希空ウエディングケーキ4
コンクールは大吾の優勝で
終わった。
その翌日
希と圭太と一徹は能登に
帰ってきた。

子供たちは希へ作ったケーキを
差し出した。
希はよろこんだ。
そのケーキはみんなが
おいしいと喜んだ。

「お母さんはケーキ負けたんけ?」
と匠
「応援してくれたのに、ありがとう。」
「悔いはないようだね」とふみがいう。
もしあの場所に徹がいたら
希の気持ちはお父さんにとどいている
と一徹が言う。

「お父さんとお母さんは
結婚式はまだなのか」と
歩実がいう。
そこへ、おっさんたちがやってきた。
今年の祭りは
希と圭太の結婚式だと
いった。
会場はここ。
8月10日は
希と圭太の結婚式で
希と徹と子供たちの
誕生日である。


翌日希たち家族はハイキングを楽しんだ。
むかし、東京から引っ越してきた
とき、ここで
「おーーー」と
家族四人で声を上げた場所に
いった。

「お母さんケーキ負けたけど
また頑張るからね」

というと

「応援する」

と子供たちが言う。

希はよろこんだ。

そして、

「はい」、といって右手を出して
3人がその上に手を置き

「おおーーーーっ」とこぶしを上げて
団結の声を出した。

希は塗師屋で圭太に言った。
「子供たちと一緒に結婚式を
上げられるから
いままでやらなくてよかった」と
希はよろこんだ。

今年の8月10日は
特別な日になるだろうと
圭太は思った。

コンクールに出てよかったと希は言う。
いろんなことを教えてもらった

「お父さんのことも」

あの自分の原点になった
ケーキは徹が大吾に頼み込んだという話
「すべて親父から始まっていたんだな
おまえの夢は」と大吾。

横浜に行って大吾のケーキを初めて
食べたとき「これや」と
思った。

「この道をずっと歩いていきたい。
世界一を目指して歩くと
何が見えるだろうか」と
希が言う。

圭太が黙っていると
「なぜ、自分も日本一になると
言わないのか」と聞く。

「30にもなって日本一の親方
の道っていうのもなぁ」と
圭太は言う。
でも、希は圭太に言った
「一緒に歩いて行こう
家族で、ゆっくりと・・・」

圭太はうなずいた。

店では一子が
PCを出して
自分の希の記事を披露した。

「勉強になりました。」
沙耶はいった、

そして近所の人たちが
店の再開を期待していると
いってきた。

「コンクールも残念だったけど
優勝したらどこかへ行ってしまうのでは
と思っていた」ともいう。

希は「どこにも行きませんよ」と
笑った。

一子は希と海のそばの望遠台にすわって
しみじみと
「希の店は愛されているのね」と
話す。

昔、高校時代
一子は希を風のもんと言って
嫌っていた。
土のもんの気持ちは風のもんには
わからないという。
東京では
故郷から出てきた
土のもんばっかりだったと
いう。そして笑った。

希も笑った。
希は言った。
「私は土の人にあこがれた。

故郷がある人にあこがれた。
それは根っこだから。」

一子はまた
東京へ帰って
希の結婚式に来るという。

「希・・・
希が風の人でよかった。
能登に来てくれて
本当によかった・・・

なんてね・・・
はははは・・」

一子は笑った。
本当にいい人だと希は
一子に抱き着いた。

その夜だった。
一徹はPCで店のHPを見ていた。
そこへ圭太が来た。

「飲まんけ?」といって
缶ビールを差し出した。

「うん。」

希の店のHPに希の花嫁姿を
アップして、徹を釣ろうとしている。

圭太は、「でっかい餌だ」と
いって
笑った。

そして真顔になって言った。
「あっち
話しついたぞ。」

「本当け」

「後はお父さんが出てくるだけだ」

一徹は
HPへの打ち込みをやった。

藍子は、徹との家族写真をみながら
日記をつけていた。

希は誕生日アンド
結婚式のケーキへの
構想を練っていた。

そして、
あの幼いころから書き溜めた
レシピを見た。

そのなかに
作文があった。

「私は夢が大嫌いです。」
それを声を出して読んだ。

暗い店にそれが響いた。
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いよいよお話は大詰めです。
子供のころ家族と一緒にやってきて
ここで頑張るぞと誓ったこと。
8月10日の意義が希にとってもうひとつ
増えること。
徹の誕生日
希の誕生日
子供たちの誕生日

そして
希と圭太の結婚記念日。

一子はついに、親友になってくれた。
かつて希は
周りを見ず
人の心さえわからず、考えず
自分の気持ちを前面に出して
突き走る
そんな希を一子は
批判的に見ていた
けど、いまはよき理解者に
なってくれた。
希は幸せである。
能登に来てよかったと
思う。
おいしい食材
おいしい空気
おいしい人と人のつながり
悲しいことも
うれしいことも
みんなで励まし
喜んできてこそ
今ががあると
思う。
大勢の人たちが声をかけて
手を貸してくれる。ここにいれば
一人になることはないけど
今は一人になっている
徹が気がかりなのではないかと
思う。