旦那様の秘密4
伊作がおこってあさに
とびかかってきた。
「せがらしか、この転婆
女郎めが。」
「なにしますねん」とあさは
押し倒された。
「若奥さん」
と亀助がさけぶ。
「いいかげんやめんか」
と治郎作が叫んだ。
そのとき
あさのふところから
ピストルがおちて
暴発した。
その音にあわてて男たちは
ひきさがっていった。
あさはピストルを見た。
あのとき
五代が
「おまもりです」といって
くれたものだった。
「あんたはこれからかなり危険な
場所にいくということだ」
「おまもりか・・・確かに。
こんな時に手にするとは
おもわなかった・・・」
あさはつぶやく。
そして立ち上がって
男たちに向かっていった。
「あんたらが、どれほど抵抗しても
うちは大阪に帰りまへん。
うちはこの山を成功させるという
不退転の気持ちで大阪から
きたんだす。
この決心をわかってもらい
石炭を掘るというまで
決して大阪に帰りまへん
よって。」
あさは治郎作をにらみつけた。
男たちは飯場にもどった。
「ピストルをもっているとは
なんというおなごや。」
「あんなおなごのために働けんばい」
「そうだ、そうだ」
「ばってん、もし逆らって
打たれたらどげんするか?」
「それだけ、覚悟をしているという
ことや、さて、わしらは
どげんすると?」と
治郎作がいった。
こちらはあさたちだった。
亀助は「ピストルひとつでこないに
奴らが変わるとは、驚いた。」
「びっくりぽんだす。
だから、戦をする人が武器を
欲しがるってことなのね・・」
あさが、感心した。
そして、新次郎に手紙を書こうとした。
そこへカズたちが
やってきた。
そして、あさが石炭を掘らないものを
ピストルで殺すというていると
いうが、どうか、殺さないでください
と、それぞれが懇願する。
あさは、そんなこと言ったことも
ないので、びっくりした。
そのころ大阪の寺町では
惣兵衛がいかさまの博打をうったと
男たちから追いかけられていた。
「いかさまは、おまえたちだ」と
いいながら
逃げる。
途中でころんで、顔が泥だらけに
なった。
やけくそで笑う惣兵衛。
そこへ、はつが
現れて、
「何でそないに自分を
痛めつけはるのだす?」
と聞く。
惣兵衛はびっくりした。
「あなた様を迎えに来た」という。
そこへばくち打ちたちが追いかけてきた。
「こっちへ・・」といって
はつは惣兵衛をつれて
逃げた。
川の横まで逃げて行った二人だった。
「酔いが回った・・・
気持ち悪い・・・」
「一生帰ってこないつもりだ
ったのですか?」
「まさか、まだあっこに
いてんのか?」
惣兵衛は自分が消えたら
はつもどこかへ行くと思った
という。
「家がつぶれたのも
こんな暮らしをさせたのも
おまえが怪我したのも
全部わしのせいや。
わしはお前に申し訳なくて。
なのに、あの時ホンマに
うれしかった。
ふんどしいっちょで
青物売って・・・
楽しかった。
土が暖かくて
お日さんがまぶしくて
キュウリがおいしくて
誰の前でも気取ることがない。
これがしたかったんだと
思った。」
はつは、「そうでしたね。
あのときのあなたは気持ちよさそうに
働いていたわ。
何で逃げたの?」
「わしが笑ったらあかんやろ。
おまえは器量もええ
気立てもええ。
加野屋に嫁いでいたら今頃
お琴を弾いていただろう。
姑にだって、あんなにいじめられる
ことがなかった・・
わしに嫁いだせいでおまえを不幸に
してしまった。
これからおまえに一生、とくいな
お琴を弾かせてやれないというのに
何でわしが笑っていられるものか・・」
はつは、「うちがあの家にいた時と比べて
不幸に見えますか?
それに
加野屋さんのお姑さんやて
それはそれで難儀なかんじやし。
さぁ、帰りましょう。
旦那様にあって欲しい大事な人が
いますのや。」
あの小屋に戻った惣兵衛は
小さなな男の子を見た。
「藍の介・・おいで。」
はつは、藍の介をだいて
惣兵衛のもとにいく。
「いまさらええ旦那様になろうと
思わないでください。
ええお父ちゃんになってください。
藍の介、お父ちゃんがやっと
帰ってまいりましたで。」
栄達が「藍の介~~」と
よぶ、
そして惣兵衛を見て
「惣兵衛」といった。
それを聞いた菊は
おどろいて外に飛び出した。
「惣兵衛って??
いまさら何しに帰ってきたん?
いまさら
何しに帰ってきたんや!!」
菊は惣兵衛をたたきながら
だきしめた。
「お母ちゃん、ごめん
堪忍な・・・」
菊は惣兵衛をだきしめて大声で
ないた。
はつと藍の介はそれを
じっとみていた。
さて、九州では
ついに、男たちが山に入って
石炭を掘るといったと宮部がいう。
あさは、びっくりした。
うれしく思った。
「さすが若奥さんや」と亀助が言う。
そこへ、「えっほ、えっほ、えっほ」
と駕籠屋がきた。大きな籠が
とまった。
こんなところへ籠が来るなんてと
亀助が驚いた。
中からでてきたのは
新次郎だった
「あ~~~あ・・
来てしもうたがな・・・」
「旦那様?」
あさは、びっくりした。
***************
なにがどうして大逆転と
なったけど、ピストルのせいで
男たちは働くことにしたの
でしょうか。
それにしても
今回は
惣兵衛とはつですね。
おちぶれてしまったことをわびる
惣兵衛。
しかし、農家の仕事を
楽しいといった惣兵衛だった。
でも、はつを幸せにできなかった
ので、自分が笑うわけにはいかないと
その場から姿を消したのだった。
藍の介をのこして。
はつは、育児と農作業をこなして
強く鍛えられた。
そして、自分は不幸だとは思えないと
いう。
かつて、今井家ではおなごは家業に口出しを
するなと忠興が言った。
はつはそのとおりの娘に育った。
家業に口を出すことなく
娘としてはできるべき芸事は
ひととおりでき、文字もきれいに書き
縫物も上手にできる。
つまり、決して、はつは能無しの娘では
ないのである。
だが、時代は女性の能力を求めて
いない。認めていない。
山王寺屋が傾いていってもそれを知ること
もなく、井の中の蛙のように
暮らしてきた。
おなごには家業の話をしないことに
なっていたからだ。
あさは、それでも頼み込んで仕事を
させてもらった。
時代が変わる大変な時に加野屋を支えた。
そしていま、九州で命を懸けて
戦っていた。
はつは、惣兵衛を探すために青物を売り
まわっていた。
守るべき家がなくなったら
守るべきは旦那様だと決めたからだッた。
旦那様を守るために、はつは惣兵衛を
探して回った。
藍の介をそだてて、栄達も孫のもりを
楽しんでいた。
菊はなかなか立ち上がることができなか
ったが、惣兵衛が帰ってきたことで
何か変わるでしょうね。
女性の力を信じない時代に、
あさは、石炭を掘るところまで
こぎつけた。
そして、あさの手紙を見て
じっとしてられなくなった新次郎が
・・・・何しに来たのか。
商売をするために
やってきたと思いたい。
伊作がおこってあさに
とびかかってきた。
「せがらしか、この転婆
女郎めが。」
「なにしますねん」とあさは
押し倒された。
「若奥さん」
と亀助がさけぶ。
「いいかげんやめんか」
と治郎作が叫んだ。
そのとき
あさのふところから
ピストルがおちて
暴発した。
その音にあわてて男たちは
ひきさがっていった。
あさはピストルを見た。
あのとき
五代が
「おまもりです」といって
くれたものだった。
「あんたはこれからかなり危険な
場所にいくということだ」
「おまもりか・・・確かに。
こんな時に手にするとは
おもわなかった・・・」
あさはつぶやく。
そして立ち上がって
男たちに向かっていった。
「あんたらが、どれほど抵抗しても
うちは大阪に帰りまへん。
うちはこの山を成功させるという
不退転の気持ちで大阪から
きたんだす。
この決心をわかってもらい
石炭を掘るというまで
決して大阪に帰りまへん
よって。」
あさは治郎作をにらみつけた。
男たちは飯場にもどった。
「ピストルをもっているとは
なんというおなごや。」
「あんなおなごのために働けんばい」
「そうだ、そうだ」
「ばってん、もし逆らって
打たれたらどげんするか?」
「それだけ、覚悟をしているという
ことや、さて、わしらは
どげんすると?」と
治郎作がいった。
こちらはあさたちだった。
亀助は「ピストルひとつでこないに
奴らが変わるとは、驚いた。」
「びっくりぽんだす。
だから、戦をする人が武器を
欲しがるってことなのね・・」
あさが、感心した。
そして、新次郎に手紙を書こうとした。
そこへカズたちが
やってきた。
そして、あさが石炭を掘らないものを
ピストルで殺すというていると
いうが、どうか、殺さないでください
と、それぞれが懇願する。
あさは、そんなこと言ったことも
ないので、びっくりした。
そのころ大阪の寺町では
惣兵衛がいかさまの博打をうったと
男たちから追いかけられていた。
「いかさまは、おまえたちだ」と
いいながら
逃げる。
途中でころんで、顔が泥だらけに
なった。
やけくそで笑う惣兵衛。
そこへ、はつが
現れて、
「何でそないに自分を
痛めつけはるのだす?」
と聞く。
惣兵衛はびっくりした。
「あなた様を迎えに来た」という。
そこへばくち打ちたちが追いかけてきた。
「こっちへ・・」といって
はつは惣兵衛をつれて
逃げた。
川の横まで逃げて行った二人だった。
「酔いが回った・・・
気持ち悪い・・・」
「一生帰ってこないつもりだ
ったのですか?」
「まさか、まだあっこに
いてんのか?」
惣兵衛は自分が消えたら
はつもどこかへ行くと思った
という。
「家がつぶれたのも
こんな暮らしをさせたのも
おまえが怪我したのも
全部わしのせいや。
わしはお前に申し訳なくて。
なのに、あの時ホンマに
うれしかった。
ふんどしいっちょで
青物売って・・・
楽しかった。
土が暖かくて
お日さんがまぶしくて
キュウリがおいしくて
誰の前でも気取ることがない。
これがしたかったんだと
思った。」
はつは、「そうでしたね。
あのときのあなたは気持ちよさそうに
働いていたわ。
何で逃げたの?」
「わしが笑ったらあかんやろ。
おまえは器量もええ
気立てもええ。
加野屋に嫁いでいたら今頃
お琴を弾いていただろう。
姑にだって、あんなにいじめられる
ことがなかった・・
わしに嫁いだせいでおまえを不幸に
してしまった。
これからおまえに一生、とくいな
お琴を弾かせてやれないというのに
何でわしが笑っていられるものか・・」
はつは、「うちがあの家にいた時と比べて
不幸に見えますか?
それに
加野屋さんのお姑さんやて
それはそれで難儀なかんじやし。
さぁ、帰りましょう。
旦那様にあって欲しい大事な人が
いますのや。」
あの小屋に戻った惣兵衛は
小さなな男の子を見た。
「藍の介・・おいで。」
はつは、藍の介をだいて
惣兵衛のもとにいく。
「いまさらええ旦那様になろうと
思わないでください。
ええお父ちゃんになってください。
藍の介、お父ちゃんがやっと
帰ってまいりましたで。」
栄達が「藍の介~~」と
よぶ、
そして惣兵衛を見て
「惣兵衛」といった。
それを聞いた菊は
おどろいて外に飛び出した。
「惣兵衛って??
いまさら何しに帰ってきたん?
いまさら
何しに帰ってきたんや!!」
菊は惣兵衛をたたきながら
だきしめた。
「お母ちゃん、ごめん
堪忍な・・・」
菊は惣兵衛をだきしめて大声で
ないた。
はつと藍の介はそれを
じっとみていた。
さて、九州では
ついに、男たちが山に入って
石炭を掘るといったと宮部がいう。
あさは、びっくりした。
うれしく思った。
「さすが若奥さんや」と亀助が言う。
そこへ、「えっほ、えっほ、えっほ」
と駕籠屋がきた。大きな籠が
とまった。
こんなところへ籠が来るなんてと
亀助が驚いた。
中からでてきたのは
新次郎だった
「あ~~~あ・・
来てしもうたがな・・・」
「旦那様?」
あさは、びっくりした。
***************
なにがどうして大逆転と
なったけど、ピストルのせいで
男たちは働くことにしたの
でしょうか。
それにしても
今回は
惣兵衛とはつですね。
おちぶれてしまったことをわびる
惣兵衛。
しかし、農家の仕事を
楽しいといった惣兵衛だった。
でも、はつを幸せにできなかった
ので、自分が笑うわけにはいかないと
その場から姿を消したのだった。
藍の介をのこして。
はつは、育児と農作業をこなして
強く鍛えられた。
そして、自分は不幸だとは思えないと
いう。
かつて、今井家ではおなごは家業に口出しを
するなと忠興が言った。
はつはそのとおりの娘に育った。
家業に口を出すことなく
娘としてはできるべき芸事は
ひととおりでき、文字もきれいに書き
縫物も上手にできる。
つまり、決して、はつは能無しの娘では
ないのである。
だが、時代は女性の能力を求めて
いない。認めていない。
山王寺屋が傾いていってもそれを知ること
もなく、井の中の蛙のように
暮らしてきた。
おなごには家業の話をしないことに
なっていたからだ。
あさは、それでも頼み込んで仕事を
させてもらった。
時代が変わる大変な時に加野屋を支えた。
そしていま、九州で命を懸けて
戦っていた。
はつは、惣兵衛を探すために青物を売り
まわっていた。
守るべき家がなくなったら
守るべきは旦那様だと決めたからだッた。
旦那様を守るために、はつは惣兵衛を
探して回った。
藍の介をそだてて、栄達も孫のもりを
楽しんでいた。
菊はなかなか立ち上がることができなか
ったが、惣兵衛が帰ってきたことで
何か変わるでしょうね。
女性の力を信じない時代に、
あさは、石炭を掘るところまで
こぎつけた。
そして、あさの手紙を見て
じっとしてられなくなった新次郎が
・・・・何しに来たのか。
商売をするために
やってきたと思いたい。
