お姉ちゃんの旅だち5
はつは、加野屋を出発する前に
新次郎にかねてより疑問に
思っていたことを聞いた。
「新次郎さんは
なんで
あさをえらばはったのですか?
山王寺屋はうちをえらび
あなた様はあさを選んだ。
それが、さだめやと思っていたけど
なにか、のどの奥に
小骨が刺さったような感じが抜けない。
なんでそのときあなた様は
うちやのうて
あさを選ばはったんですか?」
「なんでやったんやろな?」
新次郎は
話し始めた。
小さいときに楽だという話を聞いた。
背中に大きなこぶが
二つもついているという。
あさは、はつが来ないので見に行ってくると
いって家の中にはいった。
新次郎はラクダに会いたいとおもったという。
そんなとき父と京都に行くことに
なった。
そのとき
小さな子供が
頭に帰るを乗せて
走り回っていた。
それがあさだった。
この子と一緒なら
きっと楽しいだろうなと
思ったという。
「理由は、それだけだ・・・」
「ラクダとか
ペンギンとか
みんな妹を動物に例える」と
はつはいう。
新次郎は「気が楽というより
いまは、そのうちにあさに
置いていかれるような気がする」と
いった。
「わてはなにもできないぼんぼん
だから・・・」
新次郎は立ち上がって障子をあけた。
はつは、「あさが今みたいにしていられる
のは、旦那様が新次郎さまだった
からですね。
他の男の人だったら
あさは人が変わるか
嫌になって今井の家に帰ったか
どちらかですね。
あさは新次郎さまだから・・
あれだけできたのだ」と
はつはいう。
「だから、これからも
妹をよろしくおねがいします。
洋行帰りの人に負けたら
あきまへん。」
あさは、さっきからその話を聞いて
いた。
新次郎はふすまを開けるとあさがいた。
新次郎はびっくりした。
はつは、「いいから
いいから」
といった。
その夜、はつには大阪最後の夜と
なった。
ふかふかのふとんで
藍の介はぐっすりと寝ていた。
こうしていると子供のころを思い出す
とふたりは、語り合った。
あのころ・・・
「許嫁さんって
コーンなカオだったりして」と
小さなあさはおかしな顔をしてはつを
笑わせた。
大阪から帰ってから
はつは、夜中に眠れず
「大阪行きたくないな」と
いってあさと泣いたこともあった。
「あの時あんなに泣いていたあんたが
こんな立派な女商人になるとは。」
はつがいう。
「お姉ちゃんも立派な
おかあちゃんになった」とあさ。
大阪からはつがいなくなるのが
あさには悲しい。
そんな話をするとはつは
「自分はずっと昔から
あさに焼きもちを焼いていた」と
いった。
あさは、びっくりした。
自分が姉にやきもちではなく
姉が自分にやりもちなんて
信じられないという。
はつは、
「あさが祖父にかわいがってもらったり
許嫁さんから恋文をもらったり
いまかて初の代わりにこの家に嫁いで
こんないいお布団で寝てたり。。。
ああ・・
言うてしもた・・」とはつは笑う。
「びっくりぽんやお姉ちゃんが
やきもちなんか」
はつと比べて何もできないと
よく怒られていたので
びっくりしたという。
はつは「人が生きるという事は
少しだけわかったような気がする」と
いった。
「そうだすか
うちがそないなことわかるように
なるのは
まだまだ先のことになりそうだす。
うちらはもう子供やあらへんのだすな・・」
とあさ。
「そうや、これからがうちらの
本当の勝負だす。
ええか?
お互い、精一杯
お家を守ろうな?
お互い精一杯
しあわせになろうな?」
「負けへんで」とあさはいう。
「そのいきや、うちかて
まけへん。」
でも悲しくなったあさは
はつに抱き着いて
泣いた。
翌朝のことだった。
朝早く聞くと栄達、惣兵衛が
迎えに来た。
人けのないうちに出発しましょと
菊が言う。
藍の介は
「あさちゃん、またね」といった。
「あさ・・
またね」
とはつ。
「おねえちゃんも。」
「ほないこか?」と
惣兵衛。
うめもふゆもあさも
はつ一家を見送った。
あさがはつと再開するのは
まだ、先のことになる。
時は流れて
加野炭鉱でのこと。
あさは、相変わらず
まっくろになって
おなごしたちと
働いていた。
「大阪にも岡蒸気が走るように
なったんやで」とあさがいう。
九州のおなごたちは
おか蒸気をみたことがない。
あさは梅田に見に行ったことから
おか蒸気のイラストのパンフを見せた。
おなごしたちは
感性を上げた。
「ぼーーーってものすごい音がする
あんな大きな乗り物、石炭が動かして
いるんやで。。
みんなにはよ、見せてあげたいわ。」
カズは、あさのその様子が自分たちの
母親のようだとよろこんだ。
優しいお顔をするようになったと
いった。
そんな時サトシが
「次のが行くぞ」と大きな声で
あさたちにいった。
あさは、立ち上がって
サトシのほうへ石炭をとりにいこう
として
苦しくなって
倒れた。
「奥さん!!」
「大丈夫だす。」
「いけんちゃ。
戻りましょ」
カズにいわれて、付き添われて
あるくあさ。
「いくら寝ても体がもとにもどらない」
とあさはいう。
「おくさん、あんたもしかして・・」
カズはあさにいった。
あさは、驚いた。
****************
やっぱりね。焼きもちのこと。
いくら良くできた姉でも
あさの型破りな個性と
人を魅了する力には
いくら努力してもかなわない
と思ったはずだ。
自分は普通によくできた娘を
やってきた。
でも、そんな賢い娘は
どこにでもいそうである。
返って
あさのような型破りな娘のほうが
今の時代、大事にされやすいと
思ったのだろうか。
時代は女性の価値観さえ変えていく。
ああ、姉と妹って
いいなと思いました。
こんないい姉がいたら
こんなかわいい、力のある
妹がいたらと
思います。
はつは、加野屋を出発する前に
新次郎にかねてより疑問に
思っていたことを聞いた。
「新次郎さんは
なんで
あさをえらばはったのですか?
山王寺屋はうちをえらび
あなた様はあさを選んだ。
それが、さだめやと思っていたけど
なにか、のどの奥に
小骨が刺さったような感じが抜けない。
なんでそのときあなた様は
うちやのうて
あさを選ばはったんですか?」
「なんでやったんやろな?」
新次郎は
話し始めた。
小さいときに楽だという話を聞いた。
背中に大きなこぶが
二つもついているという。
あさは、はつが来ないので見に行ってくると
いって家の中にはいった。
新次郎はラクダに会いたいとおもったという。
そんなとき父と京都に行くことに
なった。
そのとき
小さな子供が
頭に帰るを乗せて
走り回っていた。
それがあさだった。
この子と一緒なら
きっと楽しいだろうなと
思ったという。
「理由は、それだけだ・・・」
「ラクダとか
ペンギンとか
みんな妹を動物に例える」と
はつはいう。
新次郎は「気が楽というより
いまは、そのうちにあさに
置いていかれるような気がする」と
いった。
「わてはなにもできないぼんぼん
だから・・・」
新次郎は立ち上がって障子をあけた。
はつは、「あさが今みたいにしていられる
のは、旦那様が新次郎さまだった
からですね。
他の男の人だったら
あさは人が変わるか
嫌になって今井の家に帰ったか
どちらかですね。
あさは新次郎さまだから・・
あれだけできたのだ」と
はつはいう。
「だから、これからも
妹をよろしくおねがいします。
洋行帰りの人に負けたら
あきまへん。」
あさは、さっきからその話を聞いて
いた。
新次郎はふすまを開けるとあさがいた。
新次郎はびっくりした。
はつは、「いいから
いいから」
といった。
その夜、はつには大阪最後の夜と
なった。
ふかふかのふとんで
藍の介はぐっすりと寝ていた。
こうしていると子供のころを思い出す
とふたりは、語り合った。
あのころ・・・
「許嫁さんって
コーンなカオだったりして」と
小さなあさはおかしな顔をしてはつを
笑わせた。
大阪から帰ってから
はつは、夜中に眠れず
「大阪行きたくないな」と
いってあさと泣いたこともあった。
「あの時あんなに泣いていたあんたが
こんな立派な女商人になるとは。」
はつがいう。
「お姉ちゃんも立派な
おかあちゃんになった」とあさ。
大阪からはつがいなくなるのが
あさには悲しい。
そんな話をするとはつは
「自分はずっと昔から
あさに焼きもちを焼いていた」と
いった。
あさは、びっくりした。
自分が姉にやきもちではなく
姉が自分にやりもちなんて
信じられないという。
はつは、
「あさが祖父にかわいがってもらったり
許嫁さんから恋文をもらったり
いまかて初の代わりにこの家に嫁いで
こんないいお布団で寝てたり。。。
ああ・・
言うてしもた・・」とはつは笑う。
「びっくりぽんやお姉ちゃんが
やきもちなんか」
はつと比べて何もできないと
よく怒られていたので
びっくりしたという。
はつは「人が生きるという事は
少しだけわかったような気がする」と
いった。
「そうだすか
うちがそないなことわかるように
なるのは
まだまだ先のことになりそうだす。
うちらはもう子供やあらへんのだすな・・」
とあさ。
「そうや、これからがうちらの
本当の勝負だす。
ええか?
お互い、精一杯
お家を守ろうな?
お互い精一杯
しあわせになろうな?」
「負けへんで」とあさはいう。
「そのいきや、うちかて
まけへん。」
でも悲しくなったあさは
はつに抱き着いて
泣いた。
翌朝のことだった。
朝早く聞くと栄達、惣兵衛が
迎えに来た。
人けのないうちに出発しましょと
菊が言う。
藍の介は
「あさちゃん、またね」といった。
「あさ・・
またね」
とはつ。
「おねえちゃんも。」
「ほないこか?」と
惣兵衛。
うめもふゆもあさも
はつ一家を見送った。
あさがはつと再開するのは
まだ、先のことになる。
時は流れて
加野炭鉱でのこと。
あさは、相変わらず
まっくろになって
おなごしたちと
働いていた。
「大阪にも岡蒸気が走るように
なったんやで」とあさがいう。
九州のおなごたちは
おか蒸気をみたことがない。
あさは梅田に見に行ったことから
おか蒸気のイラストのパンフを見せた。
おなごしたちは
感性を上げた。
「ぼーーーってものすごい音がする
あんな大きな乗り物、石炭が動かして
いるんやで。。
みんなにはよ、見せてあげたいわ。」
カズは、あさのその様子が自分たちの
母親のようだとよろこんだ。
優しいお顔をするようになったと
いった。
そんな時サトシが
「次のが行くぞ」と大きな声で
あさたちにいった。
あさは、立ち上がって
サトシのほうへ石炭をとりにいこう
として
苦しくなって
倒れた。
「奥さん!!」
「大丈夫だす。」
「いけんちゃ。
戻りましょ」
カズにいわれて、付き添われて
あるくあさ。
「いくら寝ても体がもとにもどらない」
とあさはいう。
「おくさん、あんたもしかして・・」
カズはあさにいった。
あさは、驚いた。
****************
やっぱりね。焼きもちのこと。
いくら良くできた姉でも
あさの型破りな個性と
人を魅了する力には
いくら努力してもかなわない
と思ったはずだ。
自分は普通によくできた娘を
やってきた。
でも、そんな賢い娘は
どこにでもいそうである。
返って
あさのような型破りな娘のほうが
今の時代、大事にされやすいと
思ったのだろうか。
時代は女性の価値観さえ変えていく。
ああ、姉と妹って
いいなと思いました。
こんないい姉がいたら
こんなかわいい、力のある
妹がいたらと
思います。
