大阪の大恩人6
あさが炭鉱で培った経験から
炭鉱へ行って石炭の調査を
新しい山でも怠ることなく
自分でやり、大阪に帰って
は旦那衆たちとの情報交換
などを細かくしてこれからの
世の中の流れをつかもうと
努力していた。

そんななか、あさが借金をしてまで
かった炭鉱がたくさんの石炭がでた
とのことで、加野屋は喜びにわき
ようやくほっとする
栄三郎だった。

世の中は政治には国会というものが
できるという時代となった。

新次郎は五代と美和のレストランで
一緒に話す機会を持っていた。

「そろそろ、大阪の紡績会社が
できるのですよ。糸の産業
は、国産でいいものを作る
ような時代になった」という。
五代は、「その経営はどうですか?」
といわれて、新次郎は
「仕事はしたいと思わない」と
いった。
しかし、千代がなんで、お父ちゃんは
仕事はしないのかと聞かれて
グサッと来たと
五代に話した。
両親からもあさからも言われても
びくともしなかったけど
娘に言われたら
グサッと来たと
いう。
美和は「ひさしぶりにどないだすか?」
と、三味線を持ってきた。
新次郎は、美和と三味線を
ひいた。

そのころ、あさは、店でそろばんを
はじいていた。
その仕事は朝までつづいた。

翌朝、
あさが座敷に行くと
よの、かの、千代、さちが
お雛様を飾っていた。
千代が何でだす?
と両親になぜ普通ではないのかと
質問をしたことをよのは、それぞれに夫婦が
あるという話をした。
「千代にはわからないやろうけど、」
「わからない、」
「それで、よろしい」

よのは笑った。

あさが、部屋に入ると
「おかあちゃん」、と千代がうれしそう
にいう。

あさは、千代と一緒にお雛様を
かざった。
「おかあちゃんと飾るのは初めてや」と
千代が言う。「そんなことない」
とあさはいう。「去年は炭鉱へ行っていたけど
その前もその前も
一緒に飾っていた」といった。

あさは、子供のころはつとお雛様を
飾るときの思い出を語った。
「お雛様かて、いろんな経験をして
たくましくなったからこそ
しあわせになるんやで」と
はつがいったことを話した。

そのとおりになった。
千代は女の子らしいけど
あさは、お雛様を振り回して
遊んでいたというと

「そやなぁ~~
おかあちゃんは、おびな様みたいや」
と千代が言う。

「お母ちゃんはお雛様より
おびなさまみたいや。」

あさは、びっくりした。

こうして五代は日本銀行を
作って近代的な銀行制度を
整えて行った。

あさは、店にあった
七夕を
みた。

「あれからもう一年か~~」
短冊には
「ラムネを飲んでみたい」と
あった。
あさは、笑った。
「子供らしいええ夢やな」と
わらった。

さちが、小箱をもってきて
去年の七夕飾りを
みせてくれた。

千代が上手につくった飾り
だったが・・・
その中に
短冊があった。

それには

「お母ちゃんと一杯
遊べますように」

とあった。

あさはそれをみて昼寝をしている
千代のもとに行った。

「堪忍やで
千代・・・・」

そうつぶやいた。

あさは、無心に寝るわがこの寝顔を
みて、悲しくなったのか
奥の部屋に行き、ふすまを閉めて
泣いた。

美和のレストランで
五代は美和に、「新次郎さんは
妻を見守るだけの男ではなく
もっと大きなことができる
男ではないか」という。

美和は、「いいえ
見守るだけの男だすと
新次郎さんやったら
そういわはると思います。」
美和は笑った。

「あのお方はそう思われるのが
お嫌いですから。
あの人が人を引き付けるのは
ただ優しいだけではないと
思います。」

五代は、「なるほど」と
いった。
美和が「ほな」、といって、席を外した
そのとき

大きな物音がした。

ふりかえると

五代が

倒れていた。

美和はあわてて
「大丈夫ですか」と
かけよった。

「静かに・・・」

「どこかがお悪いのでは?」

「どうか、この事は内密に
・・・・」


翌日

新次郎、あさ、千代は、庭で
写真を撮った。
しあわせそうな
家族写真だった。
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新次郎の力はどれほどだと
五代は思っているのでしょうか。
確かに普通ではない両親をもって
千代は悩みます。
とくに母親は家にいることがなく
大好きなお商売に朝から晩まで
うつつをぬかして?います。
それが加野屋にとって、大阪にとって
そして、日本経済にとってどれほどの
力になるのかなど
幼い子供がわかるわけが
ありません。
よそのお母ちゃんと同じように
遊んでほしいのです。

いま、働くお母さんたちは似たような
気持ちになってそれを押しとどめて
子供を保育園に預け
仕事に行っているかたも多いと
思います。
子供にさみしい思いをさせているという
罪悪感。
でも、コドモは信じています。
離れていても、おかあちゃんは、自分を
大事に思ってくれていると。
子供は、ほんとうにピュアです。
どうか、子育て世代で
ワーキングミセスの方、
一緒に居られる時間は
一緒に居てあげてくださいね。