お姉ちゃんの旅立ち4
和歌山へ旅立つはつは
加野屋の好意であさのところへ
泊まりに来た。
藍の介と一緒である。

はつは新次郎に
「このたびは御好意に甘えまして」と
挨拶をすると
新次郎は
「固いこと言わないで
自分の家やと思ってのんびりして
おくれやす」と
いった。

新次郎は藍の介がすきで
一緒に遊んだ。

「最後にわてをお父ちゃんと呼んでほしい」と
無理なことを言う。

藍の介が黙っていると
新次郎は「それでええ」といって
もうすぐ兄貴になるので
はつを守ってあげてほしいと
いった。

縁側であそぶ新次郎と藍の介をこちら側
から見ているはつとあさ。

そこへ亀助がやってきて新次郎に「えらいこと
です、お三味線の。。」といったところで
新次郎が「しっ」といって
口止めをした。

あさは、ぎくりとして
三味線の美和さんのことかなと
思ったようだ。

新次郎はあわてて、亀助と飛び出して
いった。


「なんだすのや、あれ・・・」
あさは呆れた。

「気を聞かせているのでは」と
はつがいう。

あさは、新次郎がいかに三味線に夢中
かということをはつにいう。
「おそらくお師匠さんが
来たのでは」といった。
「お師匠さんはつやっぽいひとなので
きっと気持ちがあるに違いない」と
いう。
はつは、「焼きもちやね。」
といった。

「やきもちだす。」

美和が新次郎のそばにいると思った
だけで胸が痛くなるし
おなごとして自分が劣っていると
思うというが。
「お披露目式の時
あさはきれいだったから大丈夫」と
はつはいった。
「そんなこと新次郎に言われたことがない」と
あさはいう。

そのころ美和は
五代の所へ現れた。
山屋は驚いた。

「今日はお暇を作ってくれて
ほんま、おおきに。」
と五代に挨拶をする美和だった。

「加野屋の新次郎さんは御一緒では
ないのですか?」と五代がいうと
急用とかで自分が一人でやってきた
と美和が言う。
話しというのは
大久保との話の時に
五代が大阪の商人が気さくに集まれる場所を作り
たいといっていた話が
気になったという。

五代は、「そのような場があればいいのですが」
というと

美和は、「自分に造ることはできないのか」と
聞く。

「自分も、誰かさんのように
ファーストピングインと
言われたい」といった。

さて、五代はどう思ったのだろうか。

そのペンギンの話だが
五代がくれたペンギンの
絵をはつに見せたあさ。

これにあさが似ていると五代が言ったと
はつに話した。
五代のことをどう思っているのかと
はつがきくと

「最初は敵だと思っていた」という。
「山王寺屋さんがつぶれたのもあの人が
新政府に入って
そんな政治をしたからだと思っていた。
今は憧れだ。
あんな物知りで広い料簡で大きな商売を
していて・・・あさは自分もああなりたい」と
いった。

「そういう憧れか・・・」とはつは
笑った。

(どういう憧れと思ったの?
不道徳な憧れ??)

はつは、「五代さまは男前だ」というと
あさは、「大阪の若い女性に人気がある」と
いった。

そんな話をとめどもなく
どんどんする二人を
うめとふゆは
呆れて見ていた。

こうしていろいろあったけど
二人ともひと山越えたことを
うめはよろこび、梨江に
報告しなければという。

そしておやつの時間となった。
それからも、父や弟の断髪の
はなし、みかんやダイコンの
話しなど、途切れることがなかった
という。

一方新次郎と亀助は・・
大阪の街を走っていた。

亀助は

「夫婦そろって人使いの荒いことだ」と
愚痴りながら走っていた。

(お気の毒に。
中間管理職は苦労します)


加野屋ではあさのそろばんで藍の介は
遊んでいた。

赤いそろばんである。

藍の介は、ぱちぱちをはじいていた。

「ひょっとしてこの子
お商売が好きなのかな?
山王寺屋と今井の子だから
そうかもね」と
あさがいう。

あさは、座敷の壁に立てかけている
お琴をさしてはつに
引いてほしいといった。

「それはできない」とはつがいう。
手はあれはてて
百姓の手になっている。
こんな手になっているから
お琴など弾けないといった。

そこへ、新次郎が走って
入って来た。
大きな荷物を持っている。
「何とか、まにおうたみたいやな・・・
風呂敷をほどくと
はつのお琴だった。」

「なんで?」

これは惣兵衛さんの頼みだった。
惣兵衛が
大阪に心残りがあるというのは
はつのお琴がどこに行ったのか
分からなくなったのだった。
売りたくなかったが、売ってしまった。

もし借金のかたに誰かが
もっていったなら・・
そのうち売り出すから、それを
買い上げてほしいといった。
惣兵衛ははつのお琴の音が
好きだったという。

新次郎は自分の人間関係を総動員して
はつのお琴を探した。
すると町はずれの三味線やが
どうやらそれらしきものが売りに出されたと
言う情報を持ってきてくれた
のだった。
さっきの亀助が三味線のとあわてていった
のは、このことだった。

はつは琴にさわった。

「もういっぺんこの琴にあえるなんて。

新次郎さんおおきに
番頭はんも、おおきに・・」

「おおきになんてええ。
二人のお琴を聞きたい。」
新次郎はそういった。

ふたりはこうして
久しぶりにお琴を弾いた。

加野屋の店の外で
それを

じっと

惣兵衛は

聞いていた・・・。


引き終わってしみじみと
ふたりは思った。

とうとう
はつは大阪最後の夜を迎えようと
していた。

あさは、藍の介とそとでシャボン玉の
遊びをした。

はつは、新次郎にお世話になってしもうてと
お礼を言った。

新次郎は琴を風呂敷で包みながら
「このお琴は和歌山に持って行って
下さい」という。

はつは、もらうことはできないと
断った。

新次郎ははつの手を握って

「後生だす・・
もっていっておくなはれ」

といった。

はつは、
「へぇ・・」と
納得した。
「おおきに。」
新次郎は
「藍の介が待ってますよってぼちぼち」
と立ち上がった。

はつは新次郎に聞きたいと
思っていたことがあるといった。

「なんだすか?」

はつは
「なぜ新次郎さまは
あさを選んだのか」と・・・

聞いたのだ。

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美和さんはなぜファーストペンギンに
なりたいと思っているのか・・
五代が好きなのかな?
五代は、そういう目で見ていないと
思うけど。

はつは、五代の気持ちのなかに
あさがいることに気が付いている。
それを探ろうとしたが
あさは、憧れといって
商売をする上で師匠のようなものという
認識をしているので
あるいみ・・
ほっとしたのか
がっかりしたのか・・・

それが
最後の質問につながっているのではと
思った。

あさは、新次郎一筋であるが
はつは、新次郎がひととき
ターゲットにあったのではと思う。
惣兵衛が和歌山へ行って留守の時
新次郎もあさが九州へ行って留守の時
ふたりでさみしさを共有した部分で
気持ちがつながったのではと
思うが・・
はつは、あほらしいと
そんな自分を叱咤しているので。それは
過去のことだった

が・・・

やはり

なぜ・・
あさを選んだのか

気になる

わけですね・・・。