちには
なかなか理解できないことだらけ
だろう。

時代が変わるというのは
その波に乗ることは
難しいものだ。

しかし、あれほど、馬鹿にされていた
あさの、炭鉱経営だが
みごと、世間をあっと言わせたと
思うと
気分がいい。