大阪一のお父様4
新次郎はあさが見ているのを
しらず、夜泣きのうどんやの
屋台でサトシである松造と
席に座った。
その横にいるのが八ちゃんだった。

あさは、千代をうめにたくして
様子を見ることに
した。

サトシは
「久しぶりやなぁ
新次郎坊ちゃん」という。

新次郎は聞きたいことが
みっつあるという。

「お母さんはおげんきですか?」

「死んだわ・・・
大阪を出た翌年に死んだ」という。
「父親も
ようやく見つけ出した時には
亡くなっていた。
それからずっと
貧乏神に追いかけられて
流浪の暮らしや。」

サトシがそういったとき
思わずあさはくしゃみが出て
新次郎に見つかってしまった。

新次郎と一緒にすわるあさ。
サトシはうどんをすすりながら
いった。
「やっぱりこっちのうどんは
出汁がええな。」
あさにもうどんを勧める新次郎。

サトシは「もう一つのお前の聞きたいこと
をあてたろか?」
という。

「炭鉱に爆薬を仕掛けたのは
わいや。」

あさは、うどんから顔をあげた。
そして、険悪な顔になって
サトシを見た。

新次郎は「なんでや」と聞いた。

「決まっている、。
加野屋にあの山から手を引かせようと
思ったからや。
大阪の金の亡者の金貸しが
わざわざ九州の炭鉱まで
手を出しくさって・・
事故の一つでも起こしたら
すぐ怖くなって手を引くと思った
からや。
おまえらにとって炭鉱は
所詮、両替をやっている
ついでだろう。
なのに、石炭は日本を支えるとか
きれいごとをぬかしやがって。
へどがでたわ。」

あさは、
「うちはホンマにあの山を!!!」

といいかけて
新次郎はあさをとめた。

「最後に聞きたいことをよろしいか?」

(まだあったのか・・・)

「これからどないしたい?
何かしたいと思ったから大阪に来たんでっしゃろ?
うちの店に火でもつけたろと思ったのか?」

「思うた。
大番頭が警察に自分のことを言うたら
このさきどこの山でも働くことはできない。
やぶれかぶれや。
最後に加野屋もろとも吹き飛ばしてやろうと
思ったけど、もうやめた。
おまえのおやじさん、もう死ぬみたいやし
ワイがそんなことをしなくても
親父さんが死んだら、加野屋はつぶれると
町できいたから。」

そういってうどんをすすった。

「そうか・・・
そら・・・

かんにんな。」
と新次郎が言う。

あさは驚いて新次郎を見た。

「おまえがそんなにひねくれた考えになった
のは、わてのせいや

わてがあの時、おまえを助けられへん
かったさかいや。。
いまやったら頼りないけど
もうちょっとなんかできるかもしれ
へん。
そうや
寝泊まりするところは
あるのか?
これからどないして生きていく
つもりだす?

おかねはありますのか?」

新次郎は財布を出した。
「おまえ・・・」
とサトシが言いかけて

あさが

新次郎の手を抑えた。

「いいや
旦那様、それはあきまへん。」


あさはサトシにいった。
「店を恨んでいるなら
何ぼでも恨んでください。
自分に意見するなら
なんぼでもいうたらいい。
悪態をつくのもかまわない。

でも

何ぼ何かを恨んだとしても
憎んだとしても

事故を起こすことは

それだけは

したらあかんかったんと

違いますか?

落盤事故がどんなに危険か。
それはサトシさんのほうが
ようわかったはるはずだす。

たまたま
みんな助かっただけで
死人がぎょうさん出ても
おかしなかったのですよ。
親分さんもまだあしをひきずって
います。
働くことができまへん。
だから食い扶持もなくて先も見せず
途方にくれています。

加野屋がたくわえを全部出しても
到底みんなを助けることは
できまへん。

それだけ
あんたが起こした事故は
大きいという事だす。
取り返しのつかへんことだったのだす。

加野屋をつぶすのならいっそう
うちを包丁で刺してくれた
ほうが
どんだけましやったか。」

「なんちゅうこといいますねん。」

新次郎は驚いて言った。

サトシはじっとあさをみた。
あさも必死で
サトシに訴えた。

「サトシさんは立派な納屋頭さんだった。
あんさんを信じてくれる親分や抗夫さんが
あんだけいるのに
こんなことをして
あの人たちに申し訳ないと
思わしまへんのかっ!!!」

あさは叫んだ。

新次郎はあさを止めようとした。

「罪・・・
つぐのうておくれなはれ。」

新次郎はあさに「なんてことをいうのや」と
いうが。

「すんまへん
旦那様・・・せやけどうちは
炭鉱のみんなやお家を守らな
あきまへん。
偽善者ではあかん
優しいことばかり言うテルわけには
いきまへん。」

サトシは
「あんたもやっぱり人でなしやな」と
あさにいった。
「それでええんや。
加野屋の旦那様とおんなじや。

わいのおとうちゃんがいうてた。
のれん分けするときに
旦那さんから
なにがあっても
決して金の貸し借りだけはできへん。
それがしきたりやと言われた」と。

「でも
自分は両親が苦しむのを見て
いられなかった。
だから、おまえがやさしいのを
いいことに無茶を言うたんや。

いまかて
事故を起こしたわいを
助けるやて???

あほが


人が良すぎて
腹が立つわっ!

わいは
この女大嫌いやけどな

ほんでも

いまはこっちが
道理やってわかる。」

サトシは立ち上がって
頭を下げた

「すまんかった・・・」

「松造・・・・

顔上げてな」

「上げられへん

最後に一つだけ頼みが
ある。」


松造の頼みとは・・
正吉に会うことだった。

翌日のことだった。
「よう来てくれたな。」
と正吉は言った。
松造は「合わす顔があらへんのは
わかってます
せやけど
わいは・・・・」という。


松造はん。
「おとうさん、助けられんで
すまなんだ。

いくら約束やからというても
もしかしたら
他に助ける手立てが
あったかもしれないけど

私の力不足や

堪忍してや。。。。

あんたのお父さんな・・
よう働く
ええ番頭はんやったんやで・・・

これは

あんたのお父さんが帳簿を閉めて
はったころの
大福帳や。

ほれほれ

きれいな字や。。。

私がまちごうても
知らん顔して
訂正してくれたんや


頼りがいのある人やった。」

そしてお茶と一緒に出した
お菓子をみていった。

「このまんじゅうな

あんたのお父さんが大好き
やった

ふなはしやの
黒糖まんじゅうや。
本当にすきやったな。
ちょっと
食べてみぃ?」
サトシは
おそるおそるまんじゅうを口にした。

そして

泣いた・・

「こんな形でまた会えて
こういうことを伝えることができて
ありがたい

再びおうたんも
お父ちゃんのお導き
やったかもしれまへんな・・・」

松造は
泣いた。

うなだれて

泣いた。

新次郎は
そんな松造の

肩を抱いた。
***************
今回の放送は
うどん屋のセットと
正吉の部屋の
二つだけでした。

それにしもて
一緒にうどんを
すすっている
筋肉質の
男が
はっちゃんとは。
はっちゃんは
このドラマのどのような
役どころなのでしょうか。

聞きたいわっ!

あとあと
なにかあるので
しょうか????
しかし
いつのまにやら
画面から
消えていました。

あさが怒鳴る場面では
もういませんでした。

サトシは
これでよかったのでしょうか。

サトシの人生は
これでよかったのでしょうか。

遅くなったこととはいえ
加野屋への憎しみが少しでもきえて
良かったと思います。
何かを憎むことは不幸なことです。
その心がある限り、サトシは
しあわせになれないからです。

罪を償うことは大事なことです。
あさは、犯人捜しをしたくないと
いいましたが、心の中では
もしかしたら
あのサトシが・・と
思ていたはずです。
五代は見抜いて
上に立つ者は
みんなを守らなければいけない。
偽善者ではいけない。
優しいことばかりいっていて
はいけないと
言いました。

まさしく
新次郎はその優しいことばかりの
男だったのですね。
松造に、
寝泊まりは?
お金は?

と聞きます。

それは松造を
乞食扱いすることになります。

これほど、自己主張の強い
男を
乞食扱いすることは
ますます
憎しみが増すと思えます。

あさは止めました。

いい判断だと思います。

貧乏人と金持ち。

人生の勝敗は
今の時点では
新次郎とあさが勝ち組
ではあります。

その
憎しみで
松造は
大阪まできて
火でもつけたろかと
思ったわけです。

建物が燃えるだけでは
すみません。

この憎しみをなんとかしないと
松造はますます不幸になります。
まわりも、益々不幸になります。
あさの判断で
道理を展開るなかで
松造はこうして
すなおになっていったわけです。

商売には敵がつきものですが
この場合、元番頭の家族という
身内からでたことで
加野屋には、大きな事件だった
と思います。