妻の決心、夫の決意5
あさは、寝床の横で
新次郎に手をついてお願いをした。
「旦那様、どうか
どうか
お家のために
お妾さん、かこておくれやす」
新次郎は驚いた。
「いま、なんていうた?」
「もともと旦那様とうちは
幼いころからの許嫁
お家の繁栄のために結婚しました。
でも私は一番大事なことが
できなかった
お家のために、ええおかたを
選んでください」
「本気で言うてますのか?」
「ええ」
「わかった
あさがええというのやったら
そないするわ・・」
そういって新次郎は
部屋から出て行った。
かのは、一部始終を聞いていて
よのへ報告にいった。
あさは、九州へ行くたびの支度を
はじめた。
ああはいったものの
心は穏やかではない。
それを振り払うように
荷物を出していた。
それが大変な物音だった
のでうめは驚いて
やってきた。
「おあさ様
大丈夫ですか?」
「大丈夫や
前向いて進まなあかん
東京で鉄道の普請もはじまって
もうじき、石炭の値打ちにみんな
気が付く。その前に、手を打たなくては
いけない。」
あさは、ヒステリックに叫びながら
荷物をまとめる。
「旅の装束はこれでええやろか。」
あさは、傘をみて
「こんなんかぶっていたら
男みたいやわ」と
いってハハハハと笑った。
笑いながら泣いた。
「うちにぴったりやわ」
「やっぱり泣いてはった・・」
「泣いてへん
これでええ、これでええんや・・・」
そういいながら、あさは
炭鉱の櫛田さんに手紙を
書こうと
机に向かった。
机の上には
新次郎からもらった
あかい小さなそろばんがあった。
それをみてあさは
「あほ
旦那様の
あほ・・・」
と言って泣いた。
「そやな、旦那様はあほやな」
とうめがいうと
「違う!!!
アホはうちや」と
あさは
また泣きながら
いう。
翌日
よのがたくらんだ、美和を
妾に据える日が来た。
正吉にその話をすると
三味線のお師匠さんだなんて
体裁が悪いという。
正吉はなぜか三味線が嫌いで
あるのだ。
「ま、いいから」とよのは
「一度会って下さい」と
いって、美和が座っている
座敷のふすまをあけた。
そこからそっとみると
美和が座っていた。
「ほお・・」と正吉が
いうと
美和がこちらを向いて
挨拶をした。
「わるないな・・・」
と
正吉は思った。
「こうてんか~~~~
取れたてだっせ====」
といいながら
はつは棒手振りをかついで
藍之助と名付けた子供を背負って
街中を
青物を売って歩いていた。
歩きながら
惣兵衛を探しているのだった。
あさははつの家で
今の状況を話した。
はつは、新次郎の妾の
こと、九州へ行くことを
きき、「あんたが
決めたことだす。
いっといで」
といった。
そのあっさりした言葉に
あさは
「ええ?」と
聞き返した。
「旦那様のことは一切心配ない
のだから、お妾さんに
まかせたらいいのだから
あんたは九州へいったらいい」と
はつはいうのだった。
「それに向うでは
男前の力自慢の男はんが
ぎょうさんいてはる
ことやし。」
「男前の炭鉱夫??」
あさは、驚いた。はつからそんな
言葉が聞けるとは。
あさも言い返した。
これほど惣兵衛が帰ってこない
のだったら新しい旦那様を
さがしたらいい、それだけ
まだ若くてきれいなんだからと
いう。
「そやな
もっと目の大きい人でも探したろかしら」
「うちももっと男らしいきりっとした人を
さがしましょ。」
「せやせや
探したらよろしい」
と、はつ。
「何や楽しくなってきたわ」と
あさ。
「ほんまやな
楽しいな。」
笑いながらもなぜか
さみしさがある二人だった。
おたがい、手を重ねて
励まし合った。
あさはうめと五代の事務所を
尋ねた。
あさが、妾のことで悩んでいる
ので、うめは
妾と正妻は
まったく別のもで気にすること
はないという。
妾がいても
旦那様はいつもあさのことを
思っている。。。と。
そのことを五代が聞いた。
「ほお・・・大変興味深い話ですね。」
と英語でつぶやいた。
うめは、荷物を持ってきただけなのでと
いって去って行った。
あさは、五代に話を聞かれたことを
後悔した。
そして、五代が前に買っていたと
いう鉱山のことを聞いた。
鉱山の話を聞きたいと
あさはいうが
五代は、何を思ったのか
「相変わらず仕事熱心なのは
ええけど・・・
ラブについて話をしましょう」という。
「ラブ?」
「あささんは新次郎さんを愛してますか?」
「愛してる???」
「惚れているのかという意味です。」
五代は新次郎と会ってお酒を飲みかわした
けど
あの男はあささんが惚れるほどの価値のある
男ではないというので
あさは、びっくりして五代の顔を見た。
五代は、新次郎を優男といい
家が大変な時にでも、芸事に
うちこんでふらふらとしている。
加野屋がもっているのは
あさが頑張っているからだという。
大阪の旦那衆はいろいろとあさのことを
いうが加野屋がつぶれないのは
ひとえにあさの力だといった。
「私が味方になる。大丈夫。」
あさは、五代にいった。
「優男の何が悪いんですか?
芸事は大阪商人の粋です。
それに
それにうちは
男前の力自慢より
ふらふらしているかよわい
旦那様が好きです。」
と怒鳴って、走り
去って行った。
五代は、あっけにとられた。
そして
「はぁ・・・・・
そう、来はりましたか・・・」
とつぶやいた。
店に帰ると
「お帰りやす」と一同がお帰りやすという。
「お父様とお母様は?」と
あさが聞くと
弥七が
「きょうは、お妾さんが近所に
越してくるというので見に行きましたが」
といった。
雁助と亀助は
弥七を注意した。
「なにいうてんや、おまえ、口の軽い!!」
「そうやで!!」
弥七はなぜ怒られたのかと
驚く。
あさは、ショックで
「外の風に当たってきます」と
いってでていった。
弥七は「今帰って来たばかりなのに」
と、また軽口を言うので
雁助は弥七を制した。
うめはあさを追いかけた。
「雨が降り出した」という。
「雨や・・・
知っている?
旦那様は雨男なんやで
うれしいときに
雨が降りますのや・・」
そういって泣きながら
雨の中を
走っていった。
それを聞いた
新次郎は傘を持って追いかけた。
近くのお堂で
あさは座っていた。
新次郎がきたので
「今日はお引越しなのに」という。
「わては妾はもたない
だから、引っ越しは無しや。」
「大事なことだから
おめ
おめかけ・・
やっぱりいやや
旦那様がほかの人と一緒になる
っていやだす。
うちだけ、お嫁さんにして
ください。」
泣きだすあさに新次郎は
ちかづいて横に座った。
「ほんまあほやな
あんたは
あんたのかわりになるおなごが
おりますかな?
これ以上嫁さんに手がかかったら
わて
遊ぶ間がなくなりますわ。」
「旦那様・・・・」
「ああ、一番ええ着物を濡らして
しもうて・・・」
「これが一番おなごらしく
見えると思って」
「あさほど心がおなごらしい
おなごは
わしは知らん・・・
行こうか?」
「へぇ。」
あさは、
だったら何で雨が降ったのかと
不思議に思った。
「さあな」
と新次郎は傘をさして
あさと
歩いて帰った。
家に帰ると
客がいた。
その人をお座敷に通して
正吉は挨拶をした。
あさと新次郎も一緒である。
「あなた様は?」
とあさがきく。
その客はきれいな女性だった。
「おはつにお目にかかります。」
櫛田そえだった。
炭鉱の持ち主である。
*******************
いいなずけというのは難しいものですね。
ラブも知らないで結婚するのだから
お互いの気持ちなど
いいかわすこともなく・・・
ですよ。
当時は女性は若くして結婚して
さっさと子供を産んでという考え
かたなので、子供がいないと
妾をつくるのが
家を守る手段でした。
だからあさは、断腸の思いで
新次郎に妾をといったのですが
それは、本心ではありません。
新次郎も悩んでいたのでしょう。
お互いの心を出し尽くすことで来て
良かったです。
あさの本当の気持ち・・・
妾を持ってくださいと言ったとき
あさは新次郎を愛してないのかもと
新次郎は思ったことでしょう。
でも、本心は、妾をもってほしくない。
自分だけをお嫁さんにしてほしいと・・
これほど、女らしいことはありません。
だれが
あさを四男坊を呼んだのか。失礼な話
です。
五代は世界を見て
レディファーストをみて
あさが女のくせに商売熱心な
ことには抵抗がなかったのだろう
けど・・・・
あさが好きなの?
と
聞きたいです。
あさは、寝床の横で
新次郎に手をついてお願いをした。
「旦那様、どうか
どうか
お家のために
お妾さん、かこておくれやす」
新次郎は驚いた。
「いま、なんていうた?」
「もともと旦那様とうちは
幼いころからの許嫁
お家の繁栄のために結婚しました。
でも私は一番大事なことが
できなかった
お家のために、ええおかたを
選んでください」
「本気で言うてますのか?」
「ええ」
「わかった
あさがええというのやったら
そないするわ・・」
そういって新次郎は
部屋から出て行った。
かのは、一部始終を聞いていて
よのへ報告にいった。
あさは、九州へ行くたびの支度を
はじめた。
ああはいったものの
心は穏やかではない。
それを振り払うように
荷物を出していた。
それが大変な物音だった
のでうめは驚いて
やってきた。
「おあさ様
大丈夫ですか?」
「大丈夫や
前向いて進まなあかん
東京で鉄道の普請もはじまって
もうじき、石炭の値打ちにみんな
気が付く。その前に、手を打たなくては
いけない。」
あさは、ヒステリックに叫びながら
荷物をまとめる。
「旅の装束はこれでええやろか。」
あさは、傘をみて
「こんなんかぶっていたら
男みたいやわ」と
いってハハハハと笑った。
笑いながら泣いた。
「うちにぴったりやわ」
「やっぱり泣いてはった・・」
「泣いてへん
これでええ、これでええんや・・・」
そういいながら、あさは
炭鉱の櫛田さんに手紙を
書こうと
机に向かった。
机の上には
新次郎からもらった
あかい小さなそろばんがあった。
それをみてあさは
「あほ
旦那様の
あほ・・・」
と言って泣いた。
「そやな、旦那様はあほやな」
とうめがいうと
「違う!!!
アホはうちや」と
あさは
また泣きながら
いう。
翌日
よのがたくらんだ、美和を
妾に据える日が来た。
正吉にその話をすると
三味線のお師匠さんだなんて
体裁が悪いという。
正吉はなぜか三味線が嫌いで
あるのだ。
「ま、いいから」とよのは
「一度会って下さい」と
いって、美和が座っている
座敷のふすまをあけた。
そこからそっとみると
美和が座っていた。
「ほお・・」と正吉が
いうと
美和がこちらを向いて
挨拶をした。
「わるないな・・・」
と
正吉は思った。
「こうてんか~~~~
取れたてだっせ====」
といいながら
はつは棒手振りをかついで
藍之助と名付けた子供を背負って
街中を
青物を売って歩いていた。
歩きながら
惣兵衛を探しているのだった。
あさははつの家で
今の状況を話した。
はつは、新次郎の妾の
こと、九州へ行くことを
きき、「あんたが
決めたことだす。
いっといで」
といった。
そのあっさりした言葉に
あさは
「ええ?」と
聞き返した。
「旦那様のことは一切心配ない
のだから、お妾さんに
まかせたらいいのだから
あんたは九州へいったらいい」と
はつはいうのだった。
「それに向うでは
男前の力自慢の男はんが
ぎょうさんいてはる
ことやし。」
「男前の炭鉱夫??」
あさは、驚いた。はつからそんな
言葉が聞けるとは。
あさも言い返した。
これほど惣兵衛が帰ってこない
のだったら新しい旦那様を
さがしたらいい、それだけ
まだ若くてきれいなんだからと
いう。
「そやな
もっと目の大きい人でも探したろかしら」
「うちももっと男らしいきりっとした人を
さがしましょ。」
「せやせや
探したらよろしい」
と、はつ。
「何や楽しくなってきたわ」と
あさ。
「ほんまやな
楽しいな。」
笑いながらもなぜか
さみしさがある二人だった。
おたがい、手を重ねて
励まし合った。
あさはうめと五代の事務所を
尋ねた。
あさが、妾のことで悩んでいる
ので、うめは
妾と正妻は
まったく別のもで気にすること
はないという。
妾がいても
旦那様はいつもあさのことを
思っている。。。と。
そのことを五代が聞いた。
「ほお・・・大変興味深い話ですね。」
と英語でつぶやいた。
うめは、荷物を持ってきただけなのでと
いって去って行った。
あさは、五代に話を聞かれたことを
後悔した。
そして、五代が前に買っていたと
いう鉱山のことを聞いた。
鉱山の話を聞きたいと
あさはいうが
五代は、何を思ったのか
「相変わらず仕事熱心なのは
ええけど・・・
ラブについて話をしましょう」という。
「ラブ?」
「あささんは新次郎さんを愛してますか?」
「愛してる???」
「惚れているのかという意味です。」
五代は新次郎と会ってお酒を飲みかわした
けど
あの男はあささんが惚れるほどの価値のある
男ではないというので
あさは、びっくりして五代の顔を見た。
五代は、新次郎を優男といい
家が大変な時にでも、芸事に
うちこんでふらふらとしている。
加野屋がもっているのは
あさが頑張っているからだという。
大阪の旦那衆はいろいろとあさのことを
いうが加野屋がつぶれないのは
ひとえにあさの力だといった。
「私が味方になる。大丈夫。」
あさは、五代にいった。
「優男の何が悪いんですか?
芸事は大阪商人の粋です。
それに
それにうちは
男前の力自慢より
ふらふらしているかよわい
旦那様が好きです。」
と怒鳴って、走り
去って行った。
五代は、あっけにとられた。
そして
「はぁ・・・・・
そう、来はりましたか・・・」
とつぶやいた。
店に帰ると
「お帰りやす」と一同がお帰りやすという。
「お父様とお母様は?」と
あさが聞くと
弥七が
「きょうは、お妾さんが近所に
越してくるというので見に行きましたが」
といった。
雁助と亀助は
弥七を注意した。
「なにいうてんや、おまえ、口の軽い!!」
「そうやで!!」
弥七はなぜ怒られたのかと
驚く。
あさは、ショックで
「外の風に当たってきます」と
いってでていった。
弥七は「今帰って来たばかりなのに」
と、また軽口を言うので
雁助は弥七を制した。
うめはあさを追いかけた。
「雨が降り出した」という。
「雨や・・・
知っている?
旦那様は雨男なんやで
うれしいときに
雨が降りますのや・・」
そういって泣きながら
雨の中を
走っていった。
それを聞いた
新次郎は傘を持って追いかけた。
近くのお堂で
あさは座っていた。
新次郎がきたので
「今日はお引越しなのに」という。
「わては妾はもたない
だから、引っ越しは無しや。」
「大事なことだから
おめ
おめかけ・・
やっぱりいやや
旦那様がほかの人と一緒になる
っていやだす。
うちだけ、お嫁さんにして
ください。」
泣きだすあさに新次郎は
ちかづいて横に座った。
「ほんまあほやな
あんたは
あんたのかわりになるおなごが
おりますかな?
これ以上嫁さんに手がかかったら
わて
遊ぶ間がなくなりますわ。」
「旦那様・・・・」
「ああ、一番ええ着物を濡らして
しもうて・・・」
「これが一番おなごらしく
見えると思って」
「あさほど心がおなごらしい
おなごは
わしは知らん・・・
行こうか?」
「へぇ。」
あさは、
だったら何で雨が降ったのかと
不思議に思った。
「さあな」
と新次郎は傘をさして
あさと
歩いて帰った。
家に帰ると
客がいた。
その人をお座敷に通して
正吉は挨拶をした。
あさと新次郎も一緒である。
「あなた様は?」
とあさがきく。
その客はきれいな女性だった。
「おはつにお目にかかります。」
櫛田そえだった。
炭鉱の持ち主である。
*******************
いいなずけというのは難しいものですね。
ラブも知らないで結婚するのだから
お互いの気持ちなど
いいかわすこともなく・・・
ですよ。
当時は女性は若くして結婚して
さっさと子供を産んでという考え
かたなので、子供がいないと
妾をつくるのが
家を守る手段でした。
だからあさは、断腸の思いで
新次郎に妾をといったのですが
それは、本心ではありません。
新次郎も悩んでいたのでしょう。
お互いの心を出し尽くすことで来て
良かったです。
あさの本当の気持ち・・・
妾を持ってくださいと言ったとき
あさは新次郎を愛してないのかもと
新次郎は思ったことでしょう。
でも、本心は、妾をもってほしくない。
自分だけをお嫁さんにしてほしいと・・
これほど、女らしいことはありません。
だれが
あさを四男坊を呼んだのか。失礼な話
です。
五代は世界を見て
レディファーストをみて
あさが女のくせに商売熱心な
ことには抵抗がなかったのだろう
けど・・・・
あさが好きなの?
と
聞きたいです。
