若奥さんの底力2
宇奈山藩に取立てに行き
追い返されたあさ。

「まけへんで・・・・」

と、あさはつぶやく。

そんなとき、通りかかりの人から
声をかけられる。

「おあさ様?」

ふりむくと

ふゆだった。

はつについていったふゆ。

うめも再会を喜んだ。

あさは、はつの様子を聞くが
あまり詳しく教えられない様子。
はつは留守が多いというが
留守ではない。
ふみを書くことも禁じられているというが
「あのふみは・・・」と聞くと
うつむくふゆ・・・
でも、はつは
いつもあさと同じお守りを見ていると
言う話をした。
「もっと話をしたいけど
遅くなったらやめさせられる」とふゆがいう。
「まさか、はつのお付なのに」と
驚くが
店の従業員も次々と
やめさせられていく。
寂しくなったという。
あさは、驚いた。
山王寺屋はなにかあるのかと
思った。
はつのことが心配になり
日本手ぬぐいをさいて
矢立を亀助からもらって
急いで手紙を書く。

しかしふゆは近くを番頭が
とおったのでここで話をしている
と、怒られるという。

あさは急いで書き終えて
ふゆのふところに入れた。
「これお姉ちゃんに。
信用できるのはあんただけや。」
ふゆは急いで帰って行った。
あさは心配になった。

案の定、ふゆが帰ると
菊が番頭から「加野屋さんからなにか
受け取ったのでは」という。
ふゆは「何も持っていません」と
逃げた。
菊は店の者に命じて
「捕まえて」という。
ふゆは逃げて逃げて
井戸の中に手紙をなげいれた。

結果、何も持ってなくて
番頭の思い違いだということに
なった。

「申し訳ありません」とふゆは
一部始終をはつにいって
謝った。
はつは自分のために嫌な目に合ったふゆを
なぐさめた。

「お母さんからなにかきついことを
言われなかったか」と
気遣う。
「何も持っていなかったので
おとがめなしだった」という。

「せっかくのおあさ様の手紙を・・」

とふゆは悔しそうに言った。

はつがあさのことを聞くと
あさが宇奈山藩の蔵屋敷に
取立てに言っているという
話をした。

はつは驚いた。
「なぜあさがそんなことを・・
ひょっとしたらあさの家は
困っているのだろうか?
外では何がおこっているのだろう
うちだけ井の中の蛙で
なにもしらないのね
蛙になったのは自分のせいだ。
商いは旦那様に任せてと思って
何もしなかったけど
それではあかんかったのではないだ
ろうか・・・」

はつは、あさを思って
つぶやく・・・。

そのころ、あさは
おなご衆の中で働いている。
「若奥さん私が」と
女中がいうが
「あさはなんであんな手紙を
書いたのか」と
悔やんでいた。
「もっといい言葉があったのに」
。。。。
そして、思い切って
ぐじぐじと悩まないで
自分は自分のことを頑張ろうと
きめた。

翌日宇奈山藩の蔵屋敷に行く。

「ごめんやす!!!」

毎日のように通った。

どんなに正面突破をしても
幕末の混乱の中でまともに
とりあってくれない。

それで引き下がるあさではない・・

なんとしても、中に入ろうと力づくで
門を開けようとした。

それでも、突き返された。

「また参ります
返してもらうまでは
何べんでも来ますよって

ふん!!!!」

といって去って行った。

山王寺屋では武士が帰って行った。

惣兵衛は、丁寧にあいさつをした。

栄達は「また徳川さまのご使者が来ました
のかな?」という。

「また無心です。
両替屋は打ち出の小づちやあらへん。
なんぼでも金が出ると思っているのか。
うちの蔵にはもう、なんぼも・・・・・」

愚痴っていると菊が「惣兵衛」と口を出す。
「お店が難儀なことをしられたらあかん」と
いった。
栄達はのんびりしていて
「大政奉還と言っても徳川さまが
無くなるわけではないし。たいして
変わらない」と、いう。
「今は苦しくても恩を貸していたらなんか
あったら守ってもらえる。」

「またお客様ですか。」
はつが来た。
「店の者に聞くと
何度も妹が来たと
ききました」という。

菊は
「あんたの妹さん
評判悪いな。
女だてらにふらふらと武家屋敷あたりに
であるいて
ろくなもんやあらへんいうてな。」
と、菊が嫌味を言う。

「あさはあさなりにお家を守ろうとして
いるのでございましょう。」
「守る?」
惣兵衛はいぶかしそうに聞く。
「うちら姉妹は父から言われて
ました。妻の務めはお家を守ることだと。
せやから旦那様
うちにもちょっとでいいですから
教えてください
何が起きてますのや
この家の外では
なにがいったい。。。」

菊は「あんたの務めは子を産むこと
だす。その勤めも果たしてないのに
余計な詮索をせんことだす。」
そういってさっていった。

惣兵衛もだまって仕事を続けた。

はつの味方はいない。


加野屋ではあさが行く準備をして
いた。新次郎がやってきて
「また行くのですか?
まだ一銭も返してもらって
ないのでしょう」という。

「一銭でも返してもらえたら
何度も行ったことは無駄にはならない」と
いった。

そこによのがかのと一緒に
やってきた。
部屋に入ると
ちらかっているので
かのは、かたづけてよのの座る場所を
つくった。
「あんた、近頃外で何をしてはりますのや?
近頃芝居見物や花見にいくたんびに
みんなが笑って言う。
あんたのところの嫁さんは
ようはたらくな、よろしいな」と。
「はたらきもんやなんて、そんな」
とあさが笑って言うと
よのはにらんでいった。

「ほめてんのやあらしまへん!
天下の加野屋の若奥さんが
借金取りをしているなんて
うちは・・・もう・・・」

という。
かのは、「奥様はずっと胸をいためて
います」という。

そんなとき、障子越しに
石が投げ込まれた。

おどろくあさたちだった。
古くからの大阪経済の中心にあった
両替屋は時代の変わり目にあって
さまざまは誤解を受け
世間の風当たりも強かったのです。

店にも投げ込まれた。
番頭が破れ目から外を見ると
男たちが
石を投げていたのだった。
そして逃げて行った。

あさは宇奈山藩の蔵屋敷に言った。
そこの侍が
「勘定奉行様は不在で
一日中いつ帰るのか
わからない」という。
あさは、屋敷の前でござをしき
「ここで待たせてもらいます」という。
あまりにもみっともないので
やめてくれと言われて
「だったらどこで待ったらいいですか」と
聞いた。
案内された先は
下働きの男たちが大勢詰めている
場所で、「ここしかない」と
御家人は言う。
「男・・・くさぃ」
と、うめは顔をしかめた。
あさは、目を大きく見開き

「びっくり
ぽんや」

といった。
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ここでは
はつが、目覚めようとしています。
あさがなぜ取立てに行くのか。
いま世の中はどうなっているのか。
ずっと家の中にいて
なにもわからないで
どうやって家を守るのかと・・・
自分にできることはなにか
ないだろうかと
悩んでいます。

これがどうはつの人生に
なっていくのか
わかりませんが
はつは、子を産み育てるだけが
女の仕事ではないと
思っています。
あさがなぜそこまでするのか・・
なにかあると
はつは
自分がおいていかれる
不安を感じているのではと
思いました。