九転び十起き4
いよいよ。あさのお産がはじまった。
「おきばりやす。」
「さぁ!」
と、掛け声をかけられるが
あさのお産は
難産だった。
あまりにもつらい苦しみに
悲鳴を上げるあさだった。
その声は心配してうろうろする
新次郎にも届く。
正吉もいまかいまかと
待つ。
「さぁ~~」
「おきばりやす」

おきばりやす!!

あさは、渾身の力を込めた。

新次郎のもとに
赤ん坊の声がした。
「うまれた!!」

あわててお産の部屋にいくと
「殿方はもう少しお待ちください」と
障子を閉められる。

やがて産湯をつかい
きれいになった赤ん坊が
あさの胸にだかれた。

「やっと会えましたな。」

あさは、赤ん坊をみつめた。

赤ん坊は女の子だった。

正吉もよのも
大喜びであさのもとに行き
赤ん坊をだいて
喜ぶ。
新次郎はその後に続いたが
自分が赤ん坊をまぢかで
見ることができず
いらいらする。
正吉は
大喜びで
赤ん坊の誕生を
ほめたたえる。


「先生、お産婆さん
おおきに・・」

あさは医者と産婆に礼を言った。
正吉は
「男の子だと思っていた
ので女の子の
名前をこれから考えなあかん」と
いう。
よのは「かわいらしいわ~~」
とすっかりおばあちゃんだ。
「おでこと鼻筋はお父ちゃん
ににてまへんか?」
と栄三郎

「女の子がわたしなんかに
似たらあかんがな・・」
と正吉。
大笑いとなる。

この目出度いことに店の者も
やってきて
「お祝いを申したいという。
弥七は、赤ん坊を抱こうと
して
手に唾をつけて勢いをつけようと
したので
新次郎は、弥七を注意した。

「おまえなにしてますのや?」

「きれいにしようとしまして」

「何がきれいや、
みんな、喜んでくれておおきに。
しばらくしたらまたそちらへ
いきますからな。」
そういって新次郎は障子を閉めた。

栄三郎は、「自分がみんなを呼んだからと
堪忍というが。

「ええんや」と言って新次郎は

」「お父ちゃん!!!」


大きな声で言った。

そして正座をして
正吉を見すえていった。

「頼みますから・・
ちょっとでええさかい
あさと
あかんぼうと

三人にして

おくれやす」


「それがいいですね」と
医者。
あ「ちらでお茶でもいただきます」
といって産婆と一緒に
でていった。

よのも
出て行った。

やっとのことで
新次郎は
わがこを
抱くことができた。

「ちいさいなぁ~~~~~」

正吉もよのも
わらいながら
出て行った。

「新次郎さま
おあさ様
本当に
おめでとうございました。
ほな・・・」

うめが出て行った。


新次郎は赤ん坊に
「かんにんな~~
ちっとも
お猿さんではないです。
きれいな子や・・・

これがお父ちゃんで
これがおかあちゃんやで・・」

と新次郎は言った。

「やっと会えましたな。
ようでてきてくれましたな」と
あさは新次郎に抱かれた
赤ん坊にまたいった。

「あさ・・・」新次郎はあさの顔を見た。

「おおきに・・・・」

あさは

うなづいた。

そして赤ん坊を見た。

すると

外で
雨の音がした。

新次郎がうれしいときには
雨が降るというが・・・

それから正吉は
女の子の名前を考えて
ようやく

千代と
命名した。

千年もその先も栄えますように
との願いを込めて。

「千代・・・あんたが千代ちゃんや
おじいちゃんが、つけてくれましたんで。」
とあさ。
「ずっとみててもあきへんな。」
と正吉は
よろこぶ。

そしてお乳が出るようにとの
お守りをあさにわたした。

新次郎は
「わても出たらええのに」という。
正吉は
「わてはもう出ません」

という。
「そうだすか?」
「へ?」
そういってみんなで笑った。

部屋に帰る正吉に新次郎は廊下で
呼び止めた。

「本当は男の子が欲しかったのでは
無いのか」と聞く。

「そんなことはない」と正吉は言う。
よのも女の子でよかったという。

男の子だったらどうしても
そのこの能力でお店が決まってしまうけど
女の子だったら
よくできた婿殿をもらえるし、そのほうが
店も繁盛するという。

「何も心配することはあらへん」と
正吉は新次郎に言う。

新次郎は
「ええ名前を付けてくれておおきにと
いった。

そのご
しばらく
あさは

千代のせわと
体調の回復に
はげみ

そして

また以前のようによく働く
ようになった。

新次郎は
ぴたりと
遊びに行くこともなくなり
育児にはげむようになった。

「あの育児の力を
家業に注いでくれたら」と栄三郎は
いう。

そのご、
あさは
炭鉱へ行く予定を立てた。

栄三郎も雁助も
驚いたが
亀助からの手紙で
何事もないというので
行く必要があるのかと聞く。

「ちょっとうまいこと行きすぎ
のようで・・・
いや、うまいこと言っているから
ひきしめないと」という。


栄三郎は
雁助に相談した。
あさは、どうやら
炭鉱を大きくして
その資金で
加野屋をゆくゆくは銀行に
しようとしているのではという。
栄三郎は乗り気ではない。しかし
今の自分はあさに勝てないという。

八代目は栄三郎なので
当主の意見が通らないわけが
無いと雁助は言った。

栄三郎は雁助にお礼を言った。

正吉は
千代を
じっとみていた。

そのころ

九州の炭鉱では・・・

朝早く
治郎作が穴から数人の男がでてくるのを
みた。

が、治郎作は酔っぱらっていて
何事なのかわからない。

そして
火をつけて
アナに入る。

アナの中でかっている
鳥がなにか騒々しく
暴れている。
不思議に思う治郎作。
すると
アナの向こうから
大きな火玉が
治郎作を
襲ってきた。
そして爆発した。
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お産は大変です。

でもあさの家は
お金持ちで
産婆さんも
医者もお抱えができて
安心だと思いました。

それでも、産後はしっかり体を
休めないと
不調がおこりやすくなるとのことで
わたしなぞ
寝たり起きたりしていましたが。
あさは、育児と
養生をしたあとは
すぐに
仕事に取り掛かりましたね。

そして炭鉱へ行くとか。

仕事人間です。

そんなあさと
栄三郎は銀行のことで
考えがちがっています。
このことは
今後どう
影響するのでしょうか?

新次郎は
イケメン変じて
育くメンとなりました。

なんと
子供の力はすごいものですね。