小さな許嫁3
いまから150年前の日本では
大きな商家の娘は生まれた時から
結婚相手が決まっていた。
だから、
いくらあさが久太郎と一緒に
本を読みたいと言っても
そろばんをやりたいといっても
「おなごには必要ない」と
忠興に言われた。
「そのかわりに、主人を楽しませる
ための芸事にはげめ」とのこと。
あさと違って姉のはつは芸事はきちんと
でき。言葉遣いも礼儀も正しい
見た目もおしとやかな
娘だった。
その二人の娘を連れて忠興は
大阪にでかけるという。
あさの加野屋と
はつの嫁いりさき山王屋に挨拶する
という。
はつはまだ山王屋の結婚相手を
しらない。
大阪はにぎやかで人の数も多く
大変活気のある町だった。
それであさはうれしくなって走り出した。
大阪の町が
おもしろくて
あはははと
笑ながら走っていくと
そこである侍とぶつかった。
その男は「ソーリー」と言って
さっていった。
ところが
なぜかあさの着物の
袂が重い。
なぜ???
と思っていたが
ビードロが売っていたので
きをとられて
すっかり忘れてしまった。
先ほどの侍は大事なものがないのに
気が付いた。
ピストルである。
そのピストルは実はさっき
あさとぶつかったとき
あさのたもとに入ってしまった。
それに気がついた侍は
あさを探しにいった。
その子がビードロをみていたので
そこのを捕まえてくれといった。
周りの大人たちは
あさを泥棒と思ってつかまえようと
したが、あさはすばやく
にげた。
侍はあさを追いかけた。
そして、ゆきどまり。
侍はあさの着物の上をまさぐって
袂のなかのピストルに気が付いた。
それをもって去っていくが
あさはなんて失礼なと
怒った。
「先を急ぐ女なんかと話をしている
場合ではない」という。
「なんやて???」
あさは、その男に飛びけりをかまして
ピストルを取り上げた。
侍とあさはピストルの取り合いになったが
「あぶない、死ぬぞ」と侍が言うので
「え?」と、驚いた。
「全く世間知らずの子供が」と
侍は言う。
あさは、「自分は世間知らずですが
あなたもいきなりひとを触りまくって
そのまま何も言わないで
逃げるとはそれが日本男児のすることです
か?」といったので
侍はびっくりした。
侍にとんでもない口をきいたと
あさは謝った。
「こちらこそ申し訳ごはん
人の追われていたこと
上海行きで気がせいていた」と
謝るが
あさにとって彼が話すことは
よくわからない。
「お武家様はどちらの方ですか」と
聞く。
侍は「こうしてはいられない」と言って
去っていこうとした。
彼は振り向いて
「なかなか楽しかった。
長旅のつかれもふっとんだ。
グッバイ」
と言って去って行った。
この男は五代友厚、明治維新の
功労者であったがこのころはまだ
ただの侍だった。
あさはあいさつで「加野屋さんの
ご繁栄のため
いいお嫁さんになれるよう
はげみます」というのだと
はつに教わったが
あさは、「心に思ってもいないことは
言えない」という。
乳母のうめがいった。
「心にも思っていないことを
うまいこと言うのは大昔からの
女の得手でございます」という。
さて、加野屋では
三人の男の子がいる。
長男は正太郎
三男は栄三郎という。
栄三郎は
「どちらさんが将来の姉上ですか」と
聞くので忠興は娘二人を紹介した。
はつがいいとおもっていた
奥様の梨江は
がっかりした。
「そうだすか。兄をあんじょう
よろしゅうお頼み申し上げます。」
栄三郎は、抜け目なく挨拶をした。
あさも挨拶をしようと
先ほどの心にも思っていないことを
言おうとしたが
「加野屋さまの繁栄のために
ええお嫁さんになれるように
なれるやろか・・・・」
正吉は、「よろしいがな」という。
忠興は「近頃は世の中がおかしく
なっていますね」という。
正吉は「新しい波がきているようで・・・」
という。
新次郎は二男で彼は趣味に生きている
ようである。
商いのことなどまったく
眼中にない。
外から帰ってきた新次郎は
あさをみて
「あさちゃん・・・」
といってあさの手を握り
「ようきてくだはりました」という。
「では
わてはこれで
おっしょうさんの初会ですさかい」
といって
去って行った。
あっけらかんとする
あさだった。
*****************
時代は面白い。
江戸末期である。
まだ女性の地位は低い。
明治になっても低いが
この時代はもっと低い。
政略結婚の道具である。
商人も大名を同じことを
している。
娘の人格も
娘の幸せも
家の繁栄のために
あるようなもので
家が反映すると
それは娘の幸せだというので
あろう。
そうかな?
五代と出会ったことは
些細なことであるが
これが
大きな縁になる可能性も
あるのだろう。
大きく時代が変わるとき
あさをはじめとする
女性の生き方も変わるのだろうか。
いまから150年前の日本では
大きな商家の娘は生まれた時から
結婚相手が決まっていた。
だから、
いくらあさが久太郎と一緒に
本を読みたいと言っても
そろばんをやりたいといっても
「おなごには必要ない」と
忠興に言われた。
「そのかわりに、主人を楽しませる
ための芸事にはげめ」とのこと。
あさと違って姉のはつは芸事はきちんと
でき。言葉遣いも礼儀も正しい
見た目もおしとやかな
娘だった。
その二人の娘を連れて忠興は
大阪にでかけるという。
あさの加野屋と
はつの嫁いりさき山王屋に挨拶する
という。
はつはまだ山王屋の結婚相手を
しらない。
大阪はにぎやかで人の数も多く
大変活気のある町だった。
それであさはうれしくなって走り出した。
大阪の町が
おもしろくて
あはははと
笑ながら走っていくと
そこである侍とぶつかった。
その男は「ソーリー」と言って
さっていった。
ところが
なぜかあさの着物の
袂が重い。
なぜ???
と思っていたが
ビードロが売っていたので
きをとられて
すっかり忘れてしまった。
先ほどの侍は大事なものがないのに
気が付いた。
ピストルである。
そのピストルは実はさっき
あさとぶつかったとき
あさのたもとに入ってしまった。
それに気がついた侍は
あさを探しにいった。
その子がビードロをみていたので
そこのを捕まえてくれといった。
周りの大人たちは
あさを泥棒と思ってつかまえようと
したが、あさはすばやく
にげた。
侍はあさを追いかけた。
そして、ゆきどまり。
侍はあさの着物の上をまさぐって
袂のなかのピストルに気が付いた。
それをもって去っていくが
あさはなんて失礼なと
怒った。
「先を急ぐ女なんかと話をしている
場合ではない」という。
「なんやて???」
あさは、その男に飛びけりをかまして
ピストルを取り上げた。
侍とあさはピストルの取り合いになったが
「あぶない、死ぬぞ」と侍が言うので
「え?」と、驚いた。
「全く世間知らずの子供が」と
侍は言う。
あさは、「自分は世間知らずですが
あなたもいきなりひとを触りまくって
そのまま何も言わないで
逃げるとはそれが日本男児のすることです
か?」といったので
侍はびっくりした。
侍にとんでもない口をきいたと
あさは謝った。
「こちらこそ申し訳ごはん
人の追われていたこと
上海行きで気がせいていた」と
謝るが
あさにとって彼が話すことは
よくわからない。
「お武家様はどちらの方ですか」と
聞く。
侍は「こうしてはいられない」と言って
去っていこうとした。
彼は振り向いて
「なかなか楽しかった。
長旅のつかれもふっとんだ。
グッバイ」
と言って去って行った。
この男は五代友厚、明治維新の
功労者であったがこのころはまだ
ただの侍だった。
あさはあいさつで「加野屋さんの
ご繁栄のため
いいお嫁さんになれるよう
はげみます」というのだと
はつに教わったが
あさは、「心に思ってもいないことは
言えない」という。
乳母のうめがいった。
「心にも思っていないことを
うまいこと言うのは大昔からの
女の得手でございます」という。
さて、加野屋では
三人の男の子がいる。
長男は正太郎
三男は栄三郎という。
栄三郎は
「どちらさんが将来の姉上ですか」と
聞くので忠興は娘二人を紹介した。
はつがいいとおもっていた
奥様の梨江は
がっかりした。
「そうだすか。兄をあんじょう
よろしゅうお頼み申し上げます。」
栄三郎は、抜け目なく挨拶をした。
あさも挨拶をしようと
先ほどの心にも思っていないことを
言おうとしたが
「加野屋さまの繁栄のために
ええお嫁さんになれるように
なれるやろか・・・・」
正吉は、「よろしいがな」という。
忠興は「近頃は世の中がおかしく
なっていますね」という。
正吉は「新しい波がきているようで・・・」
という。
新次郎は二男で彼は趣味に生きている
ようである。
商いのことなどまったく
眼中にない。
外から帰ってきた新次郎は
あさをみて
「あさちゃん・・・」
といってあさの手を握り
「ようきてくだはりました」という。
「では
わてはこれで
おっしょうさんの初会ですさかい」
といって
去って行った。
あっけらかんとする
あさだった。
*****************
時代は面白い。
江戸末期である。
まだ女性の地位は低い。
明治になっても低いが
この時代はもっと低い。
政略結婚の道具である。
商人も大名を同じことを
している。
娘の人格も
娘の幸せも
家の繁栄のために
あるようなもので
家が反映すると
それは娘の幸せだというので
あろう。
そうかな?
五代と出会ったことは
些細なことであるが
これが
大きな縁になる可能性も
あるのだろう。
大きく時代が変わるとき
あさをはじめとする
女性の生き方も変わるのだろうか。
