二つの花びら4
新次郎からの手紙が来ない・・
と、二か月がたった。

そのころ大阪の新次郎は
いつものように店に顔を出した。
「兄貴はどうか」と聞くと
「くすりが聞いてよく眠っている」と
番頭の亀助が言う。
その亀助
びりびりになったなにかを
あつめて復元しようと
している。
店に来た手紙だが
奥様は正太郎が病に伏してから
は、悲しみで泣いていた。
が、あまりに泣きすぎて
鼻をかむ紙がなくなり

そこにあった手紙で

ふくと

墨の汚い文字の手紙だったので

顔が真っ黒になった。

腹立ちまぎれにびりびりに破いたが

それがどこからの手紙なのか

一応復元してみろと主人に
言われてやっているという。

新次郎は、「どれどれ」と
一緒に手伝うが
あまりの文字の汚らしさに

「恋文ではないな」と
笑った。

ところが

ちぎれた
紙の
よみづらい文字が

「あさ」

とあった。

おどろいて

他を探すと

「新次郎さまへ」と

あった・・・

驚く新次郎だった。


やがて三月となり

この末には

二人の娘は
大阪に嫁ぐ日となる。

その時のおつきの女中は

はつに

うめ

あさに

ふゆと

決まった。

いっぺんに二人の嫁入り支度をする
ので、家中華やいでいたが

肝心の二人の娘たちは

それに気持ちがついていない
ようだった。

「このままお嫁に行っていいものか」と

あさはいう。

あさは、いつぞや、菊と惣ベえが来たとき
はつに、菊が嫌がらせをいっていたこと
を気にしてあんなんでいいのかと
いう。

「このまま山王寺屋さんのお嫁さんになって
ええの?」


はつの答えは
はつは、自分はお嫁に行くものだと
思っているといった。
行きたくないなどと
考えたことなどないという。
「大丈夫後悔なんか
せえへん。
おおきにな・・・」

むかむかするあさは

ふっと
庭に出た。

うめはあさを追いかけた。

「お嫁入り前のけがをされたら・・・」

あさは木登りをしようとした。

「けがをしたら

布団と一緒に丸めて
大阪に送ったらええ!!!

もうむしゃくしゃして
たまらへんねん。」


「わかりました、おあさ様

久しぶりにいかがですか?」

うめは、しこをふんだ。

「おお、ええの?うめ??
やった。

今日は負けへんえ」

「ええ、うちもこれはおあさ様との
最後の勝負です。
手は抜きまへんえ」


うめとあさは
相撲を始めた。
四つに組んだが
あさは叫んだ

「なんでどす
何でお家の都合で
嫁に行かなあかんのどすか」

泣き声になった。

「なんで、お姉ちゃんがいけずを
いわれなあかんのどすか

何で笑ってくれへんのどす?

なんでおへんじくれへんのどす???

何で

何で・・・


何で・・・」


梨江とはつは
それを見ていた。

うめはあさを投げた。


「おあさ様!!!」
うめはあさのもとに
走り寄った。

「うめ
お姉ちゃんをよろしゅうな

おおきに

うめ~~~~~

ええーーん
えええーーーーん」

あさはうめと別れることになる。
それも悲しい。
あさはうめにしがみついて
大声で泣いた。


一方

大阪の料亭では
あの、惣べえと
新次郎があっていた。

「やあ、惣ベえさん

偉い久しぶりですな・・・」


惣べえは
じっと
新次郎を見た

新次郎は「婚礼の準備で
忙しいのでは」というが

「わての婚礼ではない。
お家の婚礼や。
しったことやあらへん」

という。

惣べえは
「新次郎さんのほうこそ、兄さんが
病気で大変なのでは」と
きいた。

新次郎は、「兄さんと言えば不思議な縁
やで、あんたが義理でも
わての兄さんになるのやから」と
話を逸らした。

「義理の兄に様子を見に来たのか?
まさかな。
あのおせっかいのじゃじゃ馬の差し金
ではないのか」と
白蛇は
上目づかいに聞く。

新次郎は「顔みに来ただけだ」という。
巷では惣べえが
まだあの母親にふんどしを締めてもらって
いるらしいといううわさを聞いたので
気になったという。

「うそつけ」と
惣べえはいう。

「皆、わしがおかあちゃんのいいなりに
なっていると思っているけど
それは違う」という
そして惣べえは
母親をこっそり殺してしまおうと
思っているという。

どうやら
山王寺屋の御主人は入り婿らしい。
だから、菊がしきるのかと分かった。
菊は主人の栄達も息子の
惣べえも
男とは
金儲けの道具のようにしか思って
いないと惣べえは
うらみつらみをいった。

「いつか
せっかんしたらな
あかんのや・・・」

新次郎はことばもなく
じっと惣べえをみた。

惣べえは
新次郎を上目づかいに見て

「へ、へへへへ・・」と

笑った。

「わしは

新次郎さんとちごて
おなごは嫌いや。
あいつらずるうて
わずらわしいて
意地汚いからな」


そういって
惣べえは

部屋から出て行った。

新次郎は

「こらあかんわ・・・」と

あきれた。

さて・・・家に帰った
新次郎は

あさの返事だが

どうかこうかと

悩んでいると亀助が
あわててやってきた。

「新次郎さん、えらいこっちゃ。
正太郎さんが・・・」

新次郎が正太郎の部屋に入ると
正太郎は手を出した。
新次郎はその手を握った。

******************
あさの手紙は
そういうことで
新次郎のもとに
いってなかったという事です。

なのに・・・
あさは手紙を待っていたわけで

やっと書こうとしたら
・・・
こうなるわけで・・・
加野屋も大変なわけで・・・


で、

正太郎がもしものときは

まさか

婚礼と
葬式が

ふたつ

一辺に出すのでしょうか???

婚礼が少し
遅れるのでしょうか??

だってね・・・
もし跡取りがなくなったら
それこそつぎの
跡取りの婚礼になりますから。新次郎は
惣べえと同じく
お家の婚礼になりますし・・・
この辺はどうでしょうか?

白蛇さん

確かに

嫌な男ですね。

本当に根に持つような
陰険な男ですね。
はつにはぜんぜん、似合わない
おとこです。

はつは
きっと苦労します。