東京物語5
新次郎の三味線の弦が切れた。
驚く新次郎。
そこへよのがやってきたので
三味線を片付けようとした。
すると、よのは生前正吉が
新次郎は三味線が好きで
しかも上手になっているらしいと
聞いて、「一辺聴いてみないと
あきまへんな・・」と
いっていたと話をした。

「一辺聴かせたって。お父ちゃんに。」

新次郎は、ぽかんとして
「へぇ」と返事をした。

その一方
東京では大久保利通が
暗殺されたと
号外で報道があった。

その号外を見たあさは・・・

五代は三坂の得た情報を聞いていた。
「馬車で霞が関を出て
宮中に向かっている途中で
暴徒に襲われ御落命・・・と。」


「うそだ・・・・

うそだ・・・・」

この二、三日
あさが東京に来たので
一緒にあってもらったり
一緒にとっておきのスコッチを
飲んで

日本の将来を話し合ったりした

ばかりなのに。

「うそだ・・・」


五代は力が抜け
ゆかに座り込んでしまった。

「この間お逢いしたばかりのあの方が
殺されてしまうなんて。」とうめ。

「五代さまは大丈夫かな
なにかあったら・・」

うめは「汽車がでます」というが

あさは、「それもそうだ」と思い
ながらも

「あかん・・・
やっぱり心配や」という。

「あきまへん」とうめが
いうけど
あさは五代に何も御恩を
返していないといって
あさは、五代の家へ
走って行った。
うめには先に帰るように言いつけた。
そのころ、加野屋では
新次郎が三味線を弾いていた。

東京では
あさが息を切って
走っていた。


ふゆは新次郎の
三味線を聞いていた。

そこへ、かのが
ふゆに「奥様がお呼びです」と
いいにきた。

加野屋から
三味線の音が
ながれていた。


あさは、やっとの思いで
五代の家についた。

部屋に入ると

五代の背中がみえて
意気消沈した様子で
座っていた。

「五代さま?」

「あささん・・・」

「よかった、御無事で。」

もう、船に乗っている時間や。」

「そうないな頃ですな・・
間にあわへんかった。
うめに謝らないと。」

「何で?」

「駅のそばで大久保さまのことを
知ったんです。
それで五代さまになにかあったらと
思って。」

「あほなこと・・」

五代は窓のそばに歩いていった。

「何でこんなことになってしまったん
やろな・・・・。」
五代の悲しみが手にとれて見えた。

そのころ、加野屋では
ある騒動が起こっていた。


よのがふゆにふゆの父から加野屋あてに
手紙をもらったという。
それは実家でふゆの縁談があるという。
よのは、「びっくりしましたやろ?
ふゆかて、いい年頃だから。
この縁談がきまったら
まえにツタにしたみたいに
嫁入り支度を」と、よのがいうが
少しぼけているらしく
かのは、「あれはツタではなく
クマのほうですよ」と
いった。
ふゆは「自分のようなものは縁談だ
なんて」という。

相手の方はふゆのことをよく知って
いるらしい。

あのころのことで
店の周りをうろうろしていた
男が実は
縁談の相手だったらしい。

店の中をみて、ふゆをみていたと
いう。
器量はいいし
よく働くし
何もかも惚れてしまったという
話しだった。

亀助は気が気ではない。
お兄ちゃんでもいいと
いったけど
やはりそれは少し違うらしい。
その男は草履屋だったのが
最近は洋傘やになり
儲けているらしい。
だから、ふゆの父も
是非にといっているらしい。

新次郎は、「父親が来る前に
おふゆに亀助の気持ちを伝えたら
どうか」という。
亀助は
「こんないい話が来たというのに
そんな無粋なことはできない」と
いった。
「自分は兄だから
ふゆが幸せならそれでいい」と
いう。

弥七は「番頭はんでも
落ち込みますのやな」と
いった。

新次郎は弥七に千代を預けて
亀助を追いかけた。

そのころ、あさは・・・

五代は、駅まで送るという。
「馬車を飛ばしたら
最終列車に間に合うでしょう」と
いった。

あさは、「大丈夫だ、一人でいけれる」
と言って断った。
そのうえ、五代はさっきから
ずいぶんと飲んでいる。

あさは、それも心配したが
「これが飲まずにいられるものか」と
五代は言った。
五代は平静を失っている。
この時代の薩摩の男性が女性に
涙を見せるのだろうかと
不思議に思ったが。
五代はいつものダンディでかっこいい
男ではなく、泣きじゃくっている
子供のようだった。

「これで維新政治は終わってしまった。
まだまだあの男はこの日本に必要な
男だった。
まだまだこれからなのに
どれほど無念だったことか
私は友を守れなかった。
せめて政府に入って
そばで支えていたら」と
いう。

「五代さまのせいでは
ありません。
五代さまというお友達
がいたことが
政府で難しいお仕事をされている
大久保さまには
心の支えになっていたのやなと
思います。

お二人を見ていたらそう思いました

離れていたからこそ
お互いが励みになっていたのやなと
それこそが心の友なのですね。
だからあのまっすぐで偽りのない
お顔は五代さまだけに見せてはった
ほんものの大久保利通さまという
お人だったのですね。

うちは、大久保さまがこれからの
日本のためにとしてくれはった
お話をこのさき一生
忘れしまへん!!!
大久保さまが言うてはったとおり
これからも五代さまとともに
大阪を
そして日本を・・・・・!!!」

力づよく語っているあさに
五代は
いきなり抱きついてきた。

「五代さま?」
あさは驚いた。

「許してください。
いま、この時だけ。」

あさは、なんとか五代の体を
話そうとしたが

「今だけ・・・

このまま・・・」
そういって

泣きじゃくった。

あさは

困惑したが。

***************
大阪と東京の情報の違いが
よくわかります。
あさがこの時に東京へ行かな
かったら、大久保にあうこともなく
日本がおおきな転換期にあることにも
気が付かず・・
大久保と五代の日本を動かすという
話しもさえ遠い国の話にさえ
聞こえたのではと思います。
しかし、確かに東京は
日本の中心であるという
ことは。はっきりとわかりました。
で・・・・
あさは、五代と間違いを
してしまう?
という期待??は
全くありません。
あさは、根っからの商売人で
男と対等に仕事をしていく覚悟の
ある女性だからです。

で・・・・この五代とは?
あまり知られていませんが
奥様はいます。
そして、ゆくゆくは病気で
なくなります。
人生を大きなスケールで
燃焼させた生き方をしたとも
いえます。

ドラマに流れる新次郎の
三味線は
あさへの思いが込められて
いるようです。
早く帰って来いと
の思いが込められているように
聞こえました。