京都、最後の贈り物5
いよいよ東京へ行く梨江が
加野屋に挨拶に来た。
挨拶をする相手はよのだった。
梨江はあさが加野屋の嫁として
収まっているわけではないのを
よく知っていたので
よのに、「娘のこと
申し訳ございません」という。
「嫁いで10年になるというのに、
なにもできなくて」と
梨江が言うとよのは
「いろいろ教えたいことが
あるけど月の半分は、あささんは
九州なので」とよのがいう。
いま年老いた二人であるが
お嫁に来たときには
姑にさんざん鍛えられた。
自分が年いってからは
ああはなりたくないと
よのは思っていたという。
しかし、姑の気持ちが
分かるようになってきたと言って
笑った。
陰で聞いていたあさは
笑ってられないと姑の不気味さに
焦った。
梨江はよのに、すばらしく
きれいな着物をお土産に
もってきた。
梨江は「これからも
娘をよろしく」といった。
座敷をかえて、あさとうめと
梨江は三人で話をした。
梨江は「まさか月の半分は
留守にしているとは」、と
驚いた。
「それだったら離縁されても
仕方ない」という。
あさは、「すんまへん・・
東京へ行かはる最後まで心配させて
しまった」と謝った。
梨江はある話をした。
あさが小さいとき
おなごは何も知れないほうがいいと
いった。
商売のことも
世間のことも
なにもしらないで、お嫁にいったら
それでいいといった。
が、「この期に及んで
何も知らないでお嫁に行った
はつの家がつぶれてしまった。
お商売に首を突っ込んだあんたは
こうして今でもお家を守っている。。
これはどういう事なんだろう。」
やはり。
梨江は自分の考えは間違っていたのかと
いう。
「はつは何も悪くない。
悪いのはうちなんや」と梨江は
いう。
「そうだすやろか?
うちも間違っていると思う。
いくらお家のためと頑張っても
殿方はお家にいる女性が好き
なんだすやろ?」とあさ。
梨江は笑った。
あさは女子としての自信が
ないといった。
梨江は「これからの女性はあんたのように
胸を張って堂々と
生きて行く時代だという。
でも、おなごのしなやかさを忘れたら
あきまへんで。」
そういった。
そして、「これをあんたからはつに渡して
ほしい」といって
書類をあさにわたした。
それは和歌山にある今井の土地の
証文である。
長いこと使ってない土地で東京へ
いくならもっと使うことはないと
いう。
だから、はつにご家族で使って
欲しいという。
これは両親からの
最後の贈り物だという。
もう、帰る時間となった。
梨江は店の外に立って
うめに「あのあさを守って
くれておおきに。あんたがいる
おかげでどれほどの力に
なっているか・・
これからもよろしく」という。
うめは、「おなごしの間でも
おあさ様は、人気があって
大丈夫です」と
いった。
梨江は「さすがに、相撲は取ってない
やろな?」と聞く。
うめは「へぇ、もちろんだす」と
答えた。
店の中から窓のサンをふいていた
亀助は
はたと、炭鉱であさが
宮部を相手に
相撲を取ったことを
思い出した。
亀助は
「ま、ええか・・・」と
黙っておくことに決めた。
そこへ新次郎が帰ってきた。
「お母さん、着てはったんですか?」
という。
よのは、梨江に次はいつ会えるか
わからないのでといって
自分が作った張子の人形を
次から次に出して
これも、差し上げようという。
梨江は店の外であった新次郎に
「あさがご迷惑をおかけして」
といって頭を下げた。
新次郎は「あさがよく働くのは
自分がふがいないからですよ」と
いう。
「あさの顔を見ていたらまあええかと
思います」と
のんきな話をする。
梨江は「そういえば
京都でいやいやお裁縫をしているとき
と比べたら
いまのほうが、いい顔をしている」と
いった。
そして、新次郎に「これからも
あさのたずなをしっかり
持っていてほしい」といった。
そこへ、はつが、梨江にさきほどの
証文を出して
「これは受け取れない」という。
「家がつぶれたのは山王寺屋が自ら招いた
ことなので、山王時屋はいじでも今井屋から
施しを受けることはできない」と
いった。
「施しではない、そんなつもりは」と
梨江は言うが
はつはがんとして
聞かない。
あさは、
ふと、「バンクや!!!」
と
思い出した。
そしてはつにいった。
忠興がこれから作ろうとするバンク
の話をした。
「これは、志のある方に信用して
お貸しするというものです。
これで、信用にこたえて
大成功したら、この中から
すこしづつ、返して行ったら
いいのですよ」と
あさは、はつにバンクの内容を話した。
もらうものではなく
かしてもらうものだと
いう事を
説いて言ったのだった。
梨江は「二人とも若いから
なんぼでも新しい人生を
いきることができるのだから。
これからそれをもとにして
どんな人生を歩いていくか
楽しみにしている」という。
「おねがいだす、さいごの
お願いだす」と
梨江は言う。
はつは、バンクの話や
梨江の話に
「おおきに」、と
いって
「これはお借りします」
と梨江に言った。
「おおきに、ホンマおおきに
おかあはん・・・」
そしてある日のことだった。
あさは、正吉にお願いがあると
いって、正吉の部屋に入って
いった。
「そろそろ来るころだと
おもっていましたんや」
と正吉は
あさを見て行った。
「え??」
あさは驚いた。
*******************
はつにも先が明るくなり始めて
います。
はつへの思いやりを見たようです。
はつは、意地になっても
今井屋の施しは受けないと
決めています。
しかし、親としてはそれを
見過ごすことは心苦しいもの
なのでしょう。
はつがバンクの考え方にのって
くれて、証文を受け取ってくれて
良かったと思います。
あさは、正吉に何をお願いする
のでしょうか?
炭鉱にはサトシという気になる
男がいます。
新次郎には、よのから妾を
押し付けられることも
考えられそうです。
そもそも、新次郎がしっかり
働いたら、あさが家を空けることは
無かったのですよね。
女性が働くことは
家庭に大きな負担がかかります。
この封建的な時代に
女性のキャリアを保証する男など
いるわけがないです。
さて・・
ふゆの思惑、サトシの
影・・あさの前途は
大変なうえに
びっくらぽんだす。
いよいよ東京へ行く梨江が
加野屋に挨拶に来た。
挨拶をする相手はよのだった。
梨江はあさが加野屋の嫁として
収まっているわけではないのを
よく知っていたので
よのに、「娘のこと
申し訳ございません」という。
「嫁いで10年になるというのに、
なにもできなくて」と
梨江が言うとよのは
「いろいろ教えたいことが
あるけど月の半分は、あささんは
九州なので」とよのがいう。
いま年老いた二人であるが
お嫁に来たときには
姑にさんざん鍛えられた。
自分が年いってからは
ああはなりたくないと
よのは思っていたという。
しかし、姑の気持ちが
分かるようになってきたと言って
笑った。
陰で聞いていたあさは
笑ってられないと姑の不気味さに
焦った。
梨江はよのに、すばらしく
きれいな着物をお土産に
もってきた。
梨江は「これからも
娘をよろしく」といった。
座敷をかえて、あさとうめと
梨江は三人で話をした。
梨江は「まさか月の半分は
留守にしているとは」、と
驚いた。
「それだったら離縁されても
仕方ない」という。
あさは、「すんまへん・・
東京へ行かはる最後まで心配させて
しまった」と謝った。
梨江はある話をした。
あさが小さいとき
おなごは何も知れないほうがいいと
いった。
商売のことも
世間のことも
なにもしらないで、お嫁にいったら
それでいいといった。
が、「この期に及んで
何も知らないでお嫁に行った
はつの家がつぶれてしまった。
お商売に首を突っ込んだあんたは
こうして今でもお家を守っている。。
これはどういう事なんだろう。」
やはり。
梨江は自分の考えは間違っていたのかと
いう。
「はつは何も悪くない。
悪いのはうちなんや」と梨江は
いう。
「そうだすやろか?
うちも間違っていると思う。
いくらお家のためと頑張っても
殿方はお家にいる女性が好き
なんだすやろ?」とあさ。
梨江は笑った。
あさは女子としての自信が
ないといった。
梨江は「これからの女性はあんたのように
胸を張って堂々と
生きて行く時代だという。
でも、おなごのしなやかさを忘れたら
あきまへんで。」
そういった。
そして、「これをあんたからはつに渡して
ほしい」といって
書類をあさにわたした。
それは和歌山にある今井の土地の
証文である。
長いこと使ってない土地で東京へ
いくならもっと使うことはないと
いう。
だから、はつにご家族で使って
欲しいという。
これは両親からの
最後の贈り物だという。
もう、帰る時間となった。
梨江は店の外に立って
うめに「あのあさを守って
くれておおきに。あんたがいる
おかげでどれほどの力に
なっているか・・
これからもよろしく」という。
うめは、「おなごしの間でも
おあさ様は、人気があって
大丈夫です」と
いった。
梨江は「さすがに、相撲は取ってない
やろな?」と聞く。
うめは「へぇ、もちろんだす」と
答えた。
店の中から窓のサンをふいていた
亀助は
はたと、炭鉱であさが
宮部を相手に
相撲を取ったことを
思い出した。
亀助は
「ま、ええか・・・」と
黙っておくことに決めた。
そこへ新次郎が帰ってきた。
「お母さん、着てはったんですか?」
という。
よのは、梨江に次はいつ会えるか
わからないのでといって
自分が作った張子の人形を
次から次に出して
これも、差し上げようという。
梨江は店の外であった新次郎に
「あさがご迷惑をおかけして」
といって頭を下げた。
新次郎は「あさがよく働くのは
自分がふがいないからですよ」と
いう。
「あさの顔を見ていたらまあええかと
思います」と
のんきな話をする。
梨江は「そういえば
京都でいやいやお裁縫をしているとき
と比べたら
いまのほうが、いい顔をしている」と
いった。
そして、新次郎に「これからも
あさのたずなをしっかり
持っていてほしい」といった。
そこへ、はつが、梨江にさきほどの
証文を出して
「これは受け取れない」という。
「家がつぶれたのは山王寺屋が自ら招いた
ことなので、山王時屋はいじでも今井屋から
施しを受けることはできない」と
いった。
「施しではない、そんなつもりは」と
梨江は言うが
はつはがんとして
聞かない。
あさは、
ふと、「バンクや!!!」
と
思い出した。
そしてはつにいった。
忠興がこれから作ろうとするバンク
の話をした。
「これは、志のある方に信用して
お貸しするというものです。
これで、信用にこたえて
大成功したら、この中から
すこしづつ、返して行ったら
いいのですよ」と
あさは、はつにバンクの内容を話した。
もらうものではなく
かしてもらうものだと
いう事を
説いて言ったのだった。
梨江は「二人とも若いから
なんぼでも新しい人生を
いきることができるのだから。
これからそれをもとにして
どんな人生を歩いていくか
楽しみにしている」という。
「おねがいだす、さいごの
お願いだす」と
梨江は言う。
はつは、バンクの話や
梨江の話に
「おおきに」、と
いって
「これはお借りします」
と梨江に言った。
「おおきに、ホンマおおきに
おかあはん・・・」
そしてある日のことだった。
あさは、正吉にお願いがあると
いって、正吉の部屋に入って
いった。
「そろそろ来るころだと
おもっていましたんや」
と正吉は
あさを見て行った。
「え??」
あさは驚いた。
*******************
はつにも先が明るくなり始めて
います。
はつへの思いやりを見たようです。
はつは、意地になっても
今井屋の施しは受けないと
決めています。
しかし、親としてはそれを
見過ごすことは心苦しいもの
なのでしょう。
はつがバンクの考え方にのって
くれて、証文を受け取ってくれて
良かったと思います。
あさは、正吉に何をお願いする
のでしょうか?
炭鉱にはサトシという気になる
男がいます。
新次郎には、よのから妾を
押し付けられることも
考えられそうです。
そもそも、新次郎がしっかり
働いたら、あさが家を空けることは
無かったのですよね。
女性が働くことは
家庭に大きな負担がかかります。
この封建的な時代に
女性のキャリアを保証する男など
いるわけがないです。
さて・・
ふゆの思惑、サトシの
影・・あさの前途は
大変なうえに
びっくらぽんだす。
