大阪の大恩人2
「なんでだす?
なんでうちのおかあちゃんは
普通のおかあちゃんと
違うんだすか?」

千代が聞く。

あさは、びっくりして
答えようと焦った。
そこへ新次郎がやってきて
あわてて
「あんたのおかあちゃんは
よそのおかあちゃんとちごて
いるかもしれませんけどな・・」
といいかけて

あさは、千代に聞かれたのは
自分だから
自分で答えると言って
「あのな、千代、おかあちゃんの
どこが・・・」

というと
千代はびっくりして
走って去って行った。
あさは、千代を追いかけた。

ちょうど、
おいかけごっこ
になった。

うめは
「お二人があわてるから
千代さまがびっくりしているのですよ」と
いった。

わが娘の何でだすには
たじたじのあさだった。

あさは、元なんでだす
娘だったのに・・・。

その夜、新次郎は
千代を寝かせながら
あさにいった。
「こころあたりはある」という。
あさが、普通のお母ちゃんと
違うといったことだった。

事の発端は
みよやかよとの
おままごとだった。
千代がお母さん役の時
千代がいつも出かけるので
出かけるのはおかしいと
みっちゃんたちに
言われたという。
普通のお母さんは
いつも家にいて
旦那様が帰って来ると
お帰りなさいませと
挨拶をするものだと
いう。
「千代ちゃんのおかあちゃん
普通と
ちがっている」と
いわれていた。
新次郎はおままごとで行き詰った
千代に話しかけた。
「10人のおかあちゃんが
いたら10通りのお母ちゃんがいる」と
千代にいったという。
新次郎はその話をしながらあさには
「しかし、よそと違うというのは
ホンマのことだからと
言う。

あさは、自分が普通と違うと
いう事に初めて気が
ついた。

九州と大阪を行き来して
帰って来たらそろばんはじいて
旦那衆の寄合に出て・・
これは、
普通のおかあちゃんではない。


新次郎は、「あさはあさでいい」と
いったので、あさは安心して
寝てしまった。

新次郎には、なやみがあった。
それでもあさは、胸を張れること
をやっている。
自分は何もしていない。
これは、まずいのかもしれないと
新次郎は、つぶやくが。
誰も聞いていない。
孤独な気分だった。

旦那衆の寄合では
やっと大阪の商人たちが
石炭の価値に気が付いた
あさに石炭の話をして
ほしいと要望がくる。
それで、あさは石炭をほって、
売るという経営の
話をみんなの前でするようになった。

栄三郎は、あさがなんでも人に
親切に教えているので、
不思議に思った。

最初、あさは石炭経営をするときは
不安でなにもわからないままだった
けど、いまはわかることは伝えること
が大事だと思っている。
それは、昔「なんでだす?」とよく聞いていた
子供時代、祖父が
「他の人から『何でだす』と聞かれたら
教えるんやで」、といったことが
心に刺さっていたから、だった。

そんな日が来るとはと
あさは、驚くが
肝心な娘の疑問には答えられ
ないだめな母親だと自分で
あきれた。

そのおままごとであるが
やはり、炭鉱へ行くのは普通の
おかあちゃんではないと
みよやかよが
いう。
千代は「炭鉱へ行ったら
あかんのや・・・・」と
つぶやく。

みよは
「お母ちゃんは家にいて
旦那様お帰りなさいませと
いうものだ」という。
かよは
「家の中では旦那様のお世話をする
ものだ」という。

<えらいね~~~
昔の主婦は!
しかも、おままごとという遊びも
大変なものね・・・でもこれが
楽しかったけど。>

千代はみよたちと一緒に旦那様
おかえなさいませという。

よのとかのは
その様子を見て
ほほえましく思った。
五代がやってきた。
千代は「こんにちは」と
挨拶をする。

五代はよのとかよに
「お邪魔します」と言って
店に入っていった。

大阪の恩人と言われる
五代が加野屋に来るのは
加野屋が安泰という事だと
よのとかのは
喜んだ。

あさは、五代とはいつも
すれ違いなので
家に来てもらった。
聞きたい話は
銀行のことだった。
大阪にも銀行が
乱立する時代となった。
だが、
加野屋は炭鉱の事故の修復に
いれこんでいたので
銀行経営に乗り遅れてしまった
という。
大番頭に止められていることも
いった。
五代は「大番頭さんは正しい」という。
びっくりする
栄三郎、あさ、うめだった。
なんでうめが???
五代は「今の銀行は金持ちの士族や家族が
ろくに勉強もしないで
作ったものだから
かっこつけで中身がない」という。
「だからいたずらに
資金を貸し付けたり
うちは銀行だと威張ったり
客を客とも思ってないところが
多い。あれらはいずれつぶれます。」

「やっぱり危うい事業だったんだすな」と
栄三郎はホッとして言った。
「今の物価高は銀行乱立のせいもあるし、
国もそのうち動くだろうから
手を出していると振り回される」と
五代は言った。

うめはうなづいた。
栄三郎は、あさに、銀行を止めたことを
確認した。
「失礼します」と言ってうめは去って行った。
あさは、「銀行の話が聞けてよかった」と
いう。
しかし、五代は
「だからと言って両替商がこの先続くわけがない」
と話を続けた。
「銀行になれなかった両替屋は
消えてなくなる。
あさの考えが正しい」と
いった。
「いまは、じっと資金をためることだ」
と五代はいう。
やはり、この先銀行への変身をする
必要があるというのは結論である。
「あきらめたらあかん
やると決めたらやり通す
あささんは大阪一のおなごの実業家だ。」

栄三郎とあさはびっくりした。
そのうえ、五代は「加野屋には北海道の
開拓の事業にも参加してほしい」といった。
「政府の古い仲間から北海道の開拓が
上手くいかないので手伝ってほしいと
頼まれた」という。

「北海道は宝の山だ。
船舶、農業、漁業、それを
書こうした缶詰・・・
石炭もある。
あささんの力をぜひ生かしてほしい」と
いった。

あさは北海道へいくことに
夢を思ったが・・・ふと千代の
「何でだす?
なんで、普通のお母ちゃんと違うの」
という言葉が聞こえてきた。

「ああ、九州だけではなく
今度は北海道へ・・・
普通のお母ちゃんではないな」と
思った。
そして「五代にきっと加野屋も
お手伝いをさせてください」と
いった。

「政府が手におえないというのは
大変なんだな」と栄三郎が言う。
「だから大阪商人の力が必要です」と
五代は言う。



「もう帰るの?」
と千代は五代に言う。

「今日は遊びに来たんやないのよ」と
あさはいった。
「また来るときは一緒に遊ぼう」と
千代にって五代は帰って
いった。

よのとかのは
その後ろ姿を見て
「立派なお背中だこと。。。」
「ほんにほんに・・・」
と、後姿に手を合わせた。

あさは、栄三郎に銀行の件を
焦っていたことを謝った。
栄三郎や雁助が
無鉄砲なあさを止めてくれるから
安心して仕事ができると
感謝した。

そして弥七が帳簿を見てほしいと
いうので、「さあ働こう」と
元気を出して、店に入っていった。

栄三郎は、「あさを柔らかい方だ」と
いった。
「どんなに忙しくても
人から聞かれたことには親切に
教えるし、
人の話を聞く耳を持っているし・・
だからどこへ行っても信用されますのやな。」

その話を雁助が
店の中で聞いていた。

加野屋をでて
歩いている五代はふと何かしら気配を
感じて振り返った。誰かがつけている
気配だったが
誰もいなかった。

そのころ、あさに、待ちに待っていた
ある手紙が届いた。
はぁ~~来た!!!
あさは嬉しそうに手紙を見た。
*********************
何でだす?
何でふつうのお母ちゃんやないと
あかんの??

と、千代にいいたいです。

普通やなくてもええやないの!
あんたのお母ちゃんは
世界で一人だけなんやし。
千代のお母ちゃんが
何人もいたらおかしいやろ?
せやから
一人だけで
それが
変わった内容であっても
かまへんやないの!!!!

全く横並びが好きな
日本人やな!!!

と、

千代にどなりたいですわ。


で、五代をつける人物がいる。
何か怪しい雰囲気である。

銀行が威張っているのは元士族
や華族の大名商売だったから
なのですか。

そしてつぎは

北海道・・・

加野屋は

牧場経営をするので
しょうか??
マッサンと組んで
ワインづくりをするとか・・・