ふたつの花びら6
婚礼の前になって
白岡家は長男の急逝で
婚礼の延期を申し出てきた。
あさは、新次郎に手紙を書いた
ことを話した。
「何も知らないで、新次郎さんの
お兄様が大変な時に
あんなずうずうしい文を書いて
すみませんでした」という。
「あ、届いていませんでしたか?
あんな汚い文は・・
飛脚さんが届けるのを拒んだ
のでは」というが
新次郎は「もっと悪いことになって
しました」という。
「最初は文字があまりにも勢いが
いいので
果たし状ではと思った。
そうやないと分かったときは
ほんま、ほっとしてん。」
そんなに威勢が良かったのかと
あさはいうが
今まで女性からもらった
手紙の中ではあの威勢の良さは
みかけなかった
といった。
あさは、手紙を書くことは
はじめてだったし
男の人からの手紙も
もらったことはない。
「あんなふみは出さへんかったら
よかった・・・」
というが
新次郎は「うれしかったで」という。
新次郎は惣べえにあって
そのことを知らせようと
したときに兄が危篤になった。
「兄は、やさしくて賢くて
顔もよくって
・・・」
という。
自分は
なにもかなう所はない。
両親も兄を大事にして加野屋は
これで安泰やと喜んでいた。
「そや、死ぬんやったら
自分が死んだらよかったのに・・」
そういいながら
愚痴をこぼしたことをあさに
わびた。
正吉が「そろそろ帰るで」という。
新次郎は、「惣ベえは確かに
難儀な奴かもしれないが
それでも子供のころは
おもしろい、いいやつだった」と
話をした。
「それを信じるしかないから。
お姉さんを励ましてあげてな」と
いった。
新次郎は、たちあがって
帰ろうとしたとき
あさは、「新次郎さん」とよび
とめた。
「新次郎さんは
やさしい
やさしい
やさしいおかたです。
そのところはだれにも負けて
いません。
せやから、
お兄様の分も
ちゃ~~~んと
生きてください。」
新次郎は、真顔で
「おおきに」
といった。
顔を見ると
笑っていた。
「ああ・・・
まだ出過ぎたことを
いうてしもうた・・」
あさは自分で呆れてしまった。
翌日の三月の末日。
はつだけが
お嫁に行くことになった。
川を下る船に乗ったはつは
つのかくしをして、
のっていた。
そばにはふゆ。
「私たちも明日にはいきます
からね。」
と梨江がはつにいう。
船は、船頭の手漕ぎである。。
「おねえちゃん!」
はつはあさのてを取って
にぎった
が
船が岸から離れると同時に
手が離れて行った。
「おねえちゃん!」
はつは
頭を下げた。
じっと
あさのほうをみる。
「お姉ちゃん!!」
あさは、船を追いかけて
走った。
うめは、「走ったら・・」と
止めようとしたが
忠興はだまっていた。
梨江は「今日ぐらいはかまへん」と
いった。
あさは、はつを追いかけた。
「おねえちゃん!!!」
うめも
忠政も
じっと見ていた
早くなる船においついても
離され
「お姉ちゃん」
「お姉ちゃん」
とあさの声が響く
はつは
あさから目を話して
船の進む方向を向いた。
船は
岸から離れて
川の
中のほうへ行った。
あさが
泣きながら
船を見送る・・・
はつは帯の中から
お守りを出した。
翌日、はつは白無垢の
花嫁となって惣ベえと共
にいた。
半年後のこと。
今井家では
あさが嫁入りの日となった。
忠興は
白無垢の
あさをみて
「これは・・・」
といった
「おなごに見える」
という。
梨江ははつとおそろいの
お守り袋を
わたした。
「あんたはただのあかんこ
ではない。筋金入りの
あかんこや。
根性だけはある。
いつか、あんたも
おなごに生まれてよかった
と思う日が来る。」
せやから、しっかりな
柔らかい心を
わすれんと
ええ、お嫁さんになるんやで。」
「へえ、かしこまりました。」
「旦那さんも何か言って下さい」
「おれはいい
こういうのは苦手や」
「そんなことおっしゃらんと」
「・・・・
帰って来るなよ」
「それはもう聞きました。
あ、またいらんことをいった。
へえ、わかっております。
どんと
お家を守ります。」
忠興は
泣きながら
「ほんならええ
さっさと
いけ!!!!」
と、涙をこらえていった。
「へえ。」
こうしてあさは
大阪にやってきた。
白岡の家族と
番頭たちは
出迎えていた。
白無垢のあさをみて
姑のよのは
「まあ、馬子にも衣装やこと」
といった。
「ほんで、あの・・
新次郎さんは?」と
あさが
いうと
白岡家は
急に、よそよそしく
なった。
「いえ
あの
それが・・・」
亀助が
「申し訳ございません」
と
大声でいって
頭を下げた。
「新次郎さんは
どないやら
ご祝言の日取りを
お忘れになって
しまっているみたいで・・」
「ええ???」
あさはおどろく。
若い店員が
「こないな
日に
三味線もって
紅葉狩りやて・・・
どないな了見でございましょうな。」
と言った。
「やかましい」
と、大番頭の雁助が
店子のあたまを
ぽんと
たたいた。
忠興と梨江は
びっくりした。
「紅葉狩り???」
「びっくりぽんや!」
そのころ
風流にも新次郎は
美しい風景のなか
池のそばで
三味線のお師匠さんと
お仲間と
三味線を弾きながら
歌を歌っていた・・
本当に忘れているのか
それとも
ボケをかましているのか
****************
新次郎という男、ちょっと
やさおとこではあるが
本当は・・・どうなのかというと
かなり狸のようでもある。
この男・・・・
本当は長男よりも
できはいいはずだ。
が・・
何かがあって
そのできの良さに封印して
あほぼんを演じているのでは
ないかと・・・・
思う。
加野屋は、実質新次郎が継ぐところ
だが
もしかしたら
三男坊がいるのでそいつかもしれない。
だから
新次郎は、かたくなに
あほぼんを
続けているのだろうと
思う。
何故????
家を継ぎたくない何かが
あると思われる。
婚礼の前になって
白岡家は長男の急逝で
婚礼の延期を申し出てきた。
あさは、新次郎に手紙を書いた
ことを話した。
「何も知らないで、新次郎さんの
お兄様が大変な時に
あんなずうずうしい文を書いて
すみませんでした」という。
「あ、届いていませんでしたか?
あんな汚い文は・・
飛脚さんが届けるのを拒んだ
のでは」というが
新次郎は「もっと悪いことになって
しました」という。
「最初は文字があまりにも勢いが
いいので
果たし状ではと思った。
そうやないと分かったときは
ほんま、ほっとしてん。」
そんなに威勢が良かったのかと
あさはいうが
今まで女性からもらった
手紙の中ではあの威勢の良さは
みかけなかった
といった。
あさは、手紙を書くことは
はじめてだったし
男の人からの手紙も
もらったことはない。
「あんなふみは出さへんかったら
よかった・・・」
というが
新次郎は「うれしかったで」という。
新次郎は惣べえにあって
そのことを知らせようと
したときに兄が危篤になった。
「兄は、やさしくて賢くて
顔もよくって
・・・」
という。
自分は
なにもかなう所はない。
両親も兄を大事にして加野屋は
これで安泰やと喜んでいた。
「そや、死ぬんやったら
自分が死んだらよかったのに・・」
そういいながら
愚痴をこぼしたことをあさに
わびた。
正吉が「そろそろ帰るで」という。
新次郎は、「惣ベえは確かに
難儀な奴かもしれないが
それでも子供のころは
おもしろい、いいやつだった」と
話をした。
「それを信じるしかないから。
お姉さんを励ましてあげてな」と
いった。
新次郎は、たちあがって
帰ろうとしたとき
あさは、「新次郎さん」とよび
とめた。
「新次郎さんは
やさしい
やさしい
やさしいおかたです。
そのところはだれにも負けて
いません。
せやから、
お兄様の分も
ちゃ~~~んと
生きてください。」
新次郎は、真顔で
「おおきに」
といった。
顔を見ると
笑っていた。
「ああ・・・
まだ出過ぎたことを
いうてしもうた・・」
あさは自分で呆れてしまった。
翌日の三月の末日。
はつだけが
お嫁に行くことになった。
川を下る船に乗ったはつは
つのかくしをして、
のっていた。
そばにはふゆ。
「私たちも明日にはいきます
からね。」
と梨江がはつにいう。
船は、船頭の手漕ぎである。。
「おねえちゃん!」
はつはあさのてを取って
にぎった
が
船が岸から離れると同時に
手が離れて行った。
「おねえちゃん!」
はつは
頭を下げた。
じっと
あさのほうをみる。
「お姉ちゃん!!」
あさは、船を追いかけて
走った。
うめは、「走ったら・・」と
止めようとしたが
忠興はだまっていた。
梨江は「今日ぐらいはかまへん」と
いった。
あさは、はつを追いかけた。
「おねえちゃん!!!」
うめも
忠政も
じっと見ていた
早くなる船においついても
離され
「お姉ちゃん」
「お姉ちゃん」
とあさの声が響く
はつは
あさから目を話して
船の進む方向を向いた。
船は
岸から離れて
川の
中のほうへ行った。
あさが
泣きながら
船を見送る・・・
はつは帯の中から
お守りを出した。
翌日、はつは白無垢の
花嫁となって惣ベえと共
にいた。
半年後のこと。
今井家では
あさが嫁入りの日となった。
忠興は
白無垢の
あさをみて
「これは・・・」
といった
「おなごに見える」
という。
梨江ははつとおそろいの
お守り袋を
わたした。
「あんたはただのあかんこ
ではない。筋金入りの
あかんこや。
根性だけはある。
いつか、あんたも
おなごに生まれてよかった
と思う日が来る。」
せやから、しっかりな
柔らかい心を
わすれんと
ええ、お嫁さんになるんやで。」
「へえ、かしこまりました。」
「旦那さんも何か言って下さい」
「おれはいい
こういうのは苦手や」
「そんなことおっしゃらんと」
「・・・・
帰って来るなよ」
「それはもう聞きました。
あ、またいらんことをいった。
へえ、わかっております。
どんと
お家を守ります。」
忠興は
泣きながら
「ほんならええ
さっさと
いけ!!!!」
と、涙をこらえていった。
「へえ。」
こうしてあさは
大阪にやってきた。
白岡の家族と
番頭たちは
出迎えていた。
白無垢のあさをみて
姑のよのは
「まあ、馬子にも衣装やこと」
といった。
「ほんで、あの・・
新次郎さんは?」と
あさが
いうと
白岡家は
急に、よそよそしく
なった。
「いえ
あの
それが・・・」
亀助が
「申し訳ございません」
と
大声でいって
頭を下げた。
「新次郎さんは
どないやら
ご祝言の日取りを
お忘れになって
しまっているみたいで・・」
「ええ???」
あさはおどろく。
若い店員が
「こないな
日に
三味線もって
紅葉狩りやて・・・
どないな了見でございましょうな。」
と言った。
「やかましい」
と、大番頭の雁助が
店子のあたまを
ぽんと
たたいた。
忠興と梨江は
びっくりした。
「紅葉狩り???」
「びっくりぽんや!」
そのころ
風流にも新次郎は
美しい風景のなか
池のそばで
三味線のお師匠さんと
お仲間と
三味線を弾きながら
歌を歌っていた・・
本当に忘れているのか
それとも
ボケをかましているのか
****************
新次郎という男、ちょっと
やさおとこではあるが
本当は・・・どうなのかというと
かなり狸のようでもある。
この男・・・・
本当は長男よりも
できはいいはずだ。
が・・
何かがあって
そのできの良さに封印して
あほぼんを演じているのでは
ないかと・・・・
思う。
加野屋は、実質新次郎が継ぐところ
だが
もしかしたら
三男坊がいるのでそいつかもしれない。
だから
新次郎は、かたくなに
あほぼんを
続けているのだろうと
思う。
何故????
家を継ぎたくない何かが
あると思われる。
