九転び十起き6
奇跡的に治郎作が
助かった。
無事に山から出てきた。
側道に逃げ込んで助かった
という。
「危機一髪だったぞ」と治郎作。
あさは、治郎作に声をかけた。
「奥さんも来てなさったのですか。
まかせときといったのに、
こんなことになって・・」というが
あさは、治郎作が無事だったので
良かったと喜んだ。
五代は改めにあさに言った。
「もし、故意に誰かが火薬を仕掛けて落盤
させたとしたら
これは事故ではなく事件です。」
あさは「自分が今やることは犯人捜しでは
なくて、抗夫のかたたちが安心して
働ける環境にすることだ」という。
しばらくは、仕事どころではなくなる
のである。
あさは、「一緒に来てくれて。おおきに」と
いって頭を下げた。
五代は、「全くあなたという人は・・・」と
英語でつぶやく。
「は?」
「いいえ、あきれたというたんです。
そうしたいなら、そうしたらいいです。
これは貸しです。
そのうち、大阪で返してもらい
ますから・・じゃ
グッドバイ」といって、去って行った。
そのご、警察の検証があったが
より多くの報償を望む抗夫たちの
欲望が石炭を掘りすぎて
落盤事故につながったとして
加野屋の責任を問われた。
あさは大阪に帰った。
重役たちは
「ご苦労さん」と、ねぎらうが
あさは、自分の力不足だと
なげく。
「落盤事故の処理に
怪我をした親分への見舞金
抗夫たちへの補償金
全部払っていたら偉い金額になる」
と栄三郎が言う。
新次郎は、「それでも払わないと
人の道に外れる」といった。
「加野屋にはそんな余裕はない」と
栄三郎が言う。
雁助も栄三郎に味方をする。
「これから先の事故の後始末は
もっと手間取ります。
再開もかなりの時間がかかる。
また、なにかあったら
もう、これ以上はむりだす」と
雁助は厳しい。
あさは、「なにかあったら
あかんから
自分が九州に行く」という。
栄三郎は驚いた。
「千代は?」と聞く。
雁助は「若奥さんと亀助で
何とかなるものではありません。
いいにくいですが
加野炭鉱は手放したほうがいい」と
いう。
重たい空気がながれた。
あさが千代をだいていると
よのがきた。
がっかりしているあさに・・
よのが声をかける。
あさは「久しぶりにお乳を上げようとしたら
でなくなっていた」という。
「九州に行っている間は
張って張って・・
絞っていたから・・・」
よのは、「よろしいのや、もう
お乳もなかっても十分育ちます。
心配しなくてもいい」といった。
よのは、「痛かったやろな」という。
「ひとりでようがまんしましたね。」
と。
新次郎は
あさにばかり苦労をかけさせたという。
あさは、自分のせいで
加野屋に迷惑をかけて
しまったという。
「銀行どころか
これでまた借金地獄だす・・やっと
やっと・・・うまいこと行き始めた
のに・・・」
あさはないた。
新次郎は
いった。
「負けたことのない人生なんて
ないから、勝つばかりだと
ひとの心がわからなくなる。
神様が暮れた試練だす。
七転び、八起きといいますやろ?」
「まだ、七回転んでない・・
まだまだ
九つ転び
十起きで
まけしまへんで・・。」
と
千代に言う。
「こんなお母ちゃんあかんかな?」
新次郎は
「それでこそ
あさだす」といった。
そのころ
正吉は
ある考えを雁助に
いった。
「あの炭鉱は手放したら
あきまへん。
石炭はな・・・この先きっと
この家を次の代までまもってくれる
礎になるから。」といった。
それで、雁助に九州に行ってくれと
いったのであった。
正吉のふかい考えがあってこそで
ある。
「あさがひとりで
がんばってもどうもならない。
新次郎でも
栄三郎でもない
あの山をたちなおせるのは
あんただけや。」
「大旦那様のいうことはなんでも
ききます。
が、
この店を離れたくないのです。」
「これは、最後の頼みや。
あんたがわしの死に目に会えなかった
としても
あんたに行ってほしいのや・・・」
雁助は驚いた。
雁助はうめにある御願いをした。
「もし、大旦那様になにかあったら
自分に手紙を送って欲しい」という。
うめは引き受けた。
やがて雁助が出発する日となった。
栄三郎は雁助がいないことが
不安だという。
雁助は、栄三郎に教えることは
全部教えたという。
「大丈夫です」といった。
新次郎は
雁助に頼むぞとばかりに
声をかけた。
「わかっております。
大丈夫です。」
そして、店の者に、雁助は
いった。
「みんな加野屋のために
励みなはれや!!!」
一同は
「へい」、と答えた。
弥七は
「おはようお帰りやす」という。
一同も
「おはよう、お帰りやす」と
いった。
「ほな行ってまいります。」
雁助は出発した。
そして、数日後
雁助は炭鉱について、亀助に
サトシは誰だと聞いた。
「あの男だす」と
亀助がいう。
雁助は
「やっぱり・・・」といった。
「大旦那様の言った通りだ・・」
亀助は
「これでやっと大阪に帰れる」と
喜ぶが・・・
雁助はサトシに近づいた。
サトシは
「貴さん・・・だれな?」
と聞く。
「あんた、松造やな?」
サトシの顔色が変わった。
「わてや、あのころ手代やった
雁助や。さぁ、昔話でも
しまひょか?」
サトシの顔が険悪になる。
加野屋では
あさが廊下をあるきながら
うめに
「この間泣いていなかったか」と
聞く。
うめは、「自分は泣いたことは
ありません」という。
「そうやなぁ・・・」
とあさが言ったその時
正吉のうめく声がした。
大きな音もした。
あさは、驚いて
正吉の部屋に入っていった。
「お父様??」
正吉は倒れていた。
「お父様!!」
「大旦那様???」
****************
雁助は炭鉱経営については
反対勢力である。
それを知ってサトシのこともあった
のか正吉はよくよくの考えで
雁助を九州にやらした。
この英断は、その後どうつづくのか
興味がわく。
新次郎では取り組めなかったサトシと
の、話し合いを雁助はできると
いうのだろうか。
新次郎はサトシかもしれないと
思っても声さえかけなかった。
なにかわかっていても知らない
顔をした。
この行動が落盤事故につながった
としたら・・・
新次郎にとって
悔やんでも悔やみ紅ことだった。
あの男はこういう男だと
あさに言っていたら
あさの得体のしれない
胸騒ぎはなかったかも
しれない。
奇跡的に治郎作が
助かった。
無事に山から出てきた。
側道に逃げ込んで助かった
という。
「危機一髪だったぞ」と治郎作。
あさは、治郎作に声をかけた。
「奥さんも来てなさったのですか。
まかせときといったのに、
こんなことになって・・」というが
あさは、治郎作が無事だったので
良かったと喜んだ。
五代は改めにあさに言った。
「もし、故意に誰かが火薬を仕掛けて落盤
させたとしたら
これは事故ではなく事件です。」
あさは「自分が今やることは犯人捜しでは
なくて、抗夫のかたたちが安心して
働ける環境にすることだ」という。
しばらくは、仕事どころではなくなる
のである。
あさは、「一緒に来てくれて。おおきに」と
いって頭を下げた。
五代は、「全くあなたという人は・・・」と
英語でつぶやく。
「は?」
「いいえ、あきれたというたんです。
そうしたいなら、そうしたらいいです。
これは貸しです。
そのうち、大阪で返してもらい
ますから・・じゃ
グッドバイ」といって、去って行った。
そのご、警察の検証があったが
より多くの報償を望む抗夫たちの
欲望が石炭を掘りすぎて
落盤事故につながったとして
加野屋の責任を問われた。
あさは大阪に帰った。
重役たちは
「ご苦労さん」と、ねぎらうが
あさは、自分の力不足だと
なげく。
「落盤事故の処理に
怪我をした親分への見舞金
抗夫たちへの補償金
全部払っていたら偉い金額になる」
と栄三郎が言う。
新次郎は、「それでも払わないと
人の道に外れる」といった。
「加野屋にはそんな余裕はない」と
栄三郎が言う。
雁助も栄三郎に味方をする。
「これから先の事故の後始末は
もっと手間取ります。
再開もかなりの時間がかかる。
また、なにかあったら
もう、これ以上はむりだす」と
雁助は厳しい。
あさは、「なにかあったら
あかんから
自分が九州に行く」という。
栄三郎は驚いた。
「千代は?」と聞く。
雁助は「若奥さんと亀助で
何とかなるものではありません。
いいにくいですが
加野炭鉱は手放したほうがいい」と
いう。
重たい空気がながれた。
あさが千代をだいていると
よのがきた。
がっかりしているあさに・・
よのが声をかける。
あさは「久しぶりにお乳を上げようとしたら
でなくなっていた」という。
「九州に行っている間は
張って張って・・
絞っていたから・・・」
よのは、「よろしいのや、もう
お乳もなかっても十分育ちます。
心配しなくてもいい」といった。
よのは、「痛かったやろな」という。
「ひとりでようがまんしましたね。」
と。
新次郎は
あさにばかり苦労をかけさせたという。
あさは、自分のせいで
加野屋に迷惑をかけて
しまったという。
「銀行どころか
これでまた借金地獄だす・・やっと
やっと・・・うまいこと行き始めた
のに・・・」
あさはないた。
新次郎は
いった。
「負けたことのない人生なんて
ないから、勝つばかりだと
ひとの心がわからなくなる。
神様が暮れた試練だす。
七転び、八起きといいますやろ?」
「まだ、七回転んでない・・
まだまだ
九つ転び
十起きで
まけしまへんで・・。」
と
千代に言う。
「こんなお母ちゃんあかんかな?」
新次郎は
「それでこそ
あさだす」といった。
そのころ
正吉は
ある考えを雁助に
いった。
「あの炭鉱は手放したら
あきまへん。
石炭はな・・・この先きっと
この家を次の代までまもってくれる
礎になるから。」といった。
それで、雁助に九州に行ってくれと
いったのであった。
正吉のふかい考えがあってこそで
ある。
「あさがひとりで
がんばってもどうもならない。
新次郎でも
栄三郎でもない
あの山をたちなおせるのは
あんただけや。」
「大旦那様のいうことはなんでも
ききます。
が、
この店を離れたくないのです。」
「これは、最後の頼みや。
あんたがわしの死に目に会えなかった
としても
あんたに行ってほしいのや・・・」
雁助は驚いた。
雁助はうめにある御願いをした。
「もし、大旦那様になにかあったら
自分に手紙を送って欲しい」という。
うめは引き受けた。
やがて雁助が出発する日となった。
栄三郎は雁助がいないことが
不安だという。
雁助は、栄三郎に教えることは
全部教えたという。
「大丈夫です」といった。
新次郎は
雁助に頼むぞとばかりに
声をかけた。
「わかっております。
大丈夫です。」
そして、店の者に、雁助は
いった。
「みんな加野屋のために
励みなはれや!!!」
一同は
「へい」、と答えた。
弥七は
「おはようお帰りやす」という。
一同も
「おはよう、お帰りやす」と
いった。
「ほな行ってまいります。」
雁助は出発した。
そして、数日後
雁助は炭鉱について、亀助に
サトシは誰だと聞いた。
「あの男だす」と
亀助がいう。
雁助は
「やっぱり・・・」といった。
「大旦那様の言った通りだ・・」
亀助は
「これでやっと大阪に帰れる」と
喜ぶが・・・
雁助はサトシに近づいた。
サトシは
「貴さん・・・だれな?」
と聞く。
「あんた、松造やな?」
サトシの顔色が変わった。
「わてや、あのころ手代やった
雁助や。さぁ、昔話でも
しまひょか?」
サトシの顔が険悪になる。
加野屋では
あさが廊下をあるきながら
うめに
「この間泣いていなかったか」と
聞く。
うめは、「自分は泣いたことは
ありません」という。
「そうやなぁ・・・」
とあさが言ったその時
正吉のうめく声がした。
大きな音もした。
あさは、驚いて
正吉の部屋に入っていった。
「お父様??」
正吉は倒れていた。
「お父様!!」
「大旦那様???」
****************
雁助は炭鉱経営については
反対勢力である。
それを知ってサトシのこともあった
のか正吉はよくよくの考えで
雁助を九州にやらした。
この英断は、その後どうつづくのか
興味がわく。
新次郎では取り組めなかったサトシと
の、話し合いを雁助はできると
いうのだろうか。
新次郎はサトシかもしれないと
思っても声さえかけなかった。
なにかわかっていても知らない
顔をした。
この行動が落盤事故につながった
としたら・・・
新次郎にとって
悔やんでも悔やみ紅ことだった。
あの男はこういう男だと
あさに言っていたら
あさの得体のしれない
胸騒ぎはなかったかも
しれない。
